表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/70

26,緊急クエスト ドサイル村編再び

今回のお話は、残酷な描写が含まれています。非常にグロテスクな表現ですので、苦手な方の為に【柔らか版】を用意しました。

http://ncode.syosetu.com/n2328dg/19/

目次のページ、タイトルの上あたりにある”おあずけ!シリーズ” → ”ぼろタマ育てることになったッス。んで、教師やることになったッス”の十九話になります。


表現が違うだけでストーリーは同じ物となっています。

 テラオの持つ弱体魔法のレパートリーが二つ増えた。

 個別に暗闇空間を掛ける【暗闇玉】、複数の対象をまとめて縛る【触手拘束】。ちなみに触手に変な意味はない、見た目がそれっぽかったから、というだけだ。

 さらに、走りながらの魔法もかなり上達している。

 手段が増えたことに喜ぶテラオは、ニヤニヤしながら壊してしまった土の棒を片付け、マイゴザへと帰った。


――♪ピンポロポン。十三日目の朝です、走り込みの時間です。


――♪ピンポロポン。カユトマールを支給します。


 帰ってきた途端に朝が来た、いつも通りである。


「ですよねー。では今日も走り込み行って来まーす」


 グビッと一発、走り出そうとした所で。


――♪ピンポロポン。緊急クエストが発生しました。♪ピンポロポン。緊急クエストが発生しました。


「え? また緊急? 今度は何だろ」


 バン!


【緊急クエスト

 ○iフィールドクエスト○

 フィールド:iフィールド(ドサイル村)

 テラオ:9歳


 村が盗賊に襲われた。捕まった村人を助けに盗賊のアジトへ急げ。


 レンタルアイテム:鉄製武器、革製防具一式

 クエスト期限:一日間

 クエスト報酬:貯めてうれしい謎のチケット】


「緊急の依頼です、うけますか?」


「ああああぁぁぁぁ、この村は、ここは!」


 ガクガクと震え出すテラオ。看板に書かれているドサイル村は、昨日の緊急クエストで盗賊を追い払った村だ。

 村が襲われ、捕らわれた村人を救えというクエスト。つまり……村は。


「ぐぅーっ! 受けます! 今すぐ行きます!」


 メニューに返事をすると、訓練島へ駆け出す。

 焦るテラオは転びそうになりながら走る。倉庫の中から防具を取りだし装備しようとするが、指が震えてうまくいかない。


「落ち着きなさい! あんたがそんなじゃ救えなくなるわよ」


 メニューの言葉にハッとし、テラオは震える指を押さえつつ装備を調えた。

 普段は片手剣と盾を持っていくテラオだが今回は両手剣。より攻撃力を高めた装備だ。


「昨日の鞄もそのまま持って行きなさい」と、壁に掛かっている肩掛け鞄を指さすメニュー。


 言われたとおりに鞄を肩に掛け「落ち着きました、村へ送って下さい」



  ◆



 昨日とは逆の入口側、山の麓側の村入口手前に転送されたテラオ。

 村からは黒い煙が何本も立ち登り、所々に炎が上がっている。

 村入口にある柵の手前に動く人影を見つけたテラオは慌てて駆け寄る。衣服がぼろぼろになりあちこち血まみれだが、面倒見のいい若者、村長の息子が苦しそうに倒れていた。


「ぼ、坊主、どうしてここに。戻ってきてくれたのか」


「あ、あ……な、何があったんですか。村は、村は」


「盗賊が攻めてきたんだよ、嫁と、他にも村の若い娘が連れ去られてしまった。俺は守ることもできずに……」涙を流す村長の息子。


「ほ、他の村人は」と、村の様子を見ようと立ち上がったテラオを「いくな! 見ちゃ駄目だ!」


 何が行われ、村はどういう状況になっているのか。鈍いテラオでも察しがついたようだ。


「し、仕方なかったんだよ、坊主が責任感じることじゃない」


 テラオの表情を読んで気遣ってくれたのだろう。こんな時にまで他人を思いやれる優しい人だ。


「僕に治癒魔法があれば治療できるんですが、ごめんなさい。でも……」


「俺のことはいいんだ。それより、もし叶うなら連れ去られた三人を……なんとか……」


 がくっと力の抜ける村長の息子。まさか! とテラオは焦ったようだが、微かに息をしているのが胸の動きで判断できた。


 今まで見せたことが無いような怒りの感情を表すテラオ。ぶるぶると小刻みに震え、森の方向を睨み付ける。

 息を乱し拳を強く握りしめたテラオ、怒りが過ぎて声が出ないのか、掠れたような音を喉から絞り出している。

 何かを決意したように立ち上がると、ぐったりと倒れている村長の息子を柵のほうへと運んだ。座らせた彼に何か一言告げると、飛び立つように森のほうへと走り出した。



 気配察知と魔力探知を最大限に使って居るのだろう、迷うこと無く一直線に山の中を走って行く。獣道のような何人かが集団で通り抜けた跡をぐんぐん速度を上げ走る。

 さらに身体強化を限界まで掛け、猛獣のような速度で走り抜けた。


 突如バチィンと言う音とともにテラオはバランスを崩し転倒した。足の筋が切れたのだろう、腐葉土のような柔らかい土に頭から突っ込んだところで少し冷静になれたようだ。

 三人の村人が捕まっている状況で闇雲に突っ込んでは人質が危険だ。自己治癒の魔法を掛けたことで少し落ち着いたのか、ぶつぶつと呟き作戦を立てている。



  ◇



 盗賊のアジトは山の中腹にあった山小屋を中心に、テントとも呼べない雨よけの布だけのものがいくつかあるだけの場所。

 テラオは盗賊達がアジトへ帰り着く直前のタイミングで追いつき、見つからないよう背後をつけていた。

 山小屋は盗賊の幹部連中が使っているのだろう、捕らわれた三人の女達が引きずられて行くのが見える。

 何が行われようとしているのか明らかすぎる状況だ、時間が無い。


 テラオはしゃがんでいた茂みの中からすくっと立ち上がると走り出し。


「【触手拘束】【触手拘束】【拘束】【拘束】……」


 盗賊の気配が集まっている所に範囲拘束魔法を、村人を引きずっている盗賊には単体の拘束を掛ける。


「な、何だってここに魔法使いが」「この前のガキだ、何てこった」「くそっ動けねぇなんとかしてくれ」


「真っ暗になります! 信じて耐えて下さい! 【暗闇玉】【暗闇玉】【暗闇玉】【遮断玉】【遮断玉】【遮断玉】」


 村人三人に大声で警告を放つと、個別暗闇空間と遮断空間の魔法を掛ける。テラオがこれから行うことを、あの村の人たちに見られること、聞かれることをいやがったのだろう。


 優先するべきは村人の救出、テラオは一気にかけ出した。

 子供に見えるテラオ相手に、盗賊達はなめてかかることはなかった。魔法を使う者はそれだけ警戒されていると言うこと。

 武器を抜きテラオの進路を遮ろうと迫ってくるが、毎日案山子と戦闘訓練をしているテラオの敵ではなかった。

 盗賊の武器を弾き、武器を持つ腕ごと切断する。弓が飛んできても剣で防ぎ、物理防御で弾く。


「うぉぉぉおおおお! ザンッ、ムン、グゥオゥぅぅ」

 怒るテラオを止められる者はいなかった。近くの盗賊には両手剣を振り下ろし、ばっさばっさざっくり斬り殺して行く。

 半分に切り裂かれ、頭を割られ、血を飛び散らせ、内蔵をばらまかれ……。

「うわぁぁぁ、【アイスアロォーー】【アローアロー……」

 遠くに居る盗賊にはアイスアローの魔法を放つ、当たると爆発する性質の矢は、盗賊の頭に刺さると破裂する。

 バーンバーンバーン……と連続する音と共に辺りに真っ赤な肉が、血が、内蔵がビシャビシャと飛び散る。

「まぁきとれぇー、触手ぅー」

 範囲拘束の魔法で捕らわれた盗賊は勢いよく集められ、まとめて絡み取られるとグチュグチュっとイヤな音を立てながら絞られてゆく。

 蔦の間から赤黒い液体がトマトをにぎりつぶした時のように飛び散り破裂。


 視界が失われ、音の消えた世界に放られ唖然とする村の女達に危機が迫る。

 突然起きた嵐のような殺戮劇から、自分だけは助かりたいと思った者が居た。動けないで居る女を盾に引き摺りながら、ガクガクと震え逃げ出そうとする盗賊。

 テラオが周囲の邪魔者を排除し村人に近づくと、盗賊は持っていた短剣を振り回し叫びだした。


 テラオは怒りの咆哮を上げた。幸せだった自分の前世を思い出させてくれたあの村、平和な村を壊した相手に、こうなる可能性を考えていなかった自分に。自分への怒りを、盗賊への怒りを、盗賊の叫びを自身の叫びで打ち消した。


「ひぃ、ち、近寄るな。この女が……」


 テラオは気づかれないよう足先から魔力の糸を伸ばし盗賊の背後へ通した。首筋の辺りまで伸ばすと魔力を整形し。


「【氷の刃――】」


 盗賊の脊椎に沿って上から下へと一本の赤黒い線が現れた。線は下から広がるとビシャビシャと内容物を垂らす。

 背開きされた盗賊は落ちるはらわたに引きずられ、崩れ落ちた。



  ◇



 テラオは静かに周囲を伺っている。他の気配がないか慎重に探っているようだ。

 感知できる範囲にテラオと村の女三人以外の気配は確認できなかったのだろう。女達に掛けた沈黙の魔法のみ解除した。


「盗賊は全滅させました。もう心配はありませんが、あまり見せたくない物がここにはいっぱい有ります。三人を順番に連れて行きますので怖がらないで従って下さい」


 暗闇になっても、一切の音が聞こえなくなっても、パニックにならなかった女達は気丈だったのだろうか。それとも……。

 テラオはゆっくりと惨殺現場が見えなくなる位置まで三人を順番に案内した。

 三人がそろった所で暗闇魔法を解除する、彼女たちの目にテラオが映る。


「あぁああ! あの時のちびっこ剣士くん……よね」「あの時あいつらを追い払ってくれた……」「な、なんで……どうして……うわぁー」


 唯々泣きじゃくる三人に何を言ったらいいのかわからないのだろう。口を小さく動かすだけで声は出ず、悔しさと悲しさと後悔の入り交じった表情で戸惑うテラオ。

 何となくの行動だろう、テラオはメニューに持たされた肩掛け鞄を探る。魔法瓶に六個のパン、それに着替え一式にタオルが三枚入っていた。


 少し汚れが目立つ三人にタオルを渡し、自分が居ては落ち着いて体も拭けないだろうと、離れた所で様子を見てくると告げ、テラオはその場を離れた。

 途端に大きくなる鳴き声、「あの時あいつらを退治……」「何故もっと早く……」こらえながら、テラオには聞こえないように小さな声で、でも抑えきれずに発してしまっているのであろう言葉。

 聞こえてしまった言葉に、心が抉られる思いなのだろう、テラオは一人痛みをこらえるように膝を抱え座り込んでいた。


 彼女たちが泣き止んだ頃を見計らって、パンとお茶を配りひとまず落ち着いてもらうことにしたようだ。


「ありがとう、おいしいわ」「ありがとう……」「……」


 彼女たちに怪我が無いことを確認し、村へと戻ることになった。

 テラオが駆け抜けてきた地面は、かなり抉られていて目印になっている。迷うことはないだろう。


 村の入り口が見えてきた。柵に寄りかかり、座ったままの村長の息子が見えた。

 三人のうちの一人、彼の奥さんが駆け寄るが、彼に触れた途端に大泣きしてしまった。

 間に合わなかったようだ……。

 彼女の元へ他の二人も寄り添っている。

 テラオは一人立ち尽くす。涙が溢れている。


 バン!


【クエストクリアー条件達成。帰還しますので待機してくさい】


 テラオの目の前に看板が現れた。メニューは居ない、看板だけが浮いている。


「え、ちょっと待って。この人達の保護とか、村の復興とか!」



  ◆



 景色は一瞬で変わり、雲上の孤島へと帰還してしまった。



 バン!


【緊急クエスト

 ○iフィールドクエスト○

 フィールド:iフィールド(ドサイル村)


 捕まった村人を無事救出、村へと送り届けた。

 クエストクリアー。


 クエスト報酬:貯めてうれしい謎のチケット】


「おめでとう。現在預かっているチケットは合計二枚です」


「メニュー、僕は……なんで何も、なんであの時……」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ