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完治の難しい病

完治の難しい病

作者: ひめきち

 私は、不治の病です。

 あ、それは言い過ぎでしょうか。完治の難しい病、くらいにしておきます。


 ちなみに美少女。


 花の女子高生でもあります。



 何の病気か、聞きたい?ねえ、聞きたい?

 ウザっ!!

 あなた今、そう思ったでしょう?

 私も思いました。やだ、気が合うかも~。


 なんちゃって。

 ウザいごっこは止めます。だからそんな顔し~な~い~で~。調子こいてました、すみません。


 話を戻しますね。

 私の病気は何か、というと・・・女の子なら一度はなった事があるんじゃないかという、あれです。そう、便秘。私は、重度の便秘症なのです。


 あれ?なんで目、逸らすんですか?どこ行くんです?


 待って待って、待って下さい!

 便秘って聞くと大した事ないように思われるかもしれませんが、本人には結構深刻な悩みなんですよ!!

 この病(体質?)のおかげで、過去何度酷い目にあった事か………。思い出すと泣けてきちゃいます、ううう……。

 あ、ハンカチ?有難う御座います。

 話、聞いてくれるんですか?

 やっぱりあなた、いい人ですね。

 そうですよね、聞いてもらえれば気分が晴れるかもしれませんし、じゃあ、思い切って話しちゃいましょうか!


 ■□□


 私の便秘人生の始まりは、小学生時代に遡ります。

 多分赤ちゃん時代とかからその兆候はあったんでしょうけどね!本人覚えていないので、割愛です。記憶にある最初の『便秘体験』っていうのが、小学生の時だったんですよね!


 なんだかお腹が痛いなあ、と思って母親に相談したんですよ。そうしたら「生理じゃないみたいだし、便秘じゃないの?」って言われて、「この前お通じがあったのはいつ?」って軽く聞かれたんですよね、母親に。幼児の頃ならいざしらず、小学生女子ともなれば、母親にトイレの中まで毎回付き添ってもらう事なんてないじゃないですか。だから知らなかったんですよね、うちの母も。

 私は考え考え、こう答えました。

 「う~ん、覚えてないけど……1ヶ月くらい前?」


 それから大騒ぎです。あれよあれよという間に私は病院に連れて行かれ、問診され診察され、今思い出しても羞恥に頬が熱くなるような、変態プレイと紙一重の医療行為を受け……。思春期に入ったばかりの女の子には辛い体験でしたよ……うっうっ。

 私はその時に学びました。

 便秘するというのは、恥ずかしい事なのだと!

 病院で処置を受けなければいけないような事態になる前に、自分で何とかせねばならないと!


 そこから私の便秘との長い長い戦いが始まったのです。


 最初は食生活を変えようと思いました。

 でも、女の子ですもの!甘いケーキ、お洒落なパン、食物繊維とは無縁のスナック菓子、そんなものが大好きな私は、3日と持ちませんでしたよ。

 もともと食べる量も少ないんですよね。便秘のせいで常にお腹が一杯というか。大腸小腸どころではない、十二指腸まで詰まってんじゃないの?ってくらいパンパンだと、本当に食欲なくなるんですよ。給食もよく残しましたっけ。その所為で一部の人には『少食』と思われていたみたいですけど、たま~に便秘が解消されて腸が空になると人の3倍くらい食べてましたから、本当は違います、大食らいです、私。


 次に頑張ったのは運動ですね。

 つまり、腹筋が足りないらしいんですよ。腸が蠕動運動をして内容物を動かしていくためには、腹筋。筋肉を付ければいいと言われて、エクササイズに通おうとしたんです。

 でも、もともとインドア派の私には、ハードルが高すぎました。

 初日の体力診断でトレーナーに、「こんなに筋肉無い人、いるんだ…」と呆れられちゃったんです。翌日には筋肉痛になりましたし、2度と行ってないですね、あのジム。

 ん?腹筋何回出来るか、ですか?脚押さえてもらって2回、それが私の最高記録ですけど何か?

 あ、ちなみに水泳は出来ません。所謂カナヅチってやつですね。

 ……なんでそんな可哀想な子を見る目で私を見てるんですか?何気に傷つくんですけどそれ。

 こんな私でも『華奢』とか『儚げ』とか呼ばれて、一部の人には受けがいいんですよ!……ええ、自分で言ってて虚しくなりますけど。


 『華奢』といえば。

 上半身は自分でも確かにそうかな~と思わないでもありませんが、実は私、下半身デブです。

 これは便秘者の宿命とも言えるんじゃないでしょうか。

 お腹ぽっこり。

 これ、一度でも便秘したことある人なら、分かりますよね!しょうがないですよね!

 そんな体型を隠そうといつでもワンピース、体のラインが出ない服ばっかり選んで着ていたら、いつの間にか『清楚』とか言われていました。ウケます。

 ああ、プールの授業ですか?さすがに水着だと体型誤魔化せないので、そのシーズン中は必死で便秘対策してましたね。下剤に次ぐ下剤、食べるとお腹に溜まるのでゼリー飲料だけでカロリー取ってたり。貧血で何度も倒れていたのもその所為だったんでしょうけど。今にして思えば、あれのせいで『病弱』イメージが更に強化されたんじゃないでしょうかね…失敗しました……。



 え、便秘薬?

 試しましたとも、勿論。

 便秘薬、つまり下剤っていうのは、大きく分けて2種類あるんですよ。

 腸の蠕動を促す刺激性下剤と、内容物を柔らかくして物理的に出し易くする機械的下剤ですね。

 んん~、分かりやすく説明すると、ホースに石が詰まっている場合、外側からホースをつまんで徐々に石を出口まで押し出していくか、中の石を砕いてさらさらの砂にして出すか、って事ですかね。


 私の場合、このホースの石を外側から押し出す方、刺激性下剤ですが、これが合わなくてですね…。飲んでもただお腹が痛いだけなんですよ。便秘は解消されないのに、酷い腹痛だけが続くんです。これ、辛かったです…。この所為で何度学校を休んだことか…。欠席理由が毎回『腹痛』ではいかにも仮病っぽいから、時々『風邪』とか『発熱』とか適当に言ってたら、いつの間にか私、病弱認定されてました。中学の卒業間近には『欠席女王』という渾名までつけられていたとかいないとか…。


 それで私はもう一つの薬、ホースの中の石を砕く方の、機械的下剤を飲むようになりました。こっちは私にも効き目ありましたよ。今でも困った時はこれに頼っています。でもですね、これが、不味いんですよ!!味自体はそこまででもないんですが、口に入れた時に、ざらりと崩壊する感じ。水分に反応している結果らしいんですが、その、口内の水分を全部持って行かれるような、砂を飲み込むような、何とも言えない嫌~な感じがどうにも苦手で。だから私は、必要に迫られない限りは滅多に飲まないです。


 つまり、いまだに慢性的に便秘って事ですね。


 □■□


 で、今までの話、聞いててどう思いました?

 『少食』『病弱』『清楚』『華奢』『美少女』ときたら――、さぞかしモテるんだろうって?

 当たりです。

 うわ、鼻に掛けてて嫌な奴、とかって思わないで下さいね。

 しょうがないです。本当の私はただの便秘女なんですけど、私のパブリックイメージというのがそうなっているんですから。

 私自身も便秘だっていうのがバレるのは恥ずかしいので、あえてそのキャラに乗っかってるという所もありますし。


 告白?

 ええ、されたことあります。

 付き合ってみたことも何回かありますよ。

 でも、すぐ駄目になっちゃいましたけどね。

 なんでかって?

 ……そうですねえ、私、基本引きこもりなんですよね。週末は必ず下剤飲んでますし、そうすると1日中、いつトイレに行きたくなるか分からない訳ですよ。そんな状態でデートなんて行きたいと思いますか?便秘だって知られたくないから、断る理由も曖昧に誤魔化して……。そうやってると段々、二股なんじゃないか、本当は自分の事が好きじゃないんじゃないかって疑われて……自然消滅、のパターンでしたね。


 そんな事繰り返して女子に嫌われるのもなんなんで、高校からはそういうのナシにしよう!と決意したんです。基本お断りの姿勢ですね。

 入学してからもお手紙とか何回か頂いたんですけど、毎回断っているのも角が立つっていうか、嫌な女って感じするでしょう?オマエ何様だよ、何人切り目指してんだよ、みたいな。

 それで閃いたんです。告白されなきゃいいって。

 幸い私には病弱イメージがありますから、告白されそうなお手紙とか呼び出しとかがあった日には、具合が悪くなって早退する事にしたんです。

 そりゃあちょっと相手には失礼かなって思わないこともないですけど、どうせお断りするんだし。あと、何回かドタキャンしてると、相手の人も諦めちゃうんですよね。それってつまりそこまで深い気持ちじゃないっていうか……所詮私のパブリックイメージが好きなだけであって、本当の私が好きな訳じゃないから、いいやって。


 やっぱり私、嫌な女ですかね?


 □□■


 え?何ですか、唐突に?

 「僕の名前知ってる?」ですって?

 ……ごめんなさい、知りません。高校に入学して1ヶ月、まだクラスメートの名前を全部は覚えていないんです。失礼ですよね、私。ホントごめんなさい。

 あ、でも、うちのクラスの委員長さんだっていうことは知ってます!いつも穏やかで優しくて親切な人だなぁって思ってました。それで今日もご親切に保健室まで付き添ってくださったんでしょう?その上私の長話にも付き合って下さって。保健医の先生、どこに行かれてるんでしょうね。さっきから2人でだいぶ待ってますけど、帰ってきませんよねえ。


 ん、具合?

 大丈夫ですよ、落ち込んだ気分はだいぶ良くなりました。あなたが話を聞いて下さったおかげかもしれません。ストレス解消って大事なんですね。

 あ、ええ、ストレス。そうです私、実は今体調が悪い訳では無くて……その、さっきお話ししましたでしょう?今日もお手紙を頂いてしまって……仮病、です。告白される前に早退して帰ろうと思いまして……。


 手紙?

 持ってますよ。さすがに捨てたりはしません。誰に見られるか、分かりませんからね。

 差出人?

 ここ。はい、名前書いてありますね。知らない人です。

 ああ、あなたと同じ名前なんですか。凄い偶然、え?偶然じゃない?本人?

 え?あれ?


 待って下さい、なんで私、ベッドに押し倒されてるんでしょうか?

 「本当の姿を知られたからには、今までと同じ言い訳は通じないよね?」って、なんですか?

 あの、待って下さい、私、状況がよく分からな…。

 「逃げられると思わないでね」って、そんなイイ笑顔で言われても!

 委員長さん、あなた、いい人じゃなかったんですか?



 パブリックイメージに騙されてたのは私の方だったって事でしょうか……!?



 

シリアスものを書いていたので、唐突にコメディー?が書きたくなりました。出来心です。ごめんなさい。

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[一言] 初めまして。 米本城初音と申します。 いや…凄い話でした。 読後最初に思ったのがこれ。これだけ。 その後色々面白かったなどの感想が出てきました。 凄い話につきます。 一人称小説や、ナレー…
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