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13,教わるスキルを選んでおこう



――ビリッ


――ビリビリ


――バリバリバリ


「うひゃぁ」


 テラオは腕時計さんの、びりっと目覚まし機能で強制的に起こされた。

 そんな機能が最初から備わっていたのかは不明だ。


「あぁ、寝ちゃってたのか」


「魔力を使いすぎたって所ね。限界がわかったと思うから、次からは気絶しない程度でやめておくことね」


 倒れたテラオを心配していたのか、メニューがそばに現れた。


「どのくらい気を失ってたの?」


「ペーターがここに運んでからすぐ起こされたわよ」


「腕時計さん……甘くないっすね。ん、デレた腕時計さんか……」


 目を瞑り、ニヘラァとだらしない笑顔になったテラオの頭上に、ほわんとした魔力の球体が浮かび上がる。

 球体の中には何かがうっすらと……。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・


 ここはテラオの想像世界。

 踊り疲れて限界を迎えたテラオがぱたりと倒れた場面だ。


――♪ピンポロポン。

 聞き覚えのある音と共に、黒髪の美少女が現れた。

 光沢のあるつやつやとした髪をふわりと払い、倒れたテラオを抱き寄せる。


「あらまあ、倒れるまで頑張ったのね。私の膝枕で少し休むといいわ」


 黒髪の美少女は優しくテラオの――。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・


――バリバリバリバリィー


「あばばばば」


 腕時計さんの電撃でテラオは我に返った。

 頭上にあった球体スクリーンはすでに消えている、あれは何だったのだろうか。テラオが開発した新魔法なのか? 


 寸劇を見せられて、メニューでさえぽかんとしている。

 テラオの脳内映像をダダ漏れさせる新魔法? おかしな物を見せられたからか、専用腕時計がピリピリと帯電してる。

 気付いたテラオは腕時計をそっとなでる。


「えっと……、あんた、ほんとにおもしろいわね。」


「なんで腕時計さん機嫌が悪そうなんだろう」


「無自覚なのね……」


 あの寸劇は無意識に公開された物だったようだ。『テラオ脳内劇場』とでも言うべきか、あまり上演されないことを願うばかりだ。


「まあいいわ。魔力は回復しているはずだから、自習でもしながらのんびり過ごしなさい」


「え? 回復そんなに早いの?」


「高性能ボディーだからね」


 明かりの魔法を使ってみるテラオ、練習通りに問題なく点灯した。


「ちょっと休むと回復するってことかな」


「ここに居る間は連続して使ってなければすぐに全回復するわね。一晩寝ないと回復しないとか、非効率でしょ」


「な……なるほど、休む暇があるなら修行……ですね」


「そういうこと。フィールドだとそうは行かないから注意が必要よ。魔素の尾が空を通過する時間くらい休んでいると全回復。そう思っておけば良いわ」




 魔力の回復方法を把握したテラオ。

 ここでなら減ってもすぐ補充されると聞き、安心して練習できると思ったのだろう。

 今日教わった魔法と、周りの魔素を使う節約魔法の練習を始めるようだ。


(節約魔法の方はいまいち感覚がつかめないな。まずはベイスさんの言っていたことをノートに残しておこう)


 忘れないようにノートに残しておくことは大切だ。今日教わったのは身体強化や節約魔法、すぐに全てを理解できる物ではないだろう。テラオは講習内容をできるだけ分かりやすくノートに書き残していった。

 ついでに昨日の晩、スキルについて相談したことも書き残している。


 スキルのことを書いたことで気になりだしたのか、講習リストのパンフレットを開き、習いたいスキルをピックアップしだした。が、目的が見えずに迷っている様子。


「とりあえず……あるか分からないけど、あったら良いスキルを書き出してみよう。」


 【いろいろ鑑定、脳内マップ、気配とか察知、気配遮断、サバイバルスキル、獲物解体、アイテムボックス】ノートには思いつく便利そうなスキル、小説やマンガで見たことがあるような物を書き並べている。


「お金を稼ぐ手段も欲しいよな、手に職系とか冒険者だよな」


 【鍛冶や裁縫、錬金術的な何か、魔道具作れたりとか、罠の察知や解除、デバフ掛けちゃうよ的な】今度はお手軽にお金が稼げそうなものや、冒険に役立ちそうな物、楽できそうな物を書き加える。


「で、答え合わせにパンフレットで一覧を見てみよう」


 よくある便利スキルを書き連ねたが、ずばりな物はほとんど無かった。


 いろいろ鑑定は、モンスター知識、動植物知識、魔法道具知識、この辺を合わせればなんとかそれっぽい。

 だが、前世のなんちゃら鑑定団の鑑定士のように、自分の知識から推測して鑑定する、知識量が物を言う鑑定方法しか無かった。


「鑑定って唱えると、ほわわんと浮かぶような物は無いか……」


 脳内マップは当然無かった。

 ただ、斥候系技能にマッピングというのが有った。

 気配察知や遮断、罠の解除も同じく斥候系の技能として。獲物解体は狩人等の特殊職技能系のページに載っていた。


「特殊職技能系に欲しいものがたくさんあるな。サバイバルは野生児……これは職なの?

 生産系は……、余裕ができてからだよね。となると、斥候系の技能を教えてもらえるか相談しないといけないな。あとは、有ればアイテムボックスかー」


「まとまったみたいね。斥候系技能の講習は準備中よ、ベイスとペーターの講座が進んだら紹介してあげるわ」


 いつの間にか背後に居たメニューがノートを確認している。


「おーメニューありがとう。で、アイテムボックスっていうのはある?」


「インベントリーとか無限鞄とか言う物よね。空間魔法で異次元に繋がっていて、とか言う」


「そうそう、中の時間が止まってて、暖かい物しまうといつでもどこでもそのまま食べられるとか」


 ファンタジーと言えばアイテムボックス。物流チートにも使えるという便利アイテムの代表だろう。


「あったらいいわね、そんな便利な物」


「あれ……、無さそうな雰囲気?」


「それっぽい物としては、携帯できる転送の魔道具というのが開発されてたわね。送るだけで取り出すなんてできないから、あんたの言う物とはちょっと違うわね」


 時間が止まらないタイプも無いっぽい。送るだけで取り出せないのではあまり便利な気がしない。


「そういう物が有ったら良いなというのはわかるんだけどさ、その謎空間に入れたものをどうやって取り出すのかが難しいと思うのよね。

 念じただけでぽんっと出てくるとか、そのアイテムに意思があって持ち主の心を読まないとできないしねー。

 ファンタジー異世界に転生したら、あんたのライフワークにでもしてみたらいいんじゃない?」


「うぅ、そんな難しいことできそうにないです、ごめんなさい……。じゃじゃあ、この前ベイスさんがビール出したみたいなお取り寄せは……どうかな」


「あはは、もしそんなことできるようになったら、あんた働かなくなっちゃうんじゃないの? 『剣と魔法のファンタジー異世界』に行って引き籠もりにでもなりたいの?」


「いやいや、そんなことはないけど。あったら便利そうだなって」


「そりゃ便利でしょうけど、あんたに分けられる力じゃないわね」


「ですよねー」


 世の中そんなに甘くはないようだ。

 確かにお取り寄せができたら異世界のんびりライフが捗りそうだが、そのまま引き籠もりそうな気配がテラオにはある。



 それから暗くなるまで今まで教えてもらったこと、今日教えてもらった魔法のことなどをノートに書き残し、思いついたことを書き加えたりしていた。


「周りの魔素をつかって身体強化ができたら……、さっきみたいに気絶しないですむよな。節約魔法を覚えることと身体強化魔法の上達、これができたらダンスの課題合格できそうだな」


 節約魔法の練習をしようと、ふわっとした魔素玉を目指して練習を始めるテラオ。


――魔力を極薄く、……千分の一位つかって――


「千分の一がいまいち掴みにくいな……十分の一の玉から練習してみようかな」


 さっきの魔力の何分の一という精密な魔力操作はかなりの難易度。

 雲上の孤島は、テラオの行動に合わせて時間が進む特殊な環境。時間を掛けてじっくり取り組む練習をするのにもってこいの場所だ。


 最初の十分の一ができたら、そのまた十分の一と徐々に小さくして行く。

 辺りに小さな魔力玉がいくつもでき、びっしりと埋まる頃、やっと千分の一サイズができるようになった。


「うわ、集中してたから気が付かなかったけど……、これだけ魔力玉に囲まれると怖いな。ハハハ」


 明かりのないここは、日が暮れてしまうとかなり暗い。

 だがテラオの周りだけが無数に浮かぶ魔力玉に照らされ、うすらぼんやりと光っている。中央でぼやっと照らされたテラオ……、軽くホラーだ。


 小休止した後、一旦辺りの魔力玉にはお帰り願い、改めて千分の一の魔力をうっすら広く広げる練習を始めた。


「ふわっとさせるイメージが難しいなー。ふわっと……ふわっと、綿飴みたいな感じはどうかなー。綿飴ってどうやって作るんだったかな―、暖めて高速回転する穴あきの器から飛ばすんだったような……」


(魔力玉を高速回転させ、小さな穴から糸を飛ばすようなイメージを……)


 小さな穴から押し出されるように飛び出した魔力は、四方八方へ糸状に飛び出しどこかへ行ってしまった。


「ぶひゃ、ぺっぺっ。いや、何も絡まってない。そうか……糸じゃなくてただの魔力だから絡まないか。ハハハッ」


 綿飴作戦は失敗だった。

 ぶつぶつ言いながら試行錯誤するテラオ、ふわっとさせるまではまだ掛かりそうだ。



 その後も湯気のイメージで魔力玉を蒸発させてしまい見失ったり。スポンジのイメージで穴あきチーズのような魔力玉を作ったり。

 試行錯誤を繰り返し、失敗を連発していた。


「雲だなー雲だ。なんか小学校で実験した気がする、ぎゅっと圧を掛けてパッと解放すると雲になるような実験だったな」


(千分の一魔力玉にぎゅっと圧力を掛けるイメージ……、パッと解放!)


「お ふわっとなった。ちょっと広がりすぎた気がするけど、ふわっとしてるよ」


 ソフトボールサイズの予定が、圧のイメージが強かったのだろう。スイカサイズに広がっていた。

 元はごま位の大きさだったので、かなり広がっていることになる。


――この魔力に協力してくれる魔素に自分の魔力を通してお願いをするわけだ――


「ふわっと広がった魔力の周りにある魔素にお願いするってことだよね……ピンポン球サイズにぎゅっと集まって光の玉になってくれないかなー」


 キュッと集まってビッカァーと光り始めた。ベイスの見せてくれた物より何倍もまぶしい。


「うひぇ、なんでこんなに眩しいんだ……失敗だー。ありがとう解散してくださーい」


 解散をお願いすると、やたら眩しい光の玉はすーっと消えていった。


(失敗の原因は何だろう……。ベイスさんは僕の普通に作った光の玉と同じ位の明るさだったよな。千分の一の魔力玉だとあそこまで光らないから節約魔法は成功したっぽいけど。)


「ふわっとの大きさか! 大きすぎて協力してくれる魔素が多すぎたってことか!」


 試行錯誤の末、ちょうど良い圧力でソフトボール大のふわっと魔力玉を作ることに成功し、ベイスと同じ位の光の玉を成功させたテラオ。


「ふぅ達成感。結構時間が掛かったけどできるようになった。これはうれしいなー」


 生前、努力して結果がきちんと出た経験があまりないテラオには、達成したと言う実績が少ない。

 達成感と充実感で良い気分なのだろう、寝転がりニヤニヤとしている。


 空気を読んだ時計さんも、今回ばかりは少しだけ時間をくれたようだ。

 いつもなら達成した途端に朝が来ているはず。



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