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魔王聖女  作者: 未羊


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第95話 謎が解ける元魔王

 二日目の夜、アリエスは寝床に入る前にずっと考え込んでいた。


「アリエス様、寝られませんと、また寝不足で大変なことになりますよ」


 カプリナに心配されてしまうくらい、まったく寝ようという気配がなかった。


「カプリナ様、私は大丈夫ですので、先にお休みになられていて下さい」


「そうですか? 分かりました。でも、アリエス様も早くお休みになられてくださいね」


 結局、まったく寝ようとしないアリエスを待ってられず、カプリナは先に眠ることになった。

 その様子を見つめながらも、アリエスはずっとうんうんと唸り続けている。


「どうしたの、ありえすさま」


 カプリナから離れたスラリーが、アリエスを心配して声をかけている。


「いえ、エリス様に魔力を流した時、なんだか変な感じがしましたのでね」


「へんなかんじ?」


 首を傾げるように、体を傾けるスラリー。

 アリエスが言うだけなので、スラリーのことには何のことかよく分からないのだからしょうがない。

 スラリーの様子を気にすることなく、アリエスはさっきからずっと考え込んでいる。何か心当たりがあるようなないような、そんな不思議な感じがずっとアリエスの中で渦巻いているのである。


「あぁ、やっぱり分かりませんね」


 アリエスは結局なんにも分からずじまいだったらしく、ベッドの上に思いっきり倒れ込むとかいう、聖女らしからぬ行動で横になっている。


「なんでしょうか、あの魔力……。何か覚えがあるようですが、それがはっきり分からないのですね」


「ありえすさま、いっているいみ、わからない」


 スラリーも体を左右に振り続けるありさまである。


「明日、エリス様にちょっとお話を伺うことにいたしましょう。そうすれば、少しはすっきりするかもしれません」


 アリエスは布団をかぶり、眠りにつこうとする。


「では、スラリー。眠っている間、よろしくお願いしますね」


「まかせて」


 夜の間の警備をスラリーに任せ、アリエスはぐっすりと眠ったのだった。


 翌日も同じように走り込みと座学を行う。

 さすがに二日もこなしてきたとあって、少しずつエリスの体力は向上しているようだ。

 とはいえ、さすが魔族との混血とあってか、その成長力は普通の人よりも明らかに速いように思えた。


 夕食を済ませた後、カプリナに断りを入れた上で、アリエスはエリスの元を訪れる。何気にアリエスから出向くのは初めてである。


「エリス様、ちょっとよろしいでしょうか」


「はい、何でしょうか、アリエス様」


 部屋の中できょとんとしつつも、エリスはアリエスを快く招き入れていた。


「えっと、どうなされたのでしょうか」


 今日は自分で誘っていないのにアリエスが突然部屋にやって来たので、エリスはかなり困惑している。

 すとんとエリスの隣に座ったアリエスは、唐突に口を開いた。


「エリス様、お母様のことについてお聞きしてもよろしいでしょうか」


「は、はい。よろしいですが……?」


 急に切り出された話は母親の話。エリスは何を聞かれるのだろうかと、身構えてしまっている。

 じっと真剣な表情を向け続けるアリエスだが、ちょっと戸惑っているのだろうか、なかなか次の言葉を出してこない。

 しかし、このまま黙っていても何も始まらない。気合いをひとつ入れて、アリエスはついに口を開く。


「エリス様のお母様は、今どちらにいらっしゃるでしょうか」


「……お母さんは、亡くなりました。元からあまり強くはありませんでしたが、はやり病の治療に出かけてそのままだったそうです」


「そうですか。それは、つらいことを思い出させてしまったようですね。申し訳ありません」


「いえ、ボクはもう大丈夫ですから」


 気丈に振る舞ってにこりと笑うエリスの顔に、アリエスは不意に心が痛んだ。

 魔族だった頃も人間になってからも、本当の親というものは知らないアリエスだが、今は教会の人たちが育ての親だ。そういった人たちに囲まれているせいか、このように感じてしまったようである。


「それで、エリスのお母様のお名前も、伺ってもよろしいですか?」


「はい。お母さんの名前はアクアといいます。ボクを産んだことはずいぶんとショックのようでしたが、それでもボクを育ててくれた、素晴らしい方です」


 アクア。

 この名前を聞いた瞬間、アリエスの頭の中に一人の女性が浮かんできた。


(そうか。どこかで感じたことのある魔力だと思ったら、あの時の人間がそうか)


 アリエスは思い出したのだ。

 ずいぶんと前のことだ。人間との間で交戦した際に、何人か人間を助けたことがあったのだ。

 その中には、神官の女性も含まれていた。その女性の名前がアクアだったのだ。

 相手が神官ということで、元気になるまでの間、魔王である自分が世話をしていたのである。

 神官であり、誠実に過ごしてきたということで、男性との接触はまずありえない。唯一まともに接触したのが魔王だけだと知ると、アリエスの中で一つの結論が浮かんできた。

 強すぎる魔力は、時に相手に影響を及ぼす。世話をした時に、自分の魔力がアクアの体に影響を及ぼしたのだろう。そうとしか考えられなかったのだ。


(そうか……。このエリスは、俺の娘ということになるのか。ははっ、魔王として君臨し続けてきた自分が、聖女として転生したり、聖女となる子を授かったりとは……。なんとも不思議な話だな)


 一気に謎が解けたアリエスは、目の前でエリスが不思議そうに自分を見つめていることも気にせずに、ただただ笑い続けたのだった。

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