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27,緊急クエストで救われた心

今回のお話は、残酷な描写が含まれています。非常にグロテスクな表現ですので、苦手な方の為に【柔らか版】を用意しました。

http://ncode.syosetu.com/n2328dg/20/

目次のページ、タイトルの上あたりにある”おあずけ!シリーズ” → ”ぼろタマ育てることになったッス。んで、教師やることになったッス”の二十話になります。


表現が違うだけでストーリーは同じ物となっています。

 戻ってきてから一歩も動かず、ただ呆然としているテラオ。

 テラオの表情には後悔が溢れていた。今回の緊急クエストクリアーの看板を見て思い出したのだろう。

 最初のドサイル村のクエスト、期間は二日間。盗賊を追い払い、村人に感謝され一緒にご飯を食べ、そこで満足してしまい帰還を選んでしまった。ドサイル村に着いたのは夕方、帰ったのは朝一番、半日も居なかった。

 二日も期間が用意されていたのに……。


(そういえば帰還の看板は選択式だった、全てが片付いたと判断したら抜いてくれと言うことだったんだ。追い払うだけで満足し、下っ端数人を捕らえただけで解決したと思い込んだ。

 できることは多かったはずだ、悔やんでも悔やみきれない)


 テラオは涙を流していた。


――♪ピンポロポン。緊急クエストが発生しました。♪ピンポロポン。緊急クエストが発生しました。


 バン!


【緊急クエスト

 ○iフィールドクエスト○

 フィールド:iフィールド(盗賊の洞窟01)

 テラオ:9歳


 盗賊にとらわれている村人を救出しよう。


 レンタルアイテム:鉄製武器、革製防具一式

 クエスト期限:六十分間

 クエスト報酬:貯めてうれしい謎のチケット】


「緊急の依頼です、うけますか?」


「また盗賊かぁぁぁああ! 行くよ! このままでいいよね、すぐ行かせて!」


 パチ~~ン。

 気合いの入ったメニューの指の音が響いた。



  ◆



 転送され着いた場所は洞窟の中だった。背後には入り口が見える。


 ドン!


【村人を三人救出してこの場所まで連れ出そう】


 看板が上から降って地面に刺さった。



 洞窟は直径三メートルほどのチューブ状、大人でも武器を振り回せる高さがある。十mほど奥に脇道らしき物があり、松明の明かりが漏れている。


「うひゃひゃ、今回の村は食料ため込んでたな。これでしばらく困らないぜ」


「んだな、ついでに三人も連れてこれたしな、ぐへへへ」


 盗賊と思われる男二人の声が響いている、脇道からのようだ。

 テラオは見つからないように、そっと覗いてみる。

 脇道と思われた場所は小部屋になっていた。その奥には扉があり、両脇に見張りの盗賊二人が立っている。

 薄汚れた服、あまり手入れされていない剣、髭も髪も伸び放題で見るからに不潔なおっさん盗賊が二人。


(え? あれ???)何かおかしい、ものすごい違和感がある。


 急に冷静になるテラオ。

 看板の指示、洞窟の様子、見張りの盗賊の台詞、小部屋の配置に扉。全て見覚え聞き覚えがあることに気が付いたようだ。


(なんだ、どういうこと? いや考えるのは後だ、救わなければいけない人が居る。最優先はそっちだ)


 隠れた場所から扉前に居る二人の位置を気配察知で探ったのだろう。テラオは相手が見えない状況で、それぞれに沈黙空間を広めの範囲で掛ける。と同時に飛び出し相手を目視、触手拘束を放ち二人まとめて拘束した。

 盗賊に対しての甘さはもう消えた。テラオは二人の首をザシュッと躊躇無く切り落とす。


 見張りの居なくなった扉前、テラオは落ち着いた様子で中を探っている。


(気配は十一人か。扉の奥は廊下、突き当たりの左右に二部屋……。

 右に六人と左に五人、左の五人の内三人は弱っているのかな? 気配が薄い)


 そっと扉を開ける。前回は真っ暗だった廊下だが、今は松明の明かりが灯っている。

 酒でも飲んでいるのか右の部屋からは六人の盗賊達の騒がしい声が聞こえる。

 テラオは右の部屋の入り口に暗闇空間の魔法で黒い壁を作ると、左の部屋へと素早く抜ける。

 静かに部屋の中を覗く。盗賊二人が捕らわれた村の女を襲っていた。

 弱っている女達は抵抗する気力もないようだ。多少音がしても不自然ではない状況。

 テラオは両手から魔力の糸を伸ばすと、二人の盗賊の鼻を通し気管へと送る。適度に大きくなったところで、魔力を一気に氷の塊へと変化させた。


「ふご……」「うぐ……」気管から肺まで氷で埋め尽くされた二人の盗賊は、のどを掻きむしりながら声も出せずに息絶えた。


 テラオは汚い男二人を端へ放ると、女達にその辺にあった布を纏わせる。




 残りの盗賊の気配は六人。もう人質になる者は居ない、遠慮無く動ける。

 両手剣を構え暗闇空間の壁を抜け、まず目の前に居た二人へ「グァッ、ムンっ!」思い切り剣を振り抜いた。右肩から左胸へ、左肩から右胸へ、二人合わせてブイ字に切られぐしゃっと崩れ落ちる四つの盗賊だった物。

 慌てた盗賊が木製のジョッキを投げてくるが、フォッと弾き、飛び上がってハイヤァっと一閃。二人の盗賊の顔面を切りつける。

 額に二つ目の大きな口ができた二人の盗賊は、バタバタと暴れているがそのうち静かになるだろう。

 テラオは残りの二人を優先する。

 脇に用意していたのか、手投げ斧を飛ばしてくる大柄な盗賊と、弓を射てくる軽装の盗賊が残っている。のたうち回って騒いでいる奴から、『お頭』と呼ばれていた大男のほうが盗賊のリーダーだろう。

 遠距離には遠距離、両手剣で斧と弓を弾き、避けながら魔法を準備する。

 十本のアイスアローを用意すると一斉に射出! 勢いが良すぎて貫通してしまった。

 汚したくなかったのか、弾けないように設定されたアイスアローで、体に何カ所も穴を開けられた盗賊二人はその場で崩れ落ちた。

 これで盗賊は全て駆除できた。



 あとは左の部屋に戻り、捕らわれの村人三人を指定の場所まで運ばなければならない。


「仲間を呼ばれる危険があったので無言でしたが助けに来ました。もう大丈夫ですよ」


「あぁ、この地獄から抜け出せるのね」「うぅ、ありが……とう」「……ヒックヒック」


「これから救助ポイントまで一人ずつ運びます、置いていったりしませんので無理して歩かないで下さいね」


 気力をすっかり失っている彼女達は、力を入れられないため背負わないと運べない。一番弱っていそうな女を背負い看板の刺さった位置まで運ぶ。

 看板の場所で降ろすと、肩掛け鞄の中からさっきの残りのパンを一つ彼女に与え、魔法瓶のお茶を飲ませる。


「気力を取り戻してくれればいいのだけど」


 残り二人も運び終え、パンとお茶を与えた所で目の前に


 バン!


【クエストクリアー条件達成。帰還しますので待機してくさい】


 目の前に看板が現れた。


「やっぱりか」



  ◆



 景色は一瞬で変わり、雲上の孤島へと帰還していた。



 バン!


【緊急クエスト

 ○iフィールドクエスト○

 フィールド:iフィールド(盗賊の洞窟01)


 捕まった村人を無事救出。救出ポイントへ送り届けた。

 クエストクリアー。


 クエスト報酬:貯めてうれしい謎のチケット】


「おめでとう。現在預かっているチケットは合計三枚です」


「メニュー、緊急クエストがどういう物だったか何となくわかったよ」


 メニューが詳しく教えてくれていればテラオは楽になっただろう。だが成長することはなかった。

 テラオの表情は、メニューを責めたい気持ちと、自分を責める気持ちが入り交じったような、複雑なものになっている。


「メニューを責めるような気持ちは持たないでくれ」


「べ、ベイスさん」


 背後にはベイスが立っていた。


「俺のほうから話す、メニューは戻っててくれ。ここは俺に……、たのみます」


「……」何か言いたげな、複雑な表情をしたメニューが無言で姿を消した。


「察した通り、緊急クエストというか、『iフィールド』というのは、仮想領域、つまり現実のセカイに存在する、または存在した場所や事件などを元に作られた場所なんだ」


「バーチャルリアリティーのような物ですか?」


「そう言ったほうが理解が早いか。だからドサイル村の悲劇は現実じゃねぇんだ。だがな、オレがおまえとファスト村近くに行った時を覚えてるか?」


「あれもバーチャル?」


「いや、あそこは現実だ。ファスト村の時も前回失敗した盗賊の洞窟の時も、オレはおまえの現実感の欠如がひどすぎると判断したんだ。その後行動指針を決めたおまえを見て大丈夫かとも思ったんだがな」


「うぐっ。現実感の欠如……、確かにそうでした。反省はしたけど、今日まで実感できてなかった気がします」


「そんな気配はすぐにわかった。だからメニューに頼んでショック療法的な、過激なiフィールドを用意したんだ。本来はもっと残酷な物にするはずだったんだがメニューに止められてな」


「……」


「ドサイル村のこと、おまえ気に入ってたよな。だがあそこの住人の名前教えてもらったり自分から聞いたりしたか? 顔をはっきりと思い出せるか?」


「あ? あれ? 村長さん、村長の息子さん、奥さん……あれ、誰の名前も知らない。顔も……、会えばわかる位の記憶しか無いような」


「名前を知ってしまうと、相手のことをはっきり覚えてしまうと、仮想だとしても心残る傷が深くなってしまうって言ってな、メニューがそういう制限をあのiフィールドに付けたんだ。

 ドサイル村の最初のクエストの時も、クエスト期間が二日有ることに気が付くようにって、鞄に着替えやら詰めて用意してくれただろ。鞄の中身を全く見ないで帰って来ちまったのは……よくねぇな」


「め、メニューごめんなさい。ここに来たばかりの時から、僕のことをちゃんと考えてくれていたメニューを……、責めるような気持ちを持ってしまった」


「メニューは超越してるから、おまえみたいにいじけることはないから大丈夫だ。それより盗賊の洞窟01の再発生で、おまえが察するように仕向けたのには驚いたがな」


「あれはメニューが、ですか」


「だな。あのままだと心のダメージが大きすぎるってんでな。ストレス発散とトラウマ解消、さらに自分で気が付けば納得するってんで、いきなり用意して放り込んだって訳だ」


「本当に効果ありましたよ。盗賊の洞窟に行かなかったら……どうなっていただろう僕」


「不安定になってたかもしれねぇな。無理矢理安定させるのもタマシイに悪いから、面倒なことになってただろうな」


「よかった、ベイスさんに無理矢理矯正させられてたら……ガクガクブルブル」


「あほたれぇい! おまぇなぁ……、おまえの中のオレはどんなイメージなんだってんだよ。ガハハハ」


「あははは」「んじゃ、反省会やるから会場行くぞ」「へっ?」



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