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魔王聖女  作者: 未羊


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第41話 衣装に惹かれる理由を探る元魔王

 どういうわけなのか、儀式で着る衣装よりも、普段着の方が気になって仕方ないようだ。

 かつて自分と同じ名前の人物が着ていた服を参考にしたというだけなのに、ここまで惹かれてしまうというのは今のアリエスにはとても理解できないものだ。


「聖女様、どうかなさりましたか?」


「えっ、あ……。これは失礼しました。何か不思議な感覚がしまして、つい見とれてしまいました」


 服飾店の女性に声をかけられて、アリエスは慌てて答えていた。

 この言葉に、服飾店の女性は驚いた顔をしていた。


「それは不思議な話ですね。この衣装は私どもが心を込めて仕立てさせて頂いただけで、特別に何かを施したというわけではございません。そのように感じるというのは、聖女様だからこそかも知れませんね」


「私だからこそ……ですか」


 女性の言葉に、アリエスはなんともすっきりしない顔をしていた。


「とりあえずでございます。一度ご試着なさって下さい。不都合な点がございましたら、きちんとし立て直しますので」


 服飾店の女性から強く勧められたものだから、アリエスは仕方なく服に袖を通すことにした。


 結果としては何が起きるというわけでもなく、無事に試着を終えることができた。

 アリエスの試着した服に関しては、特に仕立て直しが必要なものはなかったようである。

 一方のカプリナの方は、一部の服装に注文が出たようだった。聖騎士ということで動きやすさが重視されるために、そこの改善をお願いしたようだった。


「承知致しました。では、カプリナ様の衣装は一度持ち帰りまして直してまいります。それ以外のものは、本日このまま納入させて頂きますね」


「はい、このような素晴らしい衣装を作って下さり、聖女様もこの通りお喜びでございます。本当に良いお仕事なさってくださり、私ども一同、感謝致します」


 女性の神官たちは、服飾店の女性に小さく頭を下げていた。

 そんなわけで、今日の衣装合わせは無事に終わった。

 仕立て直しをするカプリナの衣装以外は、今日の部屋にそのまま保管されることになった。

 アリエスたちの部屋に運ばれないのは、正式に聖女と聖騎士となってからの衣装であるからだ。なので、生誕祭と聖女指名の儀式の行われる当日までは、いくらお願いしようとも袖を通すことは叶わないのである。


 ところがどっこい。そんなことで引き下がるアリエスではなかった。

 その日の夜のこと。寝たはずのアリエスはこっそりと目を覚まして部屋を出ていく。

 どこに行くのかと思えば、そのまま今日の試着を行った部屋へと向かっているようだ。どうやら試着したあの普段着のことが気になって、眠れないようなのだ。


(もやもやした気持ちのままで寝つけるかというのだ。あの服に惹かれた理由、今すぐにでも解き明かしてくれようぞ)


 なんともまあ、アリエスは分からないことがあるとはっきりさせないと気が済まない性格だったようだ。まったく、困った聖女様である。

 すべての明かりが消えて暗くなった廊下を、足音を魔法で消しながらゆっくりと移動していくアリエス。

 魔王時代から頭はよかったので、今日試着を行った部屋の位置はばっちり頭に入っていた。


(ここだな。さて、なんとしてもあの服の秘密を解き明かさねば……)


 部屋に入ろうとするアリエスは、扉の取っ手に手をかける。


 ガタンッ。


 ところが、扉を押そうが引こうがずらそうが、まったくびくともしない。どうやらカギがかけられているようである。

 それもそうだ。教会というものは大事なものを扱っている場所であるので、そういったものは厳重に保管するの当たり前のことなのである。ましてやこの部屋の中にあるのは儀式で着る衣装。カギがかかっていて当然というわけである。


(カギをかけてまでしまってあるという割には、見張りが立っていないあたりは抜けておるな。教会の中ならそういうやつはいないという先入観なのだろうな)


 アリエスはそんな風に思いながら、魔法を使ってカギを開けてしまう。

 元魔王にかかれば、この程度の錠前など何の意味もなさないのである。


 無事にカギを開けたアリエスは、ゆっくりと扉を開けて中へと入っていく。

 中に入ってしまうと、今度はしっかりと扉を閉め、ご丁寧にカギをかけておく。中に入ったことに気付かれるのを遅らせるためだ。


(さて、あの衣装はどこにあるのかな?)


 照明の魔法を使いたいところだが、下手に魔法を使っては侵入したことがばれてしまう。そうなると育ての親の牧師や、司祭をはじめとした教会の人たちにこっぴどく叱られるだろう。それだけは絶対嫌だと、アリエスは魔法を使わずに部屋の中を見て歩く。


(確か不思議な魔力を放っていたから、それをたどればすぐに見つかるだろう)


 昼間に感じた衣装から感じた不思議な魔力。アリエスはその感覚を頼りに部屋の中を歩いていく。


(おっ、この魔力だな)


 そして、その魔力は意外と簡単に見つかった。

 なんと、昼間に置かれていた場所にそのまま残されていたのだ。部屋の隅に追いやれていないとは思いもしなかった。


(見た感じ、なんの特徴もない衣装だというのに、どうしてここまで惹かれるのだろうか……)


 アリエスが不思議そうな顔をしながら衣装に近付いていく。

 そして、うっかりと衣装に触れてしまう。

 その時だった。


(な、なんだ、この魔力は。引っ張られる……!)


 なんということだろうか。アリエスは部屋の中から忽然と姿を消してしまったのだった。

 一体何が起きたのだろうか。

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