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43,中ダンジョンに挑戦

――♪ピンポロポン。iフィールド小ダンジョン行きますか?


 一日過ぎて、今はテラオが『雲上の孤島』に来てから十七日目の夕方。久々の小ダンジョン招待のお知らせを腕時計さんから受け取った所だ。


 今日はいつも通りの日課を淡々とこなし、シノービからは新講座『罠の知識』を受け、その後何故か担当がペーターに変更された『獲物解体講座』を受けたあとは、普段通りの講座や課題、自主練習を終わらせている。


「大規模メンテのあとだからきっと厳しいダンジョンなんだよね……。楽しみだけどちょっと怖いな」


 と、少しだけ尻込みしているようだが。


「よし! いけます。送ってください」


 やる気溢れる元気な声で腕時計さんに転送を頼んだ。



  ◆



 いつもと変わらぬ小ダンジョン控え室。テラオが装備を調えているとメイの声が聞こえてきた。


『今日から中ダンジョンにレベルアップしたのです。今回はお試し版なので二つの関門を通過してラスボスに挑むのです! 城門突破が第一関門、お堀を渡って城到達が第二関門、城の最上階で待つ最後のラスボスを倒せば美しき姫メイに会えるのです!』


 小ダンジョンは中ダンジョンに生まれ変わったらしい。そしてその目的が、美しき姫? を助けるために城に挑むという、なかなかベタな設定のようだ。




 扉を開け、中に入るとそこは城門前広場だった。

 高くそびえる城壁がテラオの立つ広場を囲い、攻撃を集中できる造りになっている。その上には何体もの弓持ちスケルトンがテラオを出迎えた。


「テラオさんが来たのです! やーっておしまいなさいなのです」


 入ってきた扉はすでに消えている。テラオは雨のように降り注ぐ大量の矢を、防御魔法と剣でさばきながら様子を見ているようだ。


「弾幕薄いのです! なにやってるのなのです」


 捕らわれの姫役と思われたメイだが、なぜか城壁よりも一段高い城門の上に立ち、両翼で弓を放つスケルトン達の指揮を執っている。黒いマントを羽織り、最前線で指揮を執る姿は小さな魔王? のつもりだろうか、とてもご機嫌な様子だ。

 姫と魔王を一人二役なのだろうか、人員不足が覗える。


「メイさーん、攻撃が当たったら危ないですよー」


「あたらないので問題ないのです。遠慮はいらないのです、どんどん撃ってくればいいのです」


 テラオはメイを気にして攻撃を控えていたようだ。遠慮はいらないと聞いて、ならばと魔力を溜始めたテラオ。降り注ぐ矢を躱し弾きながら器用に魔力の大きな球を作っている。

 程なくテラオの身長とほぼ同じ直径に膨らんだ魔力の球。かなり大きな魔力の塊だ。毎日アルバイトで魔力を絞り出しているからか、魔力の総量が増えているのかもしれない。


「いくよー、避けてねー」


 テラオの放った魔力の球は、メイの立っている城門上空へと飛んでいった。


「はわわわ、大きなたまにつぶされちゃうのです。大ピンチなのです」


 ゆっくりとメイの立つ城門へ、大きな魔力の球が落ちて行く。

 メイを潰すかに思えた球だがその直前、ぱかっと二つに分かれると重たそうな二つの鉄球となって城門の上をごろごろと転がり始めた。


 弓を放っていたスケルトン達は押しつぶされ、磨り潰されて行く。あっという間に弓スケルトンは全滅してしまった。だが、メイはひるむことなく指示を出す。


「今なのです! テラオさんは魔法を放つと油断するのです。追撃開始ぃーなのです」


 城壁には縦長の小さな窓、いわゆる矢狭間と言われる物が多数付いている。城壁の上にいた弓スケルトンは一掃したが、今度はこの窓から矢が飛んでくる。


「ちび鉄ゴーレム部隊も出動なのです」


 城門が開き中から小さなゴーレムが大量に行進してきた。

 前回のタイムアタックダンジョンでは、最初の敵だったちび鉄ゴーレム。金属製のボディーは硬く、剣で一掃できない相手が前回以上の数迫ってくる。


 矢による攻撃に加え、大量の鉄ゴーレム、ピンチに思える場面だが。


「やったー。第一関門突破だね」


 鉄ゴーレムを出撃させるために開かれた城門。開いた途端にテラオは走り出し、空板を使って鉄ゴーレム達を飛び越えると、さっさと城門を抜けてしまった。

 たしかに最初の説明で城門突破が第一関門と言っていた。


「し、しまったーなのです。仕方ないのです、第一関門突破は認めるのです。次の関門はもっと厳しいのです。見事到達して見せよ! なのです」


 メイのちょっとうっかりで難なく突破できたようだ。




 城門は外門と内門があるようで、テラオが今いる場所はその中間。

 内門には丁寧に『ここを開けたら第二関門チャレンジ開始なのです』と書かれている。中間地点は安全地帯、ちょっと休憩ができるスペースということだ。


 五分ほど装備の点検やらで時間を潰したテラオ。次は堀を渡って城にたどり着くだけだが、簡単なはずはない。

 いよいよ第二関門へ挑むべく扉に手を掛けた。


「だいじょうぶ。考えることをやめなければ、突破できないダンジョンではないよね。さっきのもうっかりに見せかけた優しさかもしれないな」


 今日のダンジョンは今まで挑んだことがないようなタイプ。テラオも少し緊張しているようだ。

 「よしいくぞ!」と扉を開けた先には……。


「絶景だ! って、えーっこれ堀ってレベルじゃないでしょう」


 扉の先には広い海のような水面が、そして扉から続く一本のただひたすらに長い石橋。橋の下はご丁寧にも、どこまで深いかわからないほどの真っ暗な空間、落ちたらリトライ不可能な状況になっている。


 ごうごうと音をたて、真っ暗な空間へと落ちて行く大量の水。その真っ暗空間に架かる橋を渡り、先にうっすらと見える城へと向かうのが第二関門ということだ。

 橋の途中に三カ所広くなっている場所がある。何らかの仕掛けがあるのだろう。


『ふーっはっはっはーなのです。このロングブリッヂを渡った先にお城があるのです。死闘をくぐり抜け最上階へ見事到達してみせよーなのです』


 メイの小さな魔王設定は続いているようだ。


「よし、動かないとなにも始まらないよね」


 恐ろしく広い堀という光景を見て少しの間ぽかんとしていたテラオも、メイのメッセージを聞いて意を決したようだ。

 【空板】の魔法を使っていつも以上の速度を出し、彼方まで続く橋を駆け抜けるテラオ。疾走感溢れる場面だが、地味な嫌がらせが仕掛けられていた。


「ぺっぺっ。蜘蛛の糸? 纏わり付いていやな感じだー」


 避けにくいようにふわふわと浮く粘着質の糸が、テラオの体に纏わり付く。だが、とても細い糸は動きを遮るほどではなく、ただ単に気持ちが悪いだけのようで、テラオはそのまま走り続けている。


 だんだん両手が綿菓子のようになってきたテラオ、その表情が少々ゆがんできた。


「なにかおかしい……、力が抜けるような?」


 両腕の綿菓子が怪しいと感じたのか、足を使って腕を抜いてはみたが体調は戻らない。テラオは繭のようにまとまった蜘蛛の糸らしきものをじっくり観察しだした。

 腕を入れてみてはまた抜いて、何度か試すうちに気が付いた。


「魔力を少しずつ散らす効果があるのか。つまりこれだけたくさんの塊だと魔力がどんどん吸われていたってことに……。でも魔力は自動で補充――、はっ!」


 なにか大事なことに気が付いたようで、テラオは大いに焦っている。


「ここは雲上の孤島じゃないから魔力の自動補充がないってこと? 回復手段がないから大ピンチじゃないの?」


 そういうことらしい。ここはiフィールドのダンジョン内、自動で魔力が満タンになると言う説明は、雲上の孤島にいる時に限った話だった。

 普段の訓練と同じ感覚で魔力を使っていたテラオ。無駄使いをした訳ではないだろうが、魔力を散らす効果のある蜘蛛の糸を警戒していなかったために、大きく魔力を吸われてしまったと言うことらしい。


「まずいな……、感覚的に残りは半分切った位かな? まだダンジョンの半分も超えていないのにこれって。考えが足りなかったな」


 魔力が空になる寸前まで搾り取るアルバイトを、毎日七千回以上も続けているテラオ。魔力の残り具合位は簡単に把握できるようになっている。

 今までのダンジョンでは、魔力が補充されないと言うことはなかったのだろう、だからこその油断。説明はなかったが、中ダンジョンになって新しく設定されたのかもしれない。


 いくらでも魔力を使える環境に慣れすぎていたテラオ。

 今後はまた異世界出張クエストへ行く機会があるらしい。雲上の孤島と同じ感覚で魔力を使っていれば、いずれ気が付いたことだろう。だが、危険な場面で魔力不足になってしまえば自分だけでなく、守るべき人を守れなくなるかもしれない。


「……これは考えておかなければならなかったことだよな。調子に乗っていたのかもしれない」


 改めて、今度は蜘蛛の糸に直接触れないようにと、鞘に入ったままの両手剣を振りながら走り出した。

 まるで綿飴を振りながらはしゃぐ子供のようだ。



 最初の橋の上にある広場にたどり着いた。

 円形の広場は訓練島と同じ位の広さ、何もないただの石畳の広場といった場所。


「絶対ボス戦だよね、何が来てもいいように警戒しないとね」


 テラオは準備を整えゆっくりと円形広場へと足を踏み入れた。


――ドッシャーン

 大きな音をたて、どこからか円形広場をぐるりと囲うほど大きな檻が落ちてきた。テラオは巨大な鳥かご状の檻に閉じ込められてしまった。

 檻と同時に巨大なモンスターが現れた。

 大きな蜘蛛型モンスターだ、四本の足で立ち上がり、残り四本の足を大きく振り上げ威嚇するようにアピールしている。

 腕だけでテラオの身長を超える大きさ、なかなか手強そうだ。この大蜘蛛を倒さないと檻が解除されない仕組みなのだろう。


「ギャッギャッギャ、ギャギャギャガウガウガワワギャー」


 よく来たな! 的なことを言っているようだが、蜘蛛語はわからないため通じない。テラオはぽかんと様子を見ている。


「ギャウギャッギャ! ギャースギャギャギャ」


「えっと……、蜘蛛語はわからないので何を言ってるのかわからないけど、とにかく戦って勝てばいいんだよね。じゃあいくよ!」


 テラオは大蜘蛛に向かって走り出した。戦闘開始だ。



×ジ

〇ヂ

だったので直しました。

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