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魔王聖女  作者: 未羊


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第58話 雪をやませたい元魔王

 普段なら雪の降ることのないサンカサス王国の外側。ところが、どういうわけか国境の先まで降り積もった雪景色が広がっている。

 ハデキヤ帝国の騎士たちは、この異常な景色に戸惑っているようである。


「参りましたな。これでは慎重に進まざるを得ないので、到達には時間を要しそうですよ」


 雪に慣れていないハデキヤの騎士たちはとても困っているようだった。

 そもそもどうしてこんなに雪が降っているのか。まずそこからして分からない。

 前回大雪が降ったのはアリエスが生まれた年の冬。今回は聖女に任命された年の冬。


(う~む。これは俺の魔力が暴走しているということで間違いないな。漏れ出ている感じはまったくしないのにな……)


 アリエスはとても困ったような表情をしている。

 だが、さすがにこれ以上の遅れは騎士たちに迷惑がかかってしまいそうだ。どうにかできないかと頭を捻る。


(水や氷を操れるのなら、この雪もどうにかできるはずだろう。感覚を思い出せ)


 アリエスは困っている騎士たちを目の前に、魔王時代の感覚を一生懸命取り戻そうとする。

 聖女になりながら魔力をコントロールできないのでは、はっきりいって大問題だからだ。

 というわけで、アリエスは馬車から降りて両手を前に出して力を集中させる。


「アリエス様。お寒いので馬車にお戻りください」


「いえ、みなさんが困っているのです。私は聖女なのですから、困っている人を見て放っておけるわけがないではありませんか!」


 アリエスは両手から魔力を解放する。自分の魔力が影響を与えているのなら、この魔力をぶつければ、きっと相殺できると考えたのだ。

 周囲にアリエスの魔力が広まっていく。

 ぴたりと一度雪がやんだかのように見えた。

 ところが、それも一瞬だけ。再び雪が、それもさっきよりもひどくなって降り始めた。


「な、なんでですか……」


 アリエスは思わぬ失敗に、愕然とした表情を浮かべている。

 こんなにがっくりときたのは、聖女キャサリーンに負けた時以来だ。

 落ち込むアリエスにカプリナが近付いてくる。

 真横でそっと屈んだその時、アリエスの耳に声が聞こえてくる。


「ありえすさま、ひかり、まほうで、つつみこむ。このゆき、せいぎょできない、まりょく。おなじぞくせい、ぶつけても、つよまる、だけ」


 それは、カプリナのマントに擬態しているスラリーの声だった。

 見かねたアリエスに、元部下としてアドバイスを送っているのである。


「なるほど、光属性の守護の魔法ですか。それは考えつきませんでしたね」


 アリエスはどうにか立ち直る。


「でもね、スラリー。この降り続く雪をどうにかしないと、結局は問題の先送りなのです」


「ひとまず、ばしゃ、もどる。はなし、そのあと」


 説教をしようとしたアリエスだったが、逆にスラリーに諭されてしまう。思わず顔が歪んでしまうアリエスを見て、カプリナはつい笑ってしまっていた。


「はあ、しょうがありませんね」


 アリエスがくるりと騎士たちの方を見る。

 顔を向けられた騎士たちは驚いている。


「申し訳ございません。雪をやませることはできなさそうなので、このまま参りましょう」


「ですが、この雪道では我々は……」


 騎士たちが困った顔をして抗議をしてくる。


「私の魔法でどうにかします。光魔法で足元を固めて、地面のように変えるしかないみたいですから」


 真剣な表情で放たれたアリエスの言葉に、騎士たちは思わず黙り込んでしまう。

 仕方ないので、アリエスの言葉に従って先を急ぐことにする。確かにここで立ち止まっているよりも、少しでも早くハデキヤ帝国に向かった方がいいと判断したからだ。

 ハデキヤ帝国に到達するには、この間にあるもう一国を抜けなければならない。騎士たちは馬にまたがって馬車の様子を見守る。

 馬車に乗り込んだところで、アリエスが両手を組み、祈りを捧げ始める。元魔王とはいっても、十年間教会で過ごしてきたのだ。その仕草はまるで聖女のようである。


「雪を退け、我らをお導き下さい」


 光魔法を発動させると、アリエスたちの乗る馬車や帝国騎士の馬の周囲を光の壁が包み込む。そして、雪はしっかりと固まり、まるで土の地面の上にいるような感覚になった。


「おお、これはすごい」


「これが聖女様の力か。オーロラ様もそうだが、本当に聖女の力というものは素晴らしいものだな」


 一度馬から降りて地面を踏みしめた騎士たちは、そのあまりの力に思わず歓喜してしまっているようだった。

 地面の状態を確認した騎士たちは、一路ハデキヤ帝国への道を進み始める。

 アリエスの祈りによって展開された光の空間は、自分たちの移動に合わせて進んでいく。地面も光の中にいる間は、まるで土の地面を踏みしめているような感覚だった。

 これならば安心して馬を走らせることができる。

 今までの遅れを取り戻すように、騎士たちは速度を上げていく。


 アリエスの魔法によって移動速度を上げられたため、予定より半日遅れでハデキヤ帝国の国境に到達する。

 ところが、まだまだ問題は解決していない。

 なにせ雪はまだ降り続いているのだ。

 この雪の原因が自分にあると認識しているが、アリエスにはまだまだ解決ができそうにない。

 いつになったらこの雪はやむのだろうか。一行の不安は一向に解決していないのだった。

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