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48,わくわくの大抽選会

 一応の勝利に浸るテラオはなんだかぼんやりとしている。高性能ボディーは疲労とは無縁、ただ強敵を退けることができたことに満足しているのだろう。

 だがいつまでもぼさっとしている訳にはいかない。我に返ったテラオは部屋の奥に今までなかった扉が出現していることに気が付いた。ちょうど巨大偽ベイスが出入りできそうな大きな扉は、黒鉄色に鈍く輝きやたらと頑丈そうだ。


「今回は封印はなかったけど、このドア開ければゴールで間違いなさそうだね」


 一応警戒しつつ、テラオは重たい扉を押し開き中へと進んだ。

 部屋の中、一段高い壇上には小さな魔王メイが仁王立ちで待ち構えていた。



「ふーはっはっはーなのです。よくぞここまでたどり着いたのです、だが今回はお試しだったのです。本当の戦いは次回から! こうご期待なのです」


「はわわわー、テラオさん助けに来てくれたのですね。でもまだ魔王の呪縛から逃れることはできないのです。次回からの本当の戦いでメイを救って欲しいのです」


「では! さーらーばーだーなのです」



 メイの小さな魔王コスプレマントはリバーシブルになっていたらしい。表は黒マント、裏は白いレースのドレス風。器用に早着替えで一人二役をこなしたメイは、満足げにマントを翻すと背後のドアからそそくさと去って行った。


「えっと……この寸劇はなんだったの?」


 微妙な小芝居を見せられたテラオは、なんとも言えない表情で立ちすくんでいる。こだわりはわかるのだが、人手不足が丸わかりなこのダンジョン、一人二役までしてこの設定は必要なのだろうか。

 こんなおかしな状況もここではよくあること、最近すっかり慣れてきたテラオの復帰は早かった。


「あ、うん。このドア開ければゴールで間違いないよね」


 木製の小さな扉を開けるといつものゴール部屋、長かった中ダンジョンをついに攻略したということだ。


――♪ぱんぱかぱーん


「中ダンジョン攻略おめでとうなのでーす」


 いつもの調子外れなファンファーレと、マントを脱いでいつものメイド服に戻ったメイが出迎えてくれた。先ほどの寸劇などなかったかのよう、設定上別人だからなのかもしれないが。


「今回はお待ちかね! 福引き券が五枚たまったので一枚増量六回抽選できるのです。さっそく福引きいってみよーなのです」


 頭に乗っかっている羊ケモ耳がピコピコンと動くと、部屋の真ん中に鎮座していた大きな箱がパカーンと開く。中にはやたら大な福引き抽選器が仰々しく赤い絨毯の上に据えられていた。六角形のボディーはロイヤルレッドの深い塗装が施され、各所に細かい金細工が施された豪華な装飾。二メートル半を超える抽選器は、テラオのためだけに用意したのだとすれば大げさ過ぎるものだ。


「おおきいな……。そういえば僕専用のダンジョンなのに、全然サイズが合ってない所が多いよね! あの鍵とエレベーターはちょっと意地悪だったよ」


「大は小を兼ねるのです。そんなことより豪華景品ラインナップの紹介なのです」


――パン! と張り出された景品リストは前回と同じ。

【豪華! 福引き景品はこちら!


 金:あこがれの! 小さな小屋一棟

 銀:とっても頑丈! 武器または防具一式

 銅:おいしい! 故郷の味を一品

 白:うれしい景品! ノート一冊

 黒:やったー! 戦闘糧食一セット



 ここでメイがまたケモ耳をピコピコンと動かすと、抽選器が光に包まれた。


「テラオさんのサイズに合っていないとのことでしたので、とても気の利くメーメイドのメイが抽選器を調整してあげたのです! 感謝するのです」


 光が収まると、抽選器にはスチームパンクなデザインのギヤが取り付けられていた。なるほど、テラオの身長では抽選器を回すことが難しい、とても気の利くオプションを付けてくれたようだ。


「小さなハンドルを百回回すと抽選器が一回転するのです。さあさあ抽選スタートなのです!」


「なんで百回なの? そういうのが地味にダメージ来るよ!」


 してやったりな表情のメイと、うんざり顔のテラオ。テラオをからかって楽しんでいるのが丸わかりな状況だ。



  ◇



――カラン

「からんころーん。おめでとうなのです! なんとなんと 黒い玉『やったー! 戦闘糧食一セット』が当たったのです!」


 ものすごく重たく作られたギヤを百回回したテラオ。やっと手に入れた景品は一番下の黒玉、食事が必要ない今のテラオには全く必要ない食料という景品だ。


「う、うんありがとう」と微妙な表情のテラオに対し、メイはご機嫌な様子で景品の説明を始めた。


「戦闘糧食一セットには、ぎゅっとまとめたおいしい栄養食が三日分。それに空気中の水分子と、その辺のミネラルを集めておいしい水が自動で貯まる、ついでにとても頑丈な水筒がセットなのです」


「へ、へぇー」特別な水筒と聞いてほんのちょっとだけ興味を持ったテラオ。


「放って置いても一時間位、シャカシャカ振れば十分位で水が満タンに貯まるのです! とあるお方からの特別なおまけなので感謝して受け取るがいいのです」


「かなりいいものだね。うれしいよ」と、社交辞令的な返事を返したテラオは、すでに次の抽選のためにギヤをせっせと回していた。



  ◇



――カラン

「からんころーん。おめでとうなのです! なんとなーんと 黒い玉『やったー! 戦闘糧食一セット』が当たったのです!」


「ぐふぅ……、これで五個目だよ! この抽選器偏りすぎてるんじゃない?」


「この特別製の抽選器におかしなところなどないのです! テラオさんのために一生懸命作ってくれた、とある人に謝るのです!」


「う、ごめん……。感謝しながら最後の一回に期待を込めて回すことにするよ」


「うんうんなのです。感謝は大事なのです」


 テラオは受け取った景品をリュックにしまうと、また次の抽選に期待を込めてぐるぐると回しだした。現在五セット戦闘糧食を受け取ったが、今までノートしか入っていなかったリュックにはまだまだ余裕がある。まあ、せっかくのリュックに入れるものがたくさんできたのは喜ばしいことだろう。



  ◇



――カラン

「からんころんからんころーん。おめでとうなのです! ななななんとなーんと 銀色の玉『とっても頑丈! 武器または防具一式』が当たったのでーす!」


「うぉー、やったー初めて違う色が! それも銀とはすごいよすごいよすごいよね?」


「武器か防具セットを選べるのです、どちらを選んでもオーダーメイドなのでちょっと時間が掛かるのです。とりあえずどちらかを選ぶのです」


「うーん。ベイスさんがまずは防御を優先っていってから、防具セットをお願いするよ」


「わかったのです、発注しておいたのです。テラオさんに専用の頑丈な防具に期待して待つのです」


「うん、すごい楽しみだよ。ところで次はまた三日後?」


「次は五日後なのです。今回はお試し、次から正式オープンの中ダンジョンなのです! 今度こそテラオさんをコテンパ……なんでもないのです」


「あはは、今回よりも難易度上がるとなると大変だな。もっと修行して次もクリアーできるように頑張るよ。じゃあそろそろ戻してもらえるかな」


 その一言を待ってましたとばかりに、カウンター向かって左側のカーテンをバン! と捲ったメイはとても自慢げだ。


「じゃじゃーん。今回からこの階段を上がれば雲上の孤島に戻れるのです。中ダンジョンになって親切設計パワーアップなのです」


 カーテンの裏には部屋の豪華さにぴったり、ふかふか絨毯の敷かれた階段が隠されていた。装備を返したテラオは、誇らしげなメイの案内に続いて階段を上る。



 最上部には素朴な木の扉。ガチャリと開けたテラオは驚きの声を上げる。


「ななな、なにこれ? どこここ? どういうこと?」


 扉の先は食堂らしき建物の中だった。半分はテーブル席、半分は畳敷きの小上がりになって、何故かコタツが並んでいる。

 大きなコタツにはベイス、ケンサン、ペーター。ちょっと離れた小さめのコタツにはシノービと、コタツの上の小さなコタツにメニューとメンバー勢揃い。

 シノービがいることに気が付いたテラオは当然。


「シノービさんー。中ダンジョン攻略しましたぁー」といって飛びつこうとしたが。シュバッ! っと飛んできた棒手裏剣にあえなく打ち落とされた。毎回この一連の行動だけは進歩しないテラオ。


「成長したわね。ここに来たばかりの頃とは比べものにならないほど強くなったわね」

「見応えのある攻略戦だったッス。あーしらの予想を裏切るいい戦闘だったッスよ、ござるよ」

「あーなかなかおもしろかったぞ。でっかいオレがラスボスだったのは驚いたがな。せっかくオレをモデルにしたんだからもっと強くして欲しかったなぁ、ガハハハ」

「見応えのある戦闘だったネー、次も楽しみだヨ~~~♪」

「戦闘中に思いつく新しい魔法。その発想力に興味がありますね」


 テラオのダンジョン攻略戦は全員から高評価をもらえた。特にシノービに褒められたことでテラオはデレーっとしている。


「そうそうここだがな、本日オープン『メイズキッチン』。メイが店主の食堂だ」


「なのです。メイが店長さんなのです、おいしい料理と娯楽を提供するお店なのです。テラオさんの居住スペースと、訓練島のちょうど中間地点にオープンしたのです」


 そう言われて改めて周りを確認するテラオ。コタツの上にはそれぞれ豪華な料理にグラスやジョッキががずらりと並んでいる。皆がそれぞれ飲んで食べて騒いでと、楽しい時間を過ごしていたのだろう。

 シノービのコタツにはもう一人いたような跡が、メイがここに座って観戦していたのだろうか。


「おー、じゃあ僕も何かおいしいものをもらえるのかな」


「お食事は雲上金貨一枚なのです。無銭飲食は認められないのです」


「なにその知らない通貨!」


「今日発行されたここ専用、テラオさん専用通貨なのです。テラオさんだけお金がないと食べられないのです」


「何その仲間はずれ。ちょっと悲しいよっ」


「働かざる者食うべからずなのです」


「新しいボディーを手に入れたらしっかり働いてもらうわよ、それまでは我慢ね。あははは」


「明後日には謎チケが十枚になります。いよいよ新しいボディー、楽しみですね」


「ガハハ。ついに体術の講習を始められるなぁ、バシバシ鍛えてやるからな」


「生産講座も受講してネ~~~♪」



 和やかな雰囲気の中送り出されたテラオ。食堂の外に出ると、改めて新しくできたメイズキッチンを観察する。

 懐かしさを感じさせる造りは、ファスト村近くの山小屋にどことなく似ているだからだろう。製作者なのか設計者が同じだからかもしれない。一枚板に焼きごてのようなもので『メイズキッチン』と掘られた立派な看板。これだけの建物を人の手で建てたら数ヶ月はかかりそう、それがダンジョンにいって帰るまでの間、いやテラオの戦闘を観戦していたことから、一瞬で建てられたのだろうことは驚きだ。


 ぐるりと一周観察したテラオは、満足したのか自分の居住スペースに戻り一人反省会を始めた。

 もっと手段を増やさなければ、思わぬ強敵が相手でも倒せる強さを手に入れなければ、ノートにはびっしりと今日の反省点、思いついた別の手段などが書き込まれている。


「もっともっと強くならないとな」



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