0,面倒なもの(プロローグ)
「面倒な物を拾ってしまいまして、どのように処理したら良いのかご指導いただきたくお願いに参りましたわ」
巨大な大理石を削り出して作ったかのような神殿。
古代の神殿を思わせる部屋の正面に、御影石で作られた玉座が置かれている。
玉座の間と思われるこの部屋では、女神が女神に謁見しているような光景が覗える。
玉座の前に傅く女神はプラチナシルバーに輝く長い髪、パールホワイトの薄いドレスを身に纏い背中には二対の銀色に輝く羽が揺れている。
銀色女神が『面倒な物』を拾ってしまったため相談に来た、という状況なのだろう。
煌びやかではないが質素でもない、長い歴史を感じさせる神殿の、重厚な玉座に座っているのは銀色女神よりも格上と思われる女神。
パールホワイトのふわりと軽い羽衣のようなドレスを身に纏い、淡く優しい光がオーラのように溢れている。背後には三対の羽がふわふわと浮かび、時折風を送るようにゆっくりと動く。
腰まで届く金色の長い髪は、動きに合わせて光の鱗粉がきらきらと舞うかのように輝きを放っていた。
黙って話を聞いていた彼女はゆっくりと目を開ける。くるりとカールした長いまつげが揺れ、ブルーサファイヤ色の瞳が確認できた。
細やかで抜けるように白い肌に、うっすら赤みの差した頬を持つ格上女神は、ゆっくりとかわいらしい口を開いた。
「あははは、面白そうね! あたしが預かって調べてみるわ」
高貴な雰囲気の格上女神は意外と俗っぽい口調だった。
彼女は銀色女神から『面倒な物』を受け取ると、真っ黒な球状空間を創造し、ぽいっと放り込んでしまう。
「ありがとうございますわ。私ではどう対処すれば良いか分かりかねる物でしたので助かりますわ」
「何かわかったらあんたにも教えるから楽しみに待ってなさい」
銀色女神は深く頭を下げると謁見の間から姿を消した。
「面白くなりそうね、みんなの暇つぶしにも丁度良さそうだしね!」
格上女神は背後の羽から黄金色に輝く羽根を一本抜くと、『面倒な物』を放り込んだ真っ黒空間へと差し込む。
羽根を吸い込んだ空間はその場から消えていた。




