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魔王聖女  作者: 未羊


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第164話 テレグロスの王族と会う元魔王

 テレグロス王国の中枢を制圧したアリエスとキャサリーンだが、まだ安心できないとして城と外部を遮断している防壁は解除しなかった。

 その前に、部屋の入口の方で腰まで氷漬けになっている兵士たちに声をかける。


「殿下と王女殿下を、すぐにここに呼びなさい」


「だ、誰が裏切り者なんかに……」


 キャサリーンに声をかけられた兵士は、逆らう姿勢を見せる。


 パキパキ……。


 次の瞬間、体を覆う氷が面積を拡大する。

 アリエスが笑顔のまま血管を浮かべているのだ。そう、とても怒っているのである。


「聖女であるキャサリーン様をないがしろにしてきて、よくもまあ、そんなことが言えますね。私たちからすれば、あなた方の方が神に対する裏切り者ですよ」


 こう述べるアリエスの目じりが、ぴくぴくと跳ねているのがよく分かる。かなり怒っているサインなのだ。

 アリエス自体は十一歳の少女なのでそれほど迫力があるわけではない。だが、その感情とともに自分たちが凍り付いていくので、文字通り血の気が引いていく思いの兵士たちなのである。


「わ、分かりました。自分が行きます!」


 耐え切れなくなった一人の衛兵が声をあげる。

 アリエスとキャサリーンが無言で頷き合うと、声を上げた衛兵の氷が融けていく。動けないことには、呼びに行けないからだ。


「それでは待ちますので、必ずお呼びした上で戻ってきて下さいね」


「はっ! 承知致しました」


 衛兵はしっかりと返事をすると、慌てて王の間を飛び出していった。


 待つ間、アリエスたちは国王に近付く。


「まったく、キャサリーン様のこの状態をどう説明するのですか。年齢的なことがあるとしても、どうしてここまでやせ細っているのですか。ちゃんと食事は与えていますか? お休みをさせていますか? このままでは、キャサリーン様の命にもかかわりかねません」


 アリエスが国王にずいっと迫っていくと、国王はアリエスの姿に思わず震えてしまっていた。もうそこには、先程まで偉そうにしていた国王の姿はなかった。


「それに聞きましたよ」


「な、なにをだ……」


「私たちが国境の農村を通りかかった時にそちらの兵士に襲われたのですが、その際に村の人たちを人質に取ったそうですね」


「そ、それは俺のあずかり知るところではないぞ!」


 アリエスが迫ると、国王はとても慌てている。


「そうなのですね。いくらとっさのことだったとしても、あの辺境の人たちでも国民には変わりないでしょう? なのに、危険な目に遭わせますか。普通は逃がしますよ。こちらはたったの三人だったのですからね」


「それは本当なのか?」


 アリエスの口から出た内容に、キャサリーンはとても驚いている。これに対してアリエスは、こくりと黙って頷いた。

 さすがのキャサリーンも、これには言葉が出なかった。そのまま、国王を軽蔑した目で見下ろしている。


 長らく沈黙が続いていると、廊下の方が騒がしくなっている。


「失礼します。ラサカ殿下とヨミナ王女をお連れしました!」


 王子と王女を呼びに行っていた衛兵が戻ってきたようである。


「一体何があったのですか!」


「なんですか、この氷は?!」


 王の間の中の状況を見て、王子と王女はとても驚いているようだ。

 それもそうだろう。テレグロス王城を守る衛兵たちが腰まで氷に捕らわれているのだから。


「父上まで! 聖女キャサリーン、これは一体どういうことなのですか!」


 王子がキャサリーンに対して問い質している。


「これはラサカ殿下。お久しゅうございます」


 ところが、キャサリーンは丁寧に挨拶をするだけだった。


「挨拶などどうでもいい」


「そうですよ。お父様に対してなんてことをなさってらっしゃるのですか!」


 王子も王女も、キャサリーンをさらに問い詰めていく。だが、それでもキャサリーンはとても余裕のある状態だった。


「国王陛下は、聖女である私の力を使って、他国に攻め入ろうとしました。これは、その制裁です」


「なんだって……?!」


「それは本当ですの、お父様!」


 キャサリーンの言葉に、王子と王女は信じられないといった表情を見せている。


「何を言うか……。サンカサスは魔族と和平を結んだ。それは、魔族の力を借りてこの世を恐怖に陥れることに他ならぬではないか」


 国王が王子と王女の前で強がって発言をする。

 それと同時に、アリエスとキャサリーン、それとヴァコルの三人からまとめて厳しい視線を向けられた。


「確かに、魔族と和平を結ぶということは、そう取られても仕方がないでしょう。ですが、実際は違います」


「あなたは?」


「私は、サンカサス王国の聖女アリエスと申します。テレグロス王国の王子と王女よ、以後お見知りおきを」


 アリエスはぺこりと頭を下げる。


「このようなお話を立ち話でするのもなんです。テーブルを囲んで落ち着いてお話をしましょう」


 改めて周りを見たアリエスは、部屋の中のありさまを見て微笑みながら提案をする。

 その笑顔を見た瞬間、衛兵たちがまとめて震え上がっている。

 衛兵たちの反応の理由がいまいちわからない王子と王女だったが、このアリエスの提案を受け入れることにしたようだ。


 こうして、部屋の氷は融け去った……。

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