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魔王聖女  作者: 未羊


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第69話 魔法使いに文句を言われる元魔王

 それから数日後のこと、王都から一人の魔法使いがゾディアーク伯爵領に派遣されることになった。


「まったく、なぜ僕があのような辺境の地に出向かねばならぬというのですか」


 馬車に乗っている人物が、でかい態度をしながら文句を言っている。どのくらいでかい態度かというと、足を組んで肘をついているくらいである。


「ヴァコル様、国王陛下の命令なのです。王国に仕えるものとして、従わぬわけには参りませんよ」


「しかしですね……」


 ヴァコルと呼ばれた人物は、明らかに不機嫌そうである。

 それにしても、このヴァコルという人物は意外と若いように見える。

 パッと見た外見は、アリエスたちよりは年上ではあるようだが、二十歳以上には見えない。なんとも若い青年だった。いや、少年でもいいかもしれない。

 とにかく、そのくらい若い男性が、馬車の中で偉そうにしているというわけである。


「しかし、聖女の魔法の指南役とは……。でしたら、あちらから来てもらえばいいではないですか」


 魔法使いの青年は、目の前に座る従者に対して文句を言っている。

 従者は体をびくつかせながらも、魔法使いの青年に言葉を返している。


「いえ、それがですね。デビュタントの時に、聖女様に失礼を働いたとかとかいう話でして、国王陛下もいまいち顔向けができないのですよ」


「はあ? なんで聖女の方を立てねばならぬというのです。そんなことは関係ありません。聖女といえば、国に属するものでしょう。王命で呼びつければいいだけではありませんか」


 従者の言い訳に、魔法使いの青年は本気で怒っているようである。

 確かに、その言い分はその通りかもしれない。しかし、聖女と国王は実質は対等の立場といってもいい。なので、失礼をしてしまった以上、国王は自分のところに聖女を呼びつけられないというわけなのだ。


「まったく、納得がいきませんね。陛下の命令だから従うだけです。その聖女次第では、僕はそのまま引き返すかもしれません。向こうにもそう伝えておいて下さい」


「しょ、承知致しました」


 従者の男性は、若い魔法使いの無茶苦茶に付き合わされ、先触れの兵士にそのような伝言を付け加えさせることにしたのだった。


「しかし、聖女が魔力のコントロールができないとは、まったく困ったものですね」


「それそうですが、時々いらっしゃるのですよ、魔力が強すぎて制御できないという方が」


「そうなのですか?」


 従者の言葉に、ヴァコルは詳細を聞こうと反応をしている。


「ええ。現在は現役最強の聖女として名高いキャサリーン様も、かつてはコントロールに苦しんでいらしたそうです」


「ほう、それは初耳ですね。それで、キャサリーン様はどうやって克服されたのですか?」


 ヴァコルはとても気になっているようである。


「はい、キャサリーン様は独学ではありますけれど、魔法をコントロール方法を見つけたそうでして、それによって自力で改善なさったそうです。そのために手伝いはしてもらったそうですが」


「ふむ。それは実に興味深い話ですね。僕の研究の一環としてぜひともお話を伺いたいものです」


 かなりの興味を示している。だが、続いて従者から告げられたのは、厳しい現実だった。


「ですが、キャサリーン様の所属されるテレグロス王国は、外部からの接触が困難な国です。唯一、ハデキヤ帝国のオーロラ様だけが自由に行き来できるようでして、私どもにはとてもではないですが、お会いできるわけではないようですよ」


「ふむ、それは残念ですね」


 唇をかみしめているようなので、ヴァコルは本当に悔しそうである。

 魔力のコントロールというのは、魔法使いにとっては常について回ることだからだ。そのことで話が聞けないというのは、研究が遅れることを示す。それゆえに悔しいのである。


「仕方ないですね。我が国の聖女を通して、魔力コントロールの研究を進めるしかなさそうですね」


 ヴァコルは半ばやけくそになっていた。

 その一方、魔力のコントロールについて学ばなければならないという聖女について、少しばかりの興味も抱いていた。

 ただ不満なのは、自分の方が出向かなければならないという現実なのである。それゆえ、従者に対してこれだけきつく当たっているのである。

 理不尽をぶつけられる従者は泣いていいと思う。


「ヴァコル様!」


「どうした、騒々しい」


 馬車が突然止まり、護衛が血相を変えて飛び込んでくる。


「魔物です。前方ではすでに交戦しておりますが、数が多く、苦戦しているようです」


「ふん。魔物ごときで僕の力を借りるか。いいでしょう、宮廷魔導士の力、見せてあげましょう」


 ヴァコルは馬車を降り、魔物と交戦する前方へと向かう。

 群れているのはウルフたちだ。全身が赤黒い毛に覆われているヘルハウンドという種族のようである。


「この程度の雑魚に、何を苦戦している」


「これはヴァコル様。ですが、我々はこの魔物との交戦経験がなくて……」


「いいわけはいい。下がってろ、すぐに済ませます」


「はっ!」


 ヴァコルは兵士たちを少し下げると、魔法を炸裂させる。

 詠唱のほとんどない魔法が、あっという間にヘルハウンドたちを包み込む。


「ギャウン!」


 あまりにも高威力の魔法に、抵抗する間もなくヘルハウンドは全滅してしまう。


「さっさと処理を。先を急ぎます」


「はっ!」


 戦闘があっという間に終わり、護衛たちはすぐに解体処理に入る。

 すぐにきれいさっぱりと片付くと、ヴァコルたちはすぐさまゾディアーク伯爵領に向けて、移動を再開させたのだった。

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