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17,テラオ対策会議開催

 ペーターの台詞前の儀式禁止というハプニング? はあったが、ついに会議が始まるようだ。


「さて、みんなそろった所で会議を始めるわよ。まずは、今日からシノービが斥候の教官として配置についてもらうことになるんだけど、準備はできてる?」


「問題ないッス……」


 むくりと起きた若い女性、シノービは眠たそうに答えた。

 机に突っ伏していたのは、以前ケンサンの依頼で任務をこなした彼女だった。


「語尾は『ござる』、そう決めたでしょ」


「……了解ッス、ござる」


 何故かござるを強いられているシノービ。

 ただでさえベタな子分キャラっぽい語尾なのに、さらに『ござる』が追加されていた。


 小柄な体にかわいい小顔、くりっとした黒い瞳がちら見えしてるが、相変わらずまぶた半開き。

 健康的に日焼けした褐色肌は変わらないが、ハニーブラウンの髪はうなじの部分で緩くまとめた動きやすいスタイルに変えていた。

 動きやすいように髪をまとめ、ほんの少しだけ活発そうに変身した彼女が、テラオに斥候技能を教える教官らしい。


「やっぱこの格好なんッスか? でござるか?」


 ラテン系に見える顔立ちから、踊るように軽快な戦闘が想像できる。

 彼女の言う格好だが、えんじ色の短い丈の忍者服、黒革のショートパンツに網タイツと足袋。

 以前はスウェットスタイルだったことから、忍者スタイルは強いられて仕方なく着ていると言ったところだろう。


「斥候と言えば忍者! 忍よSINOBI。女忍者スタイルなんてかわいいでしょ」


「は、はぁッスござる」


「シノービの準備は問題なさそうだから、今日の議題ね」


 バン!



テラオ君をどこまで強くして良いか問題。



 ご丁寧にメニュー以外四人の目の前にそれぞれ看板が浮いている。

 看板はクエスト専用の物ではなかったらしい。神殿の道案内に使われたりしていることからも、様々な場面で使われていることが想像できる。


「あぁ、ここで際限なく鍛え続けると、転生した後でセカイ統一王にでも成れちまうってことですね」


 ベイスが目の前の看板を脇に避けて発言する。


「そうだネー 肉体を鍛えるわけじゃないから転生してすぐには無理カモ。でも将来そうなってもおかしくないよネ~~~♪」


「ナニカ対策の点から申しますと、もっと鍛えて欲しい所です」


「テキトーなところで妥協すれば良いんじゃないッスか? ござる」


「そのテキトーな所はどこなのかってことなのよね」


「あー、強すぎても駄目、弱すぎるのはもっと駄目ってぇことですね」


「そうなのよ、あたし達はそのセカイ最強の存在位は把握してるけどさ。テキトーな所ってのを把握して共有しておかないとやり過ぎちゃいそうなのよね。

 それにケンサンが言うように、ナニカの隔離、枷の発動を抑制する点から見ると、タマシイの強度はもっと必要らしいのよ」


「なるほどッス、ござる」


「でも、とりあえずの指標は必要よねってことで、特別ゲストをお呼びします。イチコちゃん」


 メニューがパチンと指を鳴らすと、メニューの後ろに美しい女性が現れた。


「ハッ メ、メニュー様。いえ、メニュー、急な呼び出し驚きましたわ」


 イチコと呼ばれた彼女。

 プラチナブロンドの長い髪にパールホワイトの薄いドレス、背中からは二対の羽が生えており、ほんの少し浮いている。

 北欧美人な顔立ちなのに、名前がちょっと合ってない気がする。

 メニューによく似た格上女神に、『面倒な物』を渡した銀色女神とそっくり。だがほんの少しだけ違う、双子のようなちょっとだけ違う感がある。


「イチコちゃん、あんたが管理してるセカイの常識的な強さを全て調べて来て。特に十七番を中心にした所をね。

 あと各セカイの常識ってのをまとめて調べておいて」


「かなりの仕事量に思えるのですが……。それと私はイチコではなくジャn「イチコで良いのよ!」 あ、はい」


 イチコの名前も強いられているらしい。


「仕事が多いって言ってもそれぞれのセカイの神にやらせれば良いだけでしょ、どうせ見ているだけが仕事なんだから。

 持ち回りで見てるだけとか……ちょっとは仕事しなさいってのよね。

 まあ勝手に何かされても、後始末が大変になるからそれはそれで面倒だけど」


 各セカイの神は北欧風美人イチコの部下的ポジション、その上司っぽいメニューは最強の存在らしい。

 微妙な名前も強いることができるとは……。

 テラオは自分で決めた名前を使わせてもらえるだけ運が良かったのかもしれない。


「どうせなら他のセカイ樹の枝管理者にもやらせようかしら……、ゴッコとかあたしに仕事させてるんだからそれ位当然よね……」


「で、ではわたくしは枝の神殿に戻りますわ。急いでお仕事しないとですわ」


 さらに仕事が増えてはたまらないと、イチコは指をパチンと鳴らし、焦るようにその場から消えた。


「と言う訳で、情報が集まり次第みんなにはテキトーな所を把握して共有してもらうわ」


「了解」「了解したヨ~~~♪」「わかりました」「了解ッス、ござる」


「次の議題は、というか報告ね」


 バン!



くもりミイラどうするの問題



「枷の詳細が判明したから報告ね、これはケンサンが頑張ってくれたおかげね」


「仕事ですから」と、事務的なケンサン。


「あの子のタマシイにナニカが埋め込まれたのは、走馬燈を見てもらったからわかるわよね。『あばばばば』ってなった瞬間ね」


 遠足で行った古代の化石展での感電事故が、感電ではなく何かを埋め込むためのものだった、ということは判明している。


「ナニカについてはまだ詳しくわからない。けど枷についてのみ進展があったわ、ケンサンおねがい」


 ここで何故かメニューが指をパチンと鳴らした。


「はい。検査の結果あの枷は、タマシイの情報処理および活動速度が百分の一に落とされる、と言う物でした」


「おいおい、百分の一ってぇと、まともな生活なんてできねぇんじゃ……」


「かなり鈍くさくなっちゃうネ~~~♪」


「ボケ老人ッスね、ござるね」


「実際見た目も弱ったタマシイに見えて、処分直前でしたからね」


「ひどく厳しい枷だったのよね。でもあの子はナニカの想定よりは長生きできたんじゃないかしら。

 あの子のタマシイが強かったのと、周りの人たちが優しかったんでしょうね。運が良いのか悪いのか」


 優しい人たちに囲まれていた生前のテラオ。恵まれた環境で育っていたから、あれでも長生きだったという事実が告げられた。


「ちょっと待ってくれ。そのナニカってのはあいつのタマシイに埋め込まれた以外は見つかってないんですかい。そんなものが幾つあるかわからないなんて悪夢ですぜ」


「それが、あの子の以外は見つからない。たぶん全てぐしゃっと済みだと思われるわ。つまりナニカが拡散されちゃっている可能性があるわ」


「ま、まじですか。影響は出ちまってるんですか」


「影響は今のところ不明ね。でも、何も無い訳がない。

 暫定措置としてあの子の居たセカイに近い枝セカイ全てを隔離して凍結処理をしたわ。ただ、あたしの管理区域の下からの攻撃だから、範囲が確定できてないのよね。

 最悪タマシイ管理センター全ての凍結をしないといけなくなる、輪廻の凍結。つまり全ての生物が生まれなくなるわね……」


 テラオに埋め込まれた何かの詳細はいまだ不明らしいが、わからないこそ危険な物として扱われているのだろう。

 テラオの魂から無理矢理何かを取り出すようなことはないようだが、うっかり漏れ出すようなことがあったら……、恐ろしいことになってしまうかもしれない。

 もしかすると雲上の孤島という場所が、テラオの魂を隔離する施設なのでは。

 いや、メニュー達の思惑は不明だが、利用するつもりなら最初から修行などさせていないだろう。


「セカイの凍結。さらにに輪廻の凍結……ですかい。五番セカイ樹への影響が大きそうですね」


「それが狙いだったのかもしれないッスね、ござるね」


「セカイ樹を枯らすことが目的……ありそうね」


「範囲によっちゃ、セカイ樹を枯らすことに……って怖すぎるぜ」


「まずいネー、おそろしいネ~~~♪」


「ペーターが言うと怖くなさそうッス、ござる」


「あはは、確かにそうね。で、重要になってくるのがあの子なのよ、ぐしゃっとされていない唯一の生き残り。

 まだ取り出すことはできないけど、ナニカを調べるための重要な手がかりね」


 なるほど。テラオの存在は、唯一内部に何かが残っている魂という大事な物だったらしい。

 時折出てくる世界樹というのは、この広場の周囲にそびえる銀色に輝く六本の柱のことだと思われるが、この柱いや樹と世界がリンクしているのだろうか……。

 複雑な話が繰り広げられている。



「取り出すまで行かなくても、調査が進めば対処用の薬を作ることができると思います」


「調べるためにも、あいつにゃ強く成ってもらわねぇとってことですね」


「五番以外は大丈夫なんッスか? ござるか?」


「あたしの樹の枝が六本に分かれたのが四十五億年位前よ、あの微生物は十二億年前以前には無い種類。なら他の枝は影響受けないわ」


 億単位で過去の話。四十五億年前を見ていたように語るメニューは一体……。


「十二億年前に仕掛けられたトラップだったッスね。なるほどッス、ござる」


「十二億年前にと言うのは正確ではないですね。

 メニューの通常管理区域は十億年前までの部分、管理部分でそのような工作行為ができるはずはありません。

 従って管理外に落ちていった樹に仕掛けられたと言うべきでしょうね」


「ここより下を自由に動けるってぇことは、メニューと同等かそれ以上ってことですよね」


「そうなるわね、普通はそんなことをしたら枝が発生する。でもそれが無いということはそういうことができる存在ね」


「仕掛けた枝セカイと仕掛けてない枝セカイッスね。突然下からにょっきり生えてきたら気が付かないはずないッス、ござる」


「この件はちょっと問題が大きそうだから、根っこの人のところで議題に挙げるわ。

 仕掛けた方法や犯人についてはあたしに任せてくれればいいわ。みんなはこっちのことに集中してちょうだい」


「最悪は五番セカイ樹の廃棄か凍結、そうならねぇためにもあいつの強化が必要になってくるってぇことですな」


「重要人物の育成ッスね。責任重大ッスね、ござる」


「調査研究はお任せ下さい、最悪にならないよう努力いたします」


「明日からは新ダンスだナー、激しくボッキボキにしないとネ~~~♪」


「ガハハハ、全員やる気十分だな。あいつを普通の人間として転生させるってのはあきらめたほうが良いかもしれねぇな」


「さて、会議はこんな所ね。イチコから報告が来るまではいままで通り。みんな配置に戻ってね」


 会議は穏やかな? 雰囲気で終わったようだ。

 とにかくテラオは今後、今まで以上に容赦なくしごかれることが決まった……。



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