表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王聖女  作者: 未羊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

150/174

第150話 国王に伝える元魔王

 アリエスは謁見の間へとやってくる。

 緊急事態であるために、普段のように跪くようなことはしなかった。


「国王陛下にご報告申し上げます」


「なんだ、申してみよ」


 発言の許可は得ていないものの、アリエスは臆することなく発言をしている。それだけ急を要する話なのだ。

 普通ならば咎めるところだろうが、アリエスの表情からしてただ事ではないと察したらしく、勝手な発言を咎めずに更なる発言を促していた。


「はい。各国を説得にあたっているさなか、テレグロス王国内を移動中、同国の兵士と接触しました」


「それでどうなったのだ?」


「私たちは攻撃を受け、その中でテレグロス王国が私たちのサンカサス王国へ向けて兵を差し向けたことが判明したのです」


「なんだと?!」


 アリエスの報告に、国王は大声を上げている。

 周囲からも戸惑いの声が聞こえる中、アリエスはさらに話を続ける。


「現在は辺境において食料の調達に来ていた兵士たちとカプリナ様とサハーが交戦中でございます。スラリーもいますので無事だとは思いますが、気にかかる状況ではございます」


「ならば、なぜ聖女はこちらに戻ってきた」


 国王の質問に、アリエスは一拍の間を置く。


「私がターゲットだからです」


 はっきりとアリエスは告げる。


「その理由を聞いてもいいか?」


「はい。どうやら何らかの方法で、私が魔王の生まれ変わりだということを知ったようなのです。魔族と和解したこともあって、魔に魅入られた国として、サンカサス王国を滅ぼそうと考えているようです。キャサリーン様もいらっしゃるようですので、私がいないと話にならないと思い、単身戻ってきたのです」


「……なるほど、それは確かに厳しい話だな」


 敵軍の中に、最強聖女と呼ばれるキャサリーンがいる。これだけで、サンカサス王国としては分が悪すぎるというものだ。

 となれば、聖女には聖女をぶつけるしかないという理論が成り立つというものである。

 アリエスの報告を聞いて、国王は頭を抱えてしまう。


「まったく、どこでその情報が漏れたというのだ……」


「おそらく、間者を仕込んでいたのでしょう。元々野心が大きい国だと聞き及んでおりますので、いつでも攻め入る用意があったのでしょうね」


「くそっ……」


 アリエスの話を聞いていた国王は、思いっきり玉座に拳を叩きつけていた。


「アリエスを他国の説得に向かわせていたということは、教会の方は最初から想定はしていたのだろうな」


「司祭様たちはそのような感じでございました。司祭様とのお話の中で私も同じように感じましたので、今回の件は引き受けた次第です」


 アリエスは実に淡々と話をしている。


「ともかく、時間がありません。テレグロス王国兵と接触した時には、すでに派兵したような雰囲気でしたのでね」


「分かった。騎士団長を呼べ! すぐに軍を編成する!」


「はっ!」


 謁見の間にいた兵士が一人駆け出していく。


「では、私は偵察に行ってまいります。そもそも私が狙いなら、私が出ていくのが一番早いというものですしね」


「それは困りますね、聖女様」


 アリエスが出ていこうとすると、アリエスに向かって声をかけてくる人物がいた。

 くるりとアリエスが視線を向けてると、そこにはよく知っている人物の姿があった。


「ヴァコル様。何が困ると仰られるのですか?」


 そう、王宮魔術師のヴァコルだった。どうやらこの部屋には最初からいたようだ。アリエスは気が付いていなかったようだが。

 突然現れたヴァコルは、アリエスにゆっくりと近付きながら話し掛けている。


「聖女というものは、国家の安寧の象徴。そのような方を一人で戦場に向かわせるのは、国に仕える者としてとても許しがたい行為です」


「止めると仰られるのですか?」


 ヴァコルの言い分にアリエスは言い返している。

 ところが、意外にもヴァコルは首を横に振っていた。


「僕もついていきましょう。聖女様をお一人で行かせる気は毛頭ございませんよ」


「ヴァコル、何を勝手なことを!」


 国王が玉座から立ち上がってまで止めようとするが、その時に見せたヴァコルの表情を見て、ぴたりと動きを止めてしまった。


「……そうか。分かった、無茶をするでないぞ。お前たちは両方とも、この国にとって重要な存在なのだからな」


「はっ、お任せ下さい」


 何かを悟ったかのように、国王はヴァコルに出撃許可を出してしまっていた。


「では、行くとしましょうか、聖女様」


「はい、ヴァコル様」


 二人揃って謁見の間から出ていく。

 国王はその後ろ姿をただ見送ることしかできなかった。


「まったく、ヴァコルにもそういうものがあったとはな……。あの様子では、我が息子たちは勝ち目はないではないか」


 国王は腕で顔を覆い、天井を眺めながらぽつりとこぼす。

 しばらくして、大きな声の騎士団長が謁見の間にやってくる。

 その声で気を取り直した国王は、テレグロス王国の軍勢を迎え撃つための編成をすぐに指示したのだった。


 迫りくるテレグロス王国と聖女キャサリーンの脅威。

 はたして、サンカサス王国に勝機はあるのか。世界の命運をかけた戦いが、今始まろうとしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ