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魔王聖女  作者: 未羊


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171/174

第171話 迎撃準備をする元魔王の仲間

 クラブ将軍たちがゾディアーク伯爵領に到着する一日前だった。


「お父様、緊急事態です!」


「どうしたのだ、カプリナよ」


 なんと、カプリナたちが領地に戻ってきていたのだ。

 サハーから連絡を受けたカプリナたちが、大慌てで戻ってきていたのである。

 ちなみにサハーは、ヴァコルから兵士を任されたために、しばらく王都に残ることになってしまっていた。あとで追いかけてくるらしいが、ひとまずはカプリナだけが戻ってきたのである。


「テレグロス王国軍が攻めてくる可能性があります。すぐさま防衛線を築いて下さい」


「なんだと?! 一体どうしてそんなことになっているのだ」


「どうやら、アリエス様のことをどこかでかぎつけたみたいなんです。魔族と手を取った裏切り者として、サンカサス王国に攻め入ってきたのです」


「ぐぬぬぬ……。なんという短絡的な判断だ。分かった、すぐに傭兵ギルドにも連絡を出せ。偵察を出してすぐに迎撃準備だ」


「はっ!」


 カプリナの話を聞いたゾディアーク伯爵は、すぐさま伝令を出していた。


 しばらくすると、傭兵ギルドに身を寄せていたライラが伯爵邸を訪れる。


「話は聞いた。テレグロス王国軍が攻めてくるというのは本当なのか?」


「はい。王都近くのミルキー湿原で、アリエス様が衝突なされました。その際、アリエス様に敗北をしたのですが、こちらに来る可能性があるというお話でしたので、念のためと考えております」


 ライラが確認をしてくると、カプリナはしっかりと答えている。


「ううむ……。して、聖女キャサリーンはいるのかな?」


「いえ、アリエス様と一対一で戦い、和解したとのことです。ですので、やってくるとしても聖女の加護もなしということになります」


「そうか。ならばまだ何とかなるな。十三年前は、キャサリーン一人にやられてしまったようなものだからな」


 ライラはカプリナの話を聞いて、いろいろと考えているようである。

 そうかと思うと、窓を開けて指笛を鳴らす。

 指笛の音に応えて、ライラの手に一羽の鳥が飛んできた。


「すまない。ちょっと偵察して来てほしい」


「ぴぴぴーぴぴぴぴ……」


 鳥は鳴いて返事をすると、すぐに飛び去って行ってしまった。


「い、今のは?」


「魔界の鳥だ。見た目は普通の鳥と変わらないが、私たち隠密部隊が連絡で使うんだ。今のは私の使い魔でシャマリという」


「そうなのですね。さすがは魔族……」


「いや、人間だってこういう職業のやつなら飼っていたりするはずだがな」


 カプリナが感心していると、ライラはおかしくて笑ってしまっていた。


「とりあえず、シャマリが何らかの情報を持って戻ってくるだろう。それまでは、兵士も傭兵も待機ということでいいでしょうかね」


「ええ、そうですね。王都からここまでの距離を考えると、本当に来ているのなら、もうすぐそこでしょう。少しでもすぐに動けるようにしておきませんとね」


「ですな」


 ゾディアーク伯爵とライラは意見が一致して、お互いに頷き合っていた。


 その日の夜、ライラの使い魔であるシャマリが戻ってきた。

 シャマリの報告によれば、大規模な集団がすぐそこまで迫ってきているということだった。つまり、カプリナのもたらした情報は正しかったということである。

 テレグロス王国軍を確認できたゾディアーク伯爵は、すぐさま迎撃のための防御陣形を敷くことにした。

 辺りも真っ暗な中なので、相手方には気付かれることはないだろう。わずかな明かりの中で、黙々と陣形は形成されていったのである。


 そして、夜が明けた。


 辺りが明るくなってきて、いよいよゾディアーク伯爵たちには緊張が漂ってくる。

 攻めてくる相手は、なんといってもテレグロス王国の正規軍だ。自分たちは一領主の私兵と寄せ集めの傭兵たちに街に来ていたわずかな魔族たちだけ。はっきりいって、数だけなら負け戦でもおかしくはない。


「うぬぬ……。正直言うと、この数で相手ができるとは思えないのだがな」


「大丈夫ですとも、伯爵様。聖女キャサリーンの加護がないのであれば、王国軍と言えど私たち魔族からすれば雑兵にすぎません」


「だが、十三年前は壊滅させられたのだろう?」


「ですから、それは聖女キャサリーンの加護があってこそです」


 どこまでも心配そうなゾディアーク伯爵に対し、ライラは念を押して話をしている。


「今のテレグロス王国には聖女の加護はなく、こちらにはカプリナさんという聖騎士がいらっしゃるのです。何も恐れることはありません。私たちは攻めてくる連中を撃破すればよいのです」


「う、ううむ……」


 ライラがここまでいっても、ゾディアーク伯爵の不安はまったく消えないようだった。

 やれやれと思っているライラの耳に、シャマリの鳴き声が聞こえてくる。


「どうやらやって来てみたいですね。ライラ、頼みますよ」


「はい、お任せ下さい! 防壁の準備はできております」


 後方に控えるカプリナに対し、ライラが確認をする。その声に、元気いっぱいにカプリナは返事をしていた。


 ライラたちの目の前に、いよいよテレグロス王国軍が姿を現す。

 テレグロス王国とサンカサス王国の戦争の第二幕が、今まさに切って落とされようとしていた。

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