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魔王聖女  作者: 未羊


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第141話 お墓参りをしたい元魔王

 ルホスとの交渉を終えて、アリエスたちは教会に戻る。

 エリスを部屋まで届けたアリエスは、そのままエリスと少し話をしている。


「アリエス様、ボクたち、これからどうなるのでしょうかね……」


 エリスはかなり心配そうな表情でアリエスを見ている。

 ゼラブ国というのは、吹けば飛ぶような弱小国である。ゼラブが国として存続していられたのはテレグロス王国あってこそなので、戦争が起きるようなことがあれば、間違いなく真っ先に判断を促されるのは間違いないだろう。


「ええ。ですから、今回私はこうして訪問を行ったのですよ。前世、魔王であった私の唯一の子どもであるエリスを守るためにね」


「あ、アリエス様……」


 アリエスの言葉に、エリスはちょっとうるっときてしまっている。

 元魔王という言葉はまだ信じられないエリスだが、自分に向けられている感情は紛れもなく本物だと感じているからだ。


「そうです、エリス様。ちょっとお聞きしてもよろしいですか?」


「は、はい」


 アリエスから確認するような感じで話し掛けられたエリスは、驚きながらも了承をしている。


「エリスのお母様、アクア様のお墓にご案内いただけないでしょうか」


「お母さんの……ですか?」


「はい。私が介抱してあげたことが原因で、かなり苦しんでおられたと思われますからね。妊娠をし、魔族の特徴を持った子どもを産んでしまったのですから」


 その時のアリエスの表情は、とても悲しそうなものだった。

 アリエスの悲痛に満ちた表情に、エリスは心が苦しくなってしまう。アリエスが自分たちのことに対して負い目を抱いていることをひしひしと感じたのだから。


「分かりました。もし司祭様たちに止められたとしても、ボクの判断でご案内します。それでアリエス様の気が晴れるのでしたら」


「ええ。ぜひともお願いしますね」


 アリエスはエリスに対して、深く頭を下げていた。

 アリエスはエリスの父親である魔王が転生した姿であり、エリスよりも年下になる聖女だ。だが、未熟なエリスの指導をしてくれた聖女であるために、このアリエスの行動に対して、エリスはとても複雑な心境になったのはいうまでもなかった。


 夕食の席で、アリエスはゼラブ国の教会に改めて申し入れをすることにした。


「司祭様、お話をよろしいでしょうか」


「なんでしょうか、アリエス様」


 突然話しかけられたせいか、ゼラブ国の司祭は目をぱちぱちとさせている。


「明日ですけれど、エリス様のお母様のお墓参りをさせていただきたいのです。私のせいで苦労をかけたようですので、せめて挨拶だけでもしておきたいと思いましてね」


 アリエスの申し出に、司祭は反応に困っているようだった。

 ところが、これは何も司祭だけではなかった。カプリナとサハーも驚いていたのだ。


「いや、今日の交渉の場を見ておりますれば、お気持ちはとてもよく分かります。ですが、エリスの母親は病死したので、普通の埋葬はされていないのです。そのような場所に、他国の聖女をお連れするわけには……」


 どうやら司祭は、エリスの母親が病気で死んだことを理由に向かわせることを渋っているようである。

 確かに、病気で死んだ場合には遺体は焼き払い、他の死没者たちとは別の場所に埋葬されることになっている。さらには専門の神官が、頻繁に浄化に向かうことになっている。

 聖女であるなら、神官よりは確かに力は強いだろう。それでも何かあってはならないと、専門の神官以外は近付くことを一切許されていないのだ。もちろん、話をしているこの司祭ですらだ。

 ところが、アリエスはそんな話を聞いてもにこやかな表情を崩していない。


「ご心配なく。私の魔法は治癒に特化しておりますから。それに」


「それに?」


「私なりのけじめというものです。私のしたことでその後に影響が出たのであれば、せめて謝罪だけでもしておかねばなりませんからね」


「……分かりました。そこまで仰られるのでしたら、専門の神官とともに向かっていただきましょう。ただし、決まり事ですのでアリエス様以外の同行は、一切許可できませんけれどもね」


「分かりました。それでも大丈夫です」


 アリエスが見せた強い自信に、ゼラブ国の司祭は折れたようである。

 エリスの母親であるアクアが埋葬されている場所まで、案内してもらえることになったのだ。

 ただし、アリエス一人で担当の神官と一緒に行かなければならない。このことにカプリナやサハー、エリスの三人が心配しているようだった。


「アリエス様、大丈夫でしょうか」


「心配はいりませんよ、カプリナ様。元魔王である私を信じて下さい」


「そう言われるとかえって不安になりますよ、アリエス様」


 アリエスが安心させようとして言い放った言葉に、カプリナは泣きそうな表情を見せていた。

 それでもアリエスは、変わらずに笑顔を見せている。まったく、大した自信というものだ。


「サハー、スラリー、私がいない間、カプリナ様たちをお願いしますね」


「分かりました」


「おまかせを」


 アリエスの言葉に、サハーとスラリーはいつものようにしっかりとした返事をしていた。

 エリスの母親であるアクア。転生という特殊な状況はあるものの、十三年ぶりに対面を果たすことになる。

 アリエスは彼女に、一体何を思うのだろうか。

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