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魔王聖女  作者: 未羊


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第161話 テレグロスに攻め入る元魔王

 ペガサスに乗ったアリエスたちは、ひとまずはミルキー湿原の状況を見に戻る。

 あれから二日しか経っていないが、どうなっているのかは気になるところだ。


「ちっ、直前に強化していたのがあだとなりましたか……」


 キャサリーンが露骨に舌打ちをしていた。

 それというのも、ミルキー湿原にはもう誰もいなくなっていたからだ。


「これでは本国を叩いても、クラブ将軍たちの動向次第ではサンカサス王国に被害が出る可能性がありますね」


「いえ、放っておいていいでしょう。王都にはサハー、ゾディアーク伯爵領にはライラがいます。キャサリーン様の加護を失った軍勢など、恐るるに足りないでしょう」


 爪を噛むような仕草をしているキャサリーンに対して、アリエスは無視するように伝える。


「僕も聖女に同意します。たとえ将軍を叩いたとしても、本国が無事ならば第二陣を放つことも考えられます。ならば、国王に制裁を加えておいた方がいいでしょう。こういうことは早い方がいいのです」


「……そうですね。私は人間の平和を願う聖女。ならば、それに反する陛下たちには、鉄槌を下さなければなりませんね」


 ヴァコルから言われたことに同意したキャサリーンは、今までに見たことのないような表情で笑っている。これにはさすがのアリエスも思わず引いてしまった。


「平和を望むのであれば、人間であろうと魔族であろうと関係ありません。私は味方となりましょう。ですが……」


 キャサリーンは祈りを捧げるかのように胸の前で手を組むと、改めてにっこりと微笑んでいる。


「平和を破壊するのであれば、魔族であろうと人間であろうと裁かれねばならないのです」


 その笑顔のまま、なんとも怖いことを言い放つ。

 このキャサリーンの発言にはヴァコルは腕を組んで頷いているが、どちらかといえばアリエスの方が及び腰である。

 だが、キャサリーンの腹の内はもう決まっているらしく、アリエスは仕方なくペガサスにテレグロスの王都へと向けて飛ぶように指示を出す。

 ペガサスはおとなしく、その指示に従って空を飛び始める。


「ふふっ、神様の使いとも言われるペガサスに乗れるなんて思いも寄らなかった。やっぱり、アリエス様は神様に愛されているのね」


「え……と……、キャサリーン様?」


 キャサリーンからかけられた言葉に、アリエスはちょっと戸惑ってしまう。


「最初から分かっていた、あなたが魔王なことくらい。でも、聖女である以上、事を荒立てるわけにはいかないわ。だから、知らないふりをしていた」


 急に語り出したキャサリーンに対して、アリエスは何も言えなくなる。

 どうしてだろうか。これは黙って聞いていないといけないと思ったからだ。


「本当は、すごくうらやましかったわね。元魔王でありながら、神聖力は私より多いんですもの」


 なぜだろうか。そう話すキャサリーンの声は、どことなく泣いているようにも思えた。


「正直言って、十三年前にあなたにとどめを刺すかどうかは迷ったのよ。自分が前線に出てきて必死に部下を逃がしている姿を見てしまったせいでね。あの時の私はまだ未熟だったせいで、兵士や周りの言うことに流されていた。魔王だから倒さなきゃいけないと」


「キャサリーン様……」


 キャサリーンの反省の弁に、アリエスは名前を呼ぶことしかできずにいる。ヴァコルも黙ったまま聞いている。


「でも、今となってはその選択肢でよかったと思っているけれどね。こうやって同じ聖女になれたんだからね」


「それはまあ、確かにそうですね」


「ええ、なんともいえない皮肉ですね」


 キャサリーンの続けた言葉に、アリエスもヴァコルも笑うしかなかった。

 確かにその通りなのだ。

 魔王だったアリエスは、キャサリーンたちに倒されることによって、聖女のアリエスとして転生したのだから。結果オーライというのか皮肉というのか、ただ笑うことしかできない現実である。


「さあ、テレグロス王国の王都が見えてきましたよ、アリエス様」


「あれが……、テレグロス王国の王都」


 目の前には、なんともいえない大きさの城塞都市が見えてきた。

 何重にも築かれた城壁が特徴的な、見るからにいかつい感じのする都市である。


「なんともまあ、酷い場所だな。とても最強聖女を抱えている都市とは思えないくらい、堅固で重苦しい場所だな」


「過去の聖女は頼りなかったとは聞いているからね。どこまで本当かは知らないけれど」


 ヴァコルもキャサリーンも、かなり嫌そうな表情を見せている。そのくらいに、テレグロスの王都は見る者に威圧感を与える息苦しそうな場所だったのだ。


「さて、これ以上近づくのは一度やめておこう。潰すとはいったものの、慎重にやらないとね。下準備をしておかないと、教会や街の人に被害をもたらしてしまう」


「確かにそうですね。他国に平然と攻め込むような人物ですから、気付かれれば何をしでかすか分かりませんからね」


「そういうこと」


 キャサリーンとヴァコルは、同じ意見のようである。

 さすがにこれにはアリエスも頷くしかなかった。

 テレグロスの王都を目の前にして、キャサリーンたちの反撃が今始まろうとしている。

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