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魔王聖女  作者: 未羊


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第5話 保護される元魔王

 アリエスとカプリナと呼ばれた少女は、揃って司祭の部屋に移動する。

 よく思えば、教会に住み始めて五年が経つというのに、アリエスは司祭の部屋に入ったのは実に初めてだった。ほとんどが自分を拾ってくれた牧師の部屋で完結していたからである。

 初めて入った司祭の部屋にアリエスは驚かされる。


(これは、ずいぶんと簡素な部屋だな。教会の他の場所もあまり豪華には見えなかったが、思ったよりもここは貧乏なのか?)


 ずいぶんと衝撃を受けたものである。

 アリエスが魔王だった頃は、自分の居城はそれは頑張って飾り付けたものである。

 権威あるもの、その力というものを示さなければならないからだ。

 だが、そのほとんどは自分の魔法であり、金銭や物品というものは部下に分け与えていた。人間にとっては恐怖の魔王も、部下には結構甘かったのだ。

 なので、アリエスはこの貧乏な状態の司祭の部屋には、なんとなくシンパシーのようなものを感じ取っていた。


(まぁ、それは今はどうでもいいか。それよりもさっきの神託の結果だな)


 アリエスは気持ちを切り替えていた。

 横にいるカプリナともども、神託では眩いばかりの光を出現させていた。これは一体どういうことなのか、アリエスは知りたくて仕方がないのである。

 アリエスとカプリナを前に、司祭がしっかりとした表情で立っている。


「それでは説明しようと思います」


「なぜ、皆の前で発表をなさらなかったのですかな」


 司祭が話を始めようとすると、伯爵が遮っている。


「とても重要なことなので、いたずらに話して混乱させてはいけないと思いましたのでね。あれだけならなんかすごく光っただけで済みます」


 そんなものなのだろうかとアリエスは思っている。

 ところが、司祭の説明で伯爵は納得してしまったようだ。すんなりと引き下がっている。


「では、説明を始めます」


 改めて司祭が、神託の結果を告げ始める。

 結果からいえば、アリエスは神聖魔力と魔法、カプリナは神聖魔力と剣と出たらしい。

 これには伯爵は驚くしかなかった。


「なんと、聖女と聖騎士が同時に誕生したというのか?」


「そういうことになりますな」


 なんてことだろうかと、アリエスは思った。

 それもそのはず。聖女というものは、前世で魔王だった自分の命を奪った憎き存在。いや、自分だけではない、配下の魔族たちもその多くが聖女の力によって倒されている。到底、アリエスにとって受け入れられない存在なのである。

 ところが、神託の結果、アリエスは聖女になり得る存在だということが示されてしまったのだ。

 ここでアリエスはふと思う。

 魔王が倒された今、聖女は果たして必要なのだろうかと。

 そう思ったアリエスではあるものの、今はまだ司祭が話をしている真っ最中だ。聞き分けのいい幼女を演じているアリエスは、疑問をぐっと飲みこみながら話を聞き続けている。


「魔王は七年前に、別の国の聖女様によって倒されましたが、まだ魔族たちの脅威は残っております。いずれ二人の力が必要になる時が来るでしょう。今はまだ未熟ゆえ、公には発表することを避けたのです。どうかご理解下さい」


「あい分かった」


 司祭の言葉に、伯爵は素直に応じている。自分の娘が関係しているのだから、親として当然の反応だろう。


(どうやら俺が死んだことはあちこちに伝わっているようだな。だが、脅威が残っているという言葉が気になるな。俺が命を張ってまで逃がした連中が復讐を考えているとは思いたくないな)


 アリエスは、どうも司祭の話に引っ掛かりを覚えたようである。


「あの……」


「なんですか、アリエス」


「魔族の脅威とは、具体的にどのようなものなの?」


 アリエスは司祭に直接尋ねてみる。


「そうですね。作物の略奪行為だとか、人さらいだとか、そういった被害の報告があります」


「そうですか。ありがとうございます」


 具体的な被害の状況が挙がったので、アリエスはおとなしく引き下がった。


(前者はコボルト、後者はゴブリンやオークだな。あいつらはどん欲で、俺の命令をよく無視してもいたからな)


 魔王時代を思い出して、頭が痛くなってくるアリエスである。

 どうやらあの頃に手を焼いていた連中は、今も手を焼かずにはいられないようである。

 アリエスが悩む間も、司祭からの話は続いている。

 現状は世間的には秘密にして、一人前に育て上げるという方針のようだ。

 国に知られれば、年齢に関係なく連れていかれ、最悪奴隷のように酷使されかねない。さすがに五歳の幼子にそれは酷というものである。

 なので、まずは自分たちで保護しながら、その能力を開花させ、伸ばしていくことにしたのである。


「アリエスは私どもが、カプリナは伯爵様が基本的に面倒を見ます。時折、成長度合いを確認するために一緒に特訓することとしましょう」


「うむ、私も賛成だ。簡単に私の娘を国の道具させるつもりはないからな」


 司祭と伯爵は完全に意気投合していた。


 アリエスとカプリナの神託と今後の方針を確認した司祭たち。

 聖女と聖騎士として育てられることになった二人は、どのような成長を見せるのだろうか。

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