夜の海岸、妹と
お題ジェネレーターにより
●ジャンル:恋愛・ラブコメ ●キーワード:双子の妹、突風、生徒会 ●シチュエーション:夜の海岸で恋人と二人 ●セリフ:口から……酸性の液体がっ!
という指令が出たので、簡単に書いてみます。
構想10分、執筆1時間10分。
「…ねぇ、お兄ちゃん…海、行かない?」
夜、風呂から上がり、二階の自室へ戻ろうと階段に足をかけたところで、リビングから出てきた妹にそんなことを言われた。
この家は元々海沿いの道に建っているので、海岸までなら歩いて数分で行ける距離だ。
なのでそこは問題ないんだけど…
こいつがそんなことを言うなんて珍しいな。
僕と妹は双子である。しかし顔は全然似ていない。いわゆる「二卵性双生児」というやつだ。
そして顔も似ていなければ、性格も能力も似ていない。
僕は自分で言うのもあれだけど、割とお気楽な性格だ。対して妹は真面目な性格で成績優秀、容姿端麗。高校では見事に生徒会長の任についている。一般生徒は勿論、生徒会の役員からも絶大な信頼を得ている自慢の妹である。
そんな彼女がこの時間に海に行こうだなんて。この時間なら部屋で明日の予習や復習をしている時間なのに。
それに、少し顔色が良くない様に見える。
もしかしたら学校で何かあったのかもしれない…
僕は「ちょっと待ってて」と言い、自室で外着に着替えてから、妹と海岸へ向かった。
12月も半ばになれば、さすがに外の空気の冷たさも容赦がない。
静かな波音をBGMに、僕と妹は潮風を浴びながら無言で砂浜を歩く。
そして、少し前を歩いていた妹が立ち止まった。
「ねぇ、最近高校生活はどう?」
「どうって…別に普通だよ。授業中に寝たりして、怒られて、放課後は部活やって帰ってきて。そんなのの繰り返し…かなぁ」
海の方を見ながら聞いてきた双子の妹に、僕は答える。
辺りには街頭なんかないけど、今夜は綺麗な満月だ。月明かりのおかげでそんなに暗くは感じない。
そんな月明かりに照らされる妹を改めて見る。
長く艶やかな黒髪を夜の潮風に躍らせている彼女は、やっぱり綺麗だった。
「恋人とかいないの? ほら、あのバスケ部の1年生のマネージャーの子とか」
「ないない。お前と違って顔と中身が良いわけでもないから、見向きもされないよ」
ほんと、どうしたんだろう。色恋ネタなんか言ってくるような性格だったっけ…?
「ふーん。そんなに悪くないと思うけどなぁ、私は」
「え?」
思わず聞き返したけど、彼女は僕の方に来ると、いきなり手を握ってきた。
その手は冷たかったけど、柔らかかった。
「夜の海外、二人きり、手を握り合う男女…他の人が見たら恋人同士に、見えたりするのかな…?」
「え、ちょ」
何言ってるのこの子!
顔を見ればちょっと赤らんでるし!
「…」
妹は何も言わず、じっと僕を見つめてくるだけだ。
しかもその目は若干、潤んでいる。
な、なんかこれはマズいんじゃないだろうか。別に「実は彼女は義理の妹でした!」とかそんな設定があるわけでもないしいやあったらいいのかと言われたらそういうわけでもないけどとにかくこう…よくないぞ!
一歩、彼女が近づいた。
けど、僕はその場から下がることもできない。
妹の顔はすぐ近くにある。
も、もしや勢いに押されてこのまま…
一際強い突風が吹いた。
そして――
「おげぇえええぇぇぇぇぇぇえええぇぇ」
え?
い、妹の口から……酸性の液体がっ!
「って何で吐いたの!?」
いきなりの急展開についていけないっ
「おい、ちょっと…」
しかし妹は目を回して倒れていた。
な、なんてこったい! とりあえずうちに運ぼう!
――原因はアルコールだった。
どうやら、僕が風呂に入っているとき、妹は酔った親父の酌をさせられていたようだ。
しかしあの真面目な妹が酒なんて飲むはずない…と思ったのだが、どうやらオレンジジュースと騙されて親父に飲まされたらしい。スクリュードライバーというカクテルだとか。
つまり、僕が風呂から上がったとき、彼女はすでに酔っていたのだ。
親父曰く、一杯でああなったとのことなので、相当に弱いらしい。
翌日、妹に昨晩のことを聞いてみると、うちを出てから覚えていないとか。
言われてみれば顔色も悪かったし、少し夜風に当たりたくてああ言ったんだろうなぁ…
まぁでもとにかく、昨日の言動は酔った上でのこと。
このまま忘れておいてあげよう。
彼女のためにも――
――自分のためにも。
セリフが無茶振り過ぎて困りました。
そのせいで、盛り上げたところから一気に落とすコメディしか浮びませんでした…
ギリでラブコメ…ってことで一つ。