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魔王聖女  作者: 未羊


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第31話 潜入調査を開始する元魔王の部下

 翌日、目を覚ましたライラが教会に向かう。早速教会の監視を行うためである。

 ところが、そこでいきなりとんでもない光景を見てしまう。


(なっ、なんであいつがいるのですか!)


 ライラの目が丸くなっていた。

 教会の外には、死んだと思われていたサハーの姿があったからだ。服装は他の兵士たちと同じようにしているようだが、ライラの目はごまかせなかった。

 いきなりとんでもないものと遭遇してしまい、ライラは目を白黒とさせている。


(ちょっと待って。このサンカサス王国の聖女は、あのサハーを支配下に置いたってこと?!)


 いきなりの大混乱である。

 ライラが混乱していると、サハーの顔が自分の方へと向く。

 これはいけないということで、ライラはすぐさまその場を離れる。


 一方、何かに気が付いたサハーには、近くにいた警備兵が近寄ってくる。


「どうした、サハー」


 声をかけられて、サハーは少し慌てたように振り向いている。


「いや、今何か視線を感じたものですからね。どうも気のせいのようでしたが」


「そうか。サンカサス王国にも聖女がいるというのは、先日のデビュタントで対外的にも公表されたからな。様子をこっそり見ようとして諜報員を送り込んでくることもあるんだ。まっ、怪しい奴を見つけたらとっちめてくれよ」


「分かりました。このサハー、アリエス様のためにしっかりと警護を務めさせて頂きます」


「本当に魔族とは思えないな。教会に平気で入れるし、俺たちと敵対する様子はないし。不思議なもんだな」


 サハーと話している護衛が、まじまじとサハーを見つめながら笑っている。


「アリエス様を主と定めたのです。主のために死力を尽くす。これが私の信念でございます」


「そうか。期待しているよ」


 サハーに近付いてきた警備兵は、自分の持ち場へと戻っていった。

 警備兵が離れていったサハーは、少し考え込んでいた。


(今のはまるで魔族の気配だった。しかもなんだか知っているような感じがしたのだが……。いや、まさかな)


 気にはなったものの、サハーは気のせいだと首を横に振って、自分に与えられた役目を果たそうと、警備の仕事に戻ったのだった。


 サハーに驚いて街の中心部へと戻ってきたライラは、ひとまず距離を取ろうとして依頼を受けに傭兵ギルドへとやって来た。ついでに何か情報が得られないだろうかと考えてのことだった。


「はい、依頼をお受けになるのでしたら、そちらの掲示板に張り出された紙を持って受付までお越し下さい。そうすることで、依頼を受託したことになります」


 受付の言葉に従って、ライラは依頼を選ぶ。登録したばかりなので受けられる依頼は少なく、左上に書かれている文字が1と2のものしか受けられないらしい。

 じっくりと見定めて、2のランクのものを受けることにしたようだ。

 受付に紙を提出して依頼を受けるライラだが、そこでちょっと話をしてみることにする。


「この街には聖女がいるそうですが?」


「はい、いらっしゃいますね。アリエス様と仰いまして、教会に住んでいらっしゃいます」


 受付はすんなりとライラの質問に答えていた。


「聖女様がいらしても、魔物の数は減らないのですか?」


「それを言われますと、ちょっと辛いところがありますね」


 受付は困ったような顔をしている。


「魔物を絶滅させてしまうと生活に困る方もいらっしゃいますから、ある程度は残しておこうというのが教会の方針でして、聖女様もそれに賛同なさっていらっしゃるのですよ」


「ふむ、なるほど。それは確かに一理ありますね。私たちのような傭兵は、魔物がいてこそ成り立つところがありますからね」


「はい、その通りでございます。それに魔物から手に入る素材は、私たちの生活に溶け込んでいます。なので、増やし過ぎず、減らし過ぎずという立ち位置にいるというわけなのです」


「ありがとうございます。よく分かりました」


 ライラは依頼をこなしに行くために外へと出ていく。

 討伐する魔物のいる場所をしっかり確認すると、その場で数回軽く飛び跳ねる。


「よし」


 動きを止めたかと思うと、街の外へと向けて駆けだしていく。


(ギルドで聞いた話のおかげで、魔族であるサハーが教会で働いている状況は理解できました。必ずしも敵とみなしているわけではないということですね)


 考えごとをしている間に、ライラは目的地に到着していた。

 辺りはうっそうとした森林地帯。ここに今回の依頼の目的がいる。


「ですが、しばらく潜入して様子を見る必要があります。スラリーとサハーという厄介なものがいますが、聖女がどのような人物か見極めなければならないのですよ」


 少し大きな声で独り言を叫ぶと、ライラは魔物へと襲い掛かっていく。


「恨みがあるわけではないですが、私の信用の礎となりなさい!」


「ギギギッ!」


 急な襲撃に、哀れゴブリンたちはあっさりと討伐されてしまった。

 討伐証明と魔石を確保したライラは、ゴブリンたちを燃やして始末する。


「こんな低級とはいえども同じ魔物。ちょっとだけ心苦しくは……ありませんでしたね。さあ、街に戻りましょう」


 依頼をこなしたライラは、さっさと街へと引き上げていくのだった。

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