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魔王聖女  作者: 未羊


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第71話 宮廷魔導士と会う元魔王

 二日後、先触れの通りに王家の紋章が入った馬車がゾディアーク伯爵領の領都に姿を見せた。

 周りを囲む騎士たちは思ったよりも少ない。先触れにやってきた騎士を入れれば、五人といったところだ。

 それもそのはず。今回アリエスの指導のためにやってきた人物は、サンカサス王国で久しぶりに誕生した宮廷魔導士なのだ。その魔力は一騎当千ともいえる破壊力を持つので、騎士たちの役目はついてきた使用人たちの護衛が中心である。

 宮廷魔導士の乗った馬車は、アリエスのいる教会ではなく、カプリナのいるゾディアーク伯爵邸へと向かっていた。


 ゾディアーク伯爵邸の前には、門番からの知らせを受けた伯爵と伯爵夫人、それとカプリナの三人が立っている。

 伯爵たちは屋敷の前に馬車の姿が見えると、すぐさま頭を下げて出迎えていた。

 屋敷の入口に馬車が横付けすると、中から宮廷魔導士が現れる。

 ちらりと目をやるカプリナが見たその姿は、思ったよりも若かった。


(うわぁ、なんだかまだ若いです)


 カプリナがこう思うのも無理はない。宮廷魔導士であるヴァコルは、今年でまだ十九歳だ。十歳であるカプリナや十一歳となったアリエスとは、二桁離れていないのである。


「貴公が、ゾディアーク伯爵か」


 馬車から降りてきた宮廷魔導士が問い掛ける。


「はい、その通りでございます。私が、ゾディアーク伯爵でございます、ヴァコル様」


「ふむ」


 伯爵の返答を聞いて、短く頷くヴァコルである。


「ということは、こちらの小さいのが、聖騎士カプリナ嬢か」


「はい、お初にお目にかかります、ヴァコル様」


 声をかけられたので、カプリナは慌てて返事をする。


「ふむ、まだ十歳と聞いていましたが、やはり貧弱ですね」


 ヴァコルはなかなかに辛辣のようだ。

 とはいえ、十歳の少女が筋肉質であっても困るというもの。部屋に鍛えれば成長にも影響が出る可能性がある。

 これは聖騎士でもあっても、できるだけ普通の令嬢として育ってほしいというゾディアーク伯爵夫妻の考えからである。


「さて、聖女はどこにいるのでしょうかな?」


 ヴァコルはゆっくり左右を見回している。


「聖女様でしたら、今の時間でしたら教会にいらっしゃると思います。といいますか、聖女様のご住居は教会ですので、こちらには基本的にいらっしゃいませんよ」


「ふむ、そうですか」


 伯爵にこう言われると、ヴァコルはくるりと振り返って馬車に乗り込んでいる。


「せっかく出迎えてもらって悪いのですが、僕は聖女に会いに来たのです。なので、これで失礼させて頂きます」


 ヴァコルが言い終わると、馬車が動き始める。

 嵐のような訪問に、伯爵たちは思わず呆然と立ち尽くしていた。


「ま、まあ、仕方ないな。聖女様の魔力制御のためにいらしたのだ。さあ、私たちは家の中に戻ろうじゃないか」


「え、ええ、そうですね。カプリナも戻りますよ」


「はい、お父様、お母様」


 なんだかすっきりしないものの、カプリナは両親に言われるままに家の中へと入っていく。


(アリエス様、大丈夫なのかしら……)


 ただただ、アリエスのことを気にしてやまないカプリナなのであった。


 しばらくして、ヴァコルたちを乗せた馬車が教会へとやって来る。

 ゾディアーク伯爵邸の時と同様に、主要な人物が揃って教会前で宮廷魔導士ヴァコルの到着を待ちわびていた。

 中でも一番緊張しているのが、魔力制御を学ぶ立場にあるアリエスである。


(まだ十九歳という若造に学ぶというのは、いささか恥ずかしいものではあるな。だが、俺より優れているというのであれば、素直な態度で学ぶというものだ。上手や下手というものは、まったく年齢に関係ないからな)


 緊張した表情を浮かべているアリエスではあるものの、内なる魔王は実に落ち着き払っていた。

 前世である魔王時代も、よく自分で部下である魔族にいろいろと教え込んだものである。その結果がサハーやスラリーである。

 そして、魔王自身も独学でいろいろと学んできた身だ。中には戦いを通じて覚えたものもあり、その時の相手は敵であっても敬意を払ってきた。

 そう、アリエスには魔王時代から聖女としての資質がどことなく備わっていたのである。


 教会の前でそわそわとした様子で待つアリエスや司祭の前に、サンカサス王家の紋章が入った馬車が現れる。その馬車こそが、宮廷魔導士の乗る馬車である。


(いよいよお出ましか。先触れの騎士があれだけ慕うという若造。一体どのような人物なのであろうな)


 アリエスの表情が、期待のあまりに笑顔になっている。先程までの緊張は一体どこに行ったというのだろうか。そのくらい、態度が変化していた。

 教会に横付けした馬車から、扉が開いて一人の男性が降りてくる。

 その姿を見た瞬間、アリエスの目は思わずその姿に釘付けになってしまう。


(ほほう、これはなかなかに美形なタイプだな。魔法使いというと、基本的に不健康なイメージなのだが、これだけきっちりとした容姿をしているのは珍しい)


 この元魔王、何を評価しているのだろうか。


 そんなこんなで、サンカサス王国の聖女と宮廷魔導士が初顔合わせとなった。

 はたしてこの二人の出会いによって、どのような変化が起こるというのだろうか。

 簡単に挨拶を済ませたアリエスたちは、一緒に教会の中へと移動していったのだった。

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