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魔王聖女  作者: 未羊


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第80話 宮廷魔導士に呼び出される元魔王

 その日の夜、食事を終えた後のことだった。


「聖女、ちょっと話をいいだろうか」


「ヴァコル様、一体どうなされたのですか?」


 どういうわけか、ヴァコルから声をかけられていた。あまりにも突然のことだったので、アリエスはびっくりしている。

 正直言えば、明日からの講義に備えたいところである。

 だが、ヴァコルのただならぬ表情に、アリエスは仕方なく誘いに応じるしかなかったようだ。


(まったく、まだ若いというのになんという迫力だ。これではさすがに断われんではないか……)


 前世魔王であるアリエスも、さすがに鬼気迫る表情のヴァコルには逆らえなかったようである。

 やむなく、ヴァコルについて移動していく。

 やって来たのは、ヴァコルが泊まっている部屋である。


(ここがヴァコルとかいう若造が使っている教会の部屋か。こういう研究気質のやつの部屋は散らかっていると思ったのだが、ここは意外と片付いているな)


 きょろきょろと部屋の中を見回している。

 落ち着かないアリエスを無視して、ヴァコルはとっとと部屋の中にある机の前の椅子に座っていた。


「聖女もいつまでも立ってないで、座ったらどうだ。そこにも椅子があるだろう」


「あっ、これは失礼しました」


 アリエスはおとなしく部屋の中にある椅子を見つけて、ヴァコルの近くまで持ってきて座っている。

 それにしても、なんとも変な感じである。

 アリエスは基本的に、教会の中では育ての親である牧師以外と一緒にいることは多くはない。だというのに、今回は教会以外からやってきた人物と一緒の部屋の中にいるのである。

 しかも、その人物は基本的に教会の外でしか顔を合わせない。ゆえに少しむずがゆさすら覚えるアリエスである。


 膝の上に握った拳を乗せて、少しあごを引きながらヴァコルを見つめているアリエス。

 一体、何の話のために自分を呼んだのだろうか。そればかりが気になって仕方のないというアリエスである。


「えっと、お話とは何なのでしょうか」


 耐え切れずに、アリエスはヴァコルに質問をしてしまう。

 質問を受けたヴァコルは、一度大きくため息をつき、アリエスへと視線を向ける。ため息の意図がよく分からなくて、アリエスはつい首を捻ってしまう。


「うむ、呼んだのは今日のことを尋ねようと思ってなんだ」


「今日のこと、ですか?」


 今日は予定を変更して、アリエスはゾディアーク伯爵家に乗馬の練習に出ていた。その間、ヴァコルも自由にしていたはずである。

 今日のことで聞きたいこととは一体何なのか。アリエスにはこれといって思い当たる節がなかった。


「ゾディアーク伯爵家に行くと言っていただろう。それで、様子を見に行ってみたんだ。だが、聖女よ。そこで何と会っていた?」


「なにって、カプリナ様と傭兵のララ様でいらっしゃいますけど」


 ヴァコルの質問に、アリエスはおとなしく正直に答えている。


「それはいい。あのカプリナという少女だ。その首に巻いていたもの、あれはスライムではないのか?」


「はっ!」


 ヴァコルに言われて、アリエスは昼食の時の様子を思い出した。

 そう、アリエスは一時的に離れるために、護衛や話し相手をスラリーに任せた。その際に、スラリーの変化を一時的に解除させていた。どうやら、そこをヴァコルに目撃されていたようなのだ。

 はっきり見られていたのなら、下手な言い訳は通じないだろう。アリエスは、迷った挙句正直に話すことにした。


「あれはスライムという魔物で間違いはございません。ですが、スラリーはただのスライムではありません」


「ほう、どう違うのだ?」


 ヴァコルがさらに強く詰め寄ってくる。


「スラリーは言葉の話せるスライムなのです。彼は危険を承知で、聖女である私のところまでやって来て忠誠を誓って下さいました。彼は、私たちの仲間でございます。どうぞご安心下さい」


 明らかに疑いの目を向けてくるヴァコルに、アリエスはちょっと怒っているようだ。質問に対して、かなり強い感じで答えている。

 普段見せることのない厳しい表情に、さすがのヴァコルもちょっと驚いた様子を見せている。

 だが、ヴァコルも引きそうになかった。


「そうか。どう安全なのか、この目で見せてもらおうではないか」


「どうするおつもりですか」


 強気の態度のヴァコルに、アリエスもまた強気で返している。


「そうだな。明日の講義にはカプリナ嬢も参加してもらおう。基本的なところが終わって応用に入るところだ。貴族令嬢であるカプリナ嬢にも必要な部分だからな」


 急きょ、教会にカプリナを呼び出すつもりのようだ。

 イラッとしたアリエスだが、確かにカプリナにも魔法の勉強はしてもらった方がいいと考えたのか、このヴァコルの提案をすんなりと受け入れた。


「承知致しました。それでは、明日の朝一にサハーあたりに伝令を頼んでおきましょう」


 アリエスはヴァコルにこのように返していた。

 ひとまず、話の内容がスラリーだけで済んだことに、アリエスはちょっとほっとしていたようだ。

 サハーやライラたちには気付いていないということなのだから。

 元魔王であるアリエスも含めて、このゾディアーク伯爵領には魔族が意外と入り込んでいる。ヴァコルのような人間にも気付かれずに済んでいるのだから、それはちょっと安心というわけなのである。

 とはいえ、明日はスラリーのことで説明をしなければならない。

 ヴァコルは柔軟なところもあるが、この手の話題では頭が固そうな印象を持ったので、アリエスとしてはかなり心配になってしまう。


 はてさて、明日のヴァコルの講義は一体どうなるのだろうか。

 解放されたアリエスだったが、ちょっとばかり気になって、思うように寝付くことができなかったようだった。

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