18.有栖と輝須。勘違いの再会
某所にある自宅兼私立探偵事務所。
探偵の輝須 彰は昔の写真を眺めていた。
小さな女の子と幼少時の自分が写っている。
有栖 由美。妹だ。
「本気で捜してみるか」
輝須は写真をテーブルに置くと、事務所を閉めて出かける。
やってきたのは幼少時に暮らしていたというアパート。
しかし、今はそこには立派なマンションが立っている。
(無理かもな……)
輝須はマンションに入り、管理人に訊ねる。
「すみません、以前こちらにアパートが建っていたと思うんですけど、確かマタズレハイツって名前の」
「マタズレハイツ? 聞いたことないですね」
「そうですか……」
当たりが外れた。
管理人が知らないとなると、マンションの住人も絶望的だ。
輝須はスマホでマタズレハイツを検索する。
一件だけヒット。
数年前にマンションに建て替えられてなくなったと書かれている。
いや、それはわかっている。
知りたいのはそれではない。
輝須が更に読み進めると、マタズレハイツの持ち主の情報を見つけた。
オフィスマタズレという不動産経営会社が持ち主だということだ。それもまだ健在。
輝須はオフィスマタズレに向かった。
やってきたオフィスマタズレで当時の話を聞く。
「建て替え前のマタズレハイツに有栖って方が居住してたかと思うんですが」
「有栖さんですか。個人情報になるので調べようがないですが、あなたとその有栖さんはどういったご関係で?」
「兄妹なんです。私は養子に貰われて苗字が変わりましたが……」
「そうですねえ……」
職員は年配の女性に訊く。
「相澤さん、あなたマタズレハイツの大家さんだったよね。有栖さんって方覚えてる?」
「有栖さん? もちろん覚えてるわ。あそこは女手一つで二人の子どもを育ててねえ」
その言葉に食いつく輝須。
「その話詳しく!」
女性は話す。
有栖家では女手一つで二人の子どもの面倒を見ていた。
名前は彰と由美。上が男の子で下が女の子だ。
ところが母親が病死してしまい、彰は親戚の輝須家へ行き、由美はいとこの元にそれぞれ引き取られた。
幼少期は交流はあったが、だんだん成長していくとそれぞれ忙しくなり、ついには関わり持たなくなってしまった。
その後、互いの両親も怪獣騒動の巻き添えで命を落とし手掛かりも失われた。
「それで、なんか聞いてないですか? 妹のことで」
「そういえば、妹さんが引き取られる時、東京に行くというようなことを言ってたわ」
「東京?」
輝須は席を立つ。
「ありがとうございます」
「お役に立てたかしら」
輝須はオフィスマタズレを出ると、飛行機で東京に向かった。
羽田空港。
ロビーを出た輝須は、東京の街を散策する。
強い地震。
街中を歩いていた輝須は驚いて立ち止まる。
地中から巨大怪獣が現れる。
自衛隊やACRの機体が飛来してくる。
輝須は怪獣から離れようと逃げ出す。
その瞬間、一人の少女が怪獣に向かって突進していくを目撃。
少女は輝須に気づかず走り抜けいく。
(自殺行為だ!)
振り返り、止めようとした瞬間。
眩い光。
白い世界が晴れると、目の前には白銀の巨人の姿があった。
一瞬だった。
巨人の体が消えたかと思うと、次の瞬間には別の場所に立っており、怪獣が爆発して跡形もなく消え去った。
巨人は光に包まれ、少女の姿になる。
「え?」
輝須は目を疑った。
巨人が少女になった。
輝須は恐る恐る近づく。
「い、今のは君なのかい?」
少女は振り返り様に驚いた。
「あ、あの……今のは黙っていてほしいんですけど」
「それは構わないよ。俺は輝須 彰。有栖って子を捜してるんだけど」
少女は警戒する。
「どうしてその名を?」
「有栖って言うのかい?」
「アリスの名を知ってるなんて、あなた何者?」
「そうか。君がそうか。君が俺の捜し求めてた妹なんだね?」
「は?」
少女は素っ頓狂な声と共に疑問符を浮かべた、
「一つ訊くけど」
少女が口を開く。
「あなた、養子に行ったテレス兄さん?」
「そうだけど」
少女は輝須の胸に飛び込んだ。
「バカ! どうしてもっと早く会いにきてくれなかったのよ!?」
輝須の胸が涙でぐしゃぐしゃになる。
「ご、ごめん……」
輝須は少女を抱きしめる。
「これからはなるべくそばにいれるようにするよ」
「テレス兄さん、ここでは私は高木 恭子って名乗ってるの。だから、恭子って呼んで」
「それはどういうことだい?」
「潜入中だから」
「潜入? 警察官なの?」
「え、なんでわかったの?」
「だってお前、昔から警察官になるって言ってたじゃないか。夢を叶えたんだね」
「すごいね。でも、なんでこの場所がわかったの?」
「調べたんだよ。東京にいるって手がかりを掴んだから来たんだけど、まさかそっちから来るとは思わなかったよ」
「なるほど。兄さんは今は何の仕事を?」
「私立探偵」
「……そっか。兄さんも探偵になったんだ?」
「ああ」
「探偵になるの夢だったもんね」
「お互いやりたいことを仕事にできたのは幸運だったね」
それで、と続ける輝須。
「あの巨人は何? 兄さんに説明して」
「ああ。あれは、怪獣退治のロボットだよ。私が動かしてるんだ。内緒にしててね」
「あ……うん」
かくて、恭子と輝須が感動の再会を果たしたのである。
いや、何かが変だ……。




