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魔王聖女  作者: 未羊


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第94話 相性が気になる元魔王

 その夜だった。


「ありえすさま、ありえすさま」


 アリエスの上でぴょんぴょんと何かが飛び跳ねる感触がある。


「なんですか、スラリー……」


 あまりにも痛いので、アリエスは目をこすりながら体を起こしている。

 アリエスの上で、スラリーはぶよんぶよんと体を揺らしている。真夜中のせいか、少し体が光っているように見える。


「ありえすさま。えりす、ありえすさまと、おなじにおい、する」


「ええ、そうでしょうね。魔族と聖女の混ざった状態という意味では、私たちは共通です」


 眠そうな顔をしながら、アリエスはスラリーに答えている。

 ところが、スラリーはなぜか体を左右に捻るように揺らしている。これは否定しているということなのだろう。


「何が違うというのですか、スラリー」


 眠たさのあまり、眉間にしわを寄せながらアリエスはスラリーを問い詰めている。


「えりす、ありえすさまとおなじにおい、まりょく、する。ふしぎ」


「同じ魔力? 私の魔力がエリス様の中にもあるということですか?」


「そう、たぶん、そう」


 なんとも曖昧な反応に、ただでさえ眠くて寄っているアリエスの眉間のしわが、さらに険しく集まっていく。

 今の頭の状態では、スラリーの言うことをどうも正しく理解できないようである。


「……スラリー、このままで明日に支障が出ます。日中にでも改めて、話を聞かせてもらいますね」


「むむむ、しかたが、ない。すらりー、そうする」


 アリエスが大きなあくびをしたものだから、スラリーも食い下がらずに、引き下がることにしたようだ。

 まったく、こういうところがスラリーの悪いところだ。

 アリエスはそんなことを思いながら、再び横になって眠りについた。


「ふわぁああ~……」


 朝になると、案の定、アリエスは寝不足になっていた。

 あまりの大あくびに、カプリナもびっくりしている。


「だ、大丈夫ですか、アリエス様」


「大丈夫ですよ。ちょっと寝付けなかっただけですからね。この程度なら今日の活動には支障はありません」


「そ、そうですか……」


 強がるアリエスではあるものの、カプリナは心配になってしょうがないというものだ。

 だけど、アリエスは大丈夫の一点張りである。あまりにも強情だったので、カプリナもアリエスの主張に従うことにしたのだった。


 今日もまずはエリスの体力作りから始める。根本となる体力がなければ、神聖力の行使もままならない。何をやるにもまずは体力なのだ。

 昨日に比べると、エリスも少しはもつようになっている。とはいえ、お気持ち程度の成長だった。

 疲れ果てたエリスに対して、回復と称しながら魔力を流し込むアリエス。

 ところが、その時だった。


「ひゃう、くすぐったい!」


 思った以上にエリスが反応しているようだ。


「ずいぶんと大きな声で反応しますね。魔力を流すとここまで反応しましたでしょうか」


「多少くすぐられるような感覚にはなりますが、ここまでにはならないと思います。私の魔力との間に、相性のようなものがあるのでしょうかね」


 エリスがくすぐったくて悶えているが、アリエスはどうもその感覚が分からずに、魔力を流し続けている。


「あは、あははははっ。や、やめて下さい、アリエス、様ぁ……っ!」


 かなり大げさなん反応を見せているので、さすがにアリエスは魔力を流すのをやめた。

 まったく、何がどうしてここまで大げさな反応を見せているのだろうか。アリエスは首を捻るばかりである。


「あー、苦しかった。アリエス様、一体何をなされたのですか?」


「何って、私の魔力をエリス様の中に流してみただけです。力を扱えていないということは、魔力の流れがうまくできていないということだと思われますのでね」


 エリスにじっと見つめられて、アリスはぎょっとした顔をして説明をしている。


「こ、こんなにくすぐったいものなのですか?」


「普通はそうならないと思いますよ。試しにカプリナ様でやってみましょう」


 アリエスに振られて、カプリナは戸惑っている。

 とはいえ、アリエスが困っているので、カプリナはやらざるを得ない。

 エリスの両手を握って、カプリナは魔力を流し始める。


「あれ? 全然くすぐったくないですね。どうしてでしょうか」


 カプリナの魔力が流し込まれるものの、エリスは全然なんともないという感じである。確かに、体内に別人の魔力が流れ込んでいるのに、アリエスの時とはまったく反応が違うのだ。

 そこで、もう一度アリエスが魔力を流してみる。


「あはははははっ!」


 くすぐったさに耐えきれず、エリスが大声で笑っている。

 魔力の強さは同じはずなのに、どうしてこうも反応が違うのだろうか。


「共鳴、ですかね……」


「共鳴ですか。聞いたことがありますね。魔力の波長がほぼ同じ場合、魔力が干渉し合って反応が増幅するそうですよ」


「そんなことがあるのですね。ですが、なぜ私とエリス様の間でそのようなことが起きるのでしょうか……」


 まったく理由の見当がつかないアリエスである。

 仕方がないので、魔力を流して魔力を操れるようにするという特訓は、カプリナにしてもらうことになった。

 お昼が済めば、今度は座学。

 そんな感じで、二日目のエリスの特訓は終わることになる。


「なんだか、成長した気がします」


 むんと自信を見せるエリスではあるが、具体的な変化としてはまだ現れていない。

 このような生活がこれからしばらく続くことになるのだが、エリスの覚醒は一体いつになるのであろうか。

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