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魔王聖女  作者: 未羊


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第165話 すべてを明かす元魔王

 にこにこする聖女二人に対して、周囲に集まったテレグロスの関係者たちはかなり表情が硬かった。

 それもそうだろう。いくら奇襲をかけられたとはいっても、たった三人に簡単に城を攻め落とされてしまったのだから。

 テレグロス王国の人間は、キャサリーンの力は分かっていたはずである。それを考えれば、この結果は必然だったのだろう。


「とりあえず、和解ということでよろしいでしょうか」


「う、うむ……、仕方あるまい」


 キャサリーンが口を開けば、テレグロス国王はずいぶんと渋りながらも首を縦に振っていた。

 その様子を見て、キャサリーンはとても満足そうに笑っていた。


「改めて自己紹介させていただきます。私はサンカサス王国の聖女アリエスと申します」


 アリエスは立ち上がって、ぺこりと深く頭を下げている。この辺りの所作を見るだけなら、本当に普通の聖女といった感じである。

 アリエスの挨拶を受けて、テレグロスの王子と王女が質問をする。


「先程、部屋の中が凍っていましたが、それはあなたのせいですか?」


「はい。私には聖女としての力以外にも、冷気を操る力ございます。正確に言うと、魔力が冷気属性を帯びているというところでしょうか」


「魔力が、冷気属性を帯びる?」


 再び椅子に座ったアリエスの答えを聞いて、王子と王女は分からないといった様子を見せている。


「私は、十三年前にキャサリーン様によって倒された魔王の生まれ変わりです。そのため、魔王の時に持っていた魔力をその身に宿しているのですよ」


「な、なんだって……?!」


 笑顔のままで衝撃的なことを話すものだから、王子と王女は驚きで固まっている。

 かつての魔王が聖女に転生しているということ自体が、そもそも容易に受け入れがたい話なのだから。


「殿下、王女殿下。実はこれは紛れもない事実なのですよ。最初の頃から疑ってはいましたが、先日、はっきりと確信をしました。ですが、あの魔王なら十分あり得る話だと、私は納得しましたね」


「キャサリーン様?」


 キャサリーンが割って入って話した内容を聞いて、王女はびっくりしている。


「どういうことか聞かせてもらってもいいかな?」


「はい。アリエス様もよろしいですね?」


「もちろんです。私が話すよりも、キャサリーン様がお話になられた方が、みなさんも信じて下さると思いますから」


「分かりました」


 キャサリーンから確認を求められたアリエスは、あっさりと首を縦に振っていた。元魔王ということもあって、こういう時の判断はとにかく早い。

 アリエスから許可も出たことで、キャサリーンは、十三年前の魔王城攻略の時のことを話し始めた。


 あの時のキャサリーンはまだ十代後半ということで、未熟な聖女として参加していた。

 それでも、同時に四つ五つとバフとデバフを広範囲に使う化け物ではあった。そのために、一緒に魔王城へと攻め入ったテレグロスの兵士たちへの損害は、かなり軽減されていた。

 ある程度攻め入り、やって来た魔王城の大広間。そこでキャサリーンは、当時の魔王と顔を合わせることになる。

 本来なら最も深いところで待ち構えているはずの魔王が、わざわざ前線まで出てきたのだ。これにはキャサリーンはもちろん、テレグロスの兵士たちも驚かされた。

 魔王が出てくると、どういうわけか魔族たちが退却を始める。魔王を守るはずの兵士たちが、逆に残して散っていくのだ。

 こうして、魔王と直接戦うことになったキャサリーンたち。その激闘の末に、魔王を打ち倒したのだ。


「……というわけですね。その時に私たちを苦しめたのが、魔王の使う氷の魔法でした」


「ということは、キャサリーン様は、ハデキヤ帝国でお会いした時に、疑いを持たれ始めたのですね」


「そういうことになりますね。あの時、私は直接アリエス様の魔力に触れましたからね。そこで、覚えのある魔力に触れて、「うん?」と思ったわけですよ」


「なるほど」


 アリエスはどういうわけか笑っている。

 一度笑うのをやめて気持ちを落ち着けたアリエスは、改めてテレグロスの王族たちを見る。


「お判りただけましたでしょうか。私は、仲間が傷つくことをよしとしません。あの時だって、狙いが私であることは分かっていました。そのため、そのことで部下たちが傷つくことが我慢できず、私自ら出向いたのです。他でもない、部下である魔族たちを守るために」


 アリエスの話した内容を、その場の全員がただ驚きを持って聞くばかりである。


「その時のこともあって、魔族のみなさんは私たちとの和平を受け入れて下さったのです。そのため、守るべきものが増えてしまったのは事実ですね。ですが、私は大切な人たちを守るためでしたら、いくらでも無茶をします。それが、私の役目なのですから!」


 アリエスははっきりと言いきった。

 キャサリーンは、このアリエスの言い分を聞いて、何度も首を縦に振っていた。

 なにせ、単独で自分の前に立ちふさがったのだから。それこそ、覚悟がなければ絶対にできないことである。


(これで、問題はテレグロス王国の連中次第といったところかしら。これで、私の負担も減るといいのだけれど、どう判断をするつもりかしらね)


 アリエスの話が終わったテレグロス王城の王の間は、しばしの間、沈黙に包まれた状態が続いたのだった。

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