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魔王聖女  作者: 未羊


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第138話 真実を告げる元魔王

 ゼラブ国の教会の中を一人歩くアリエス。その歩は、とある部屋の前でぴたりと止まっていた。


 コンコン。


 扉を叩くと、中から声が聞こえてくる。


「はい、どちら様でしょうか」


 エリスの声である。


「エリス様、アリエスです。お部屋に入ってもよろしいでしょうか」


「えっ、えっ? アリエス様、いらしてたのですか? あれっ、でしたら、なぜ私は呼ばれなかったのでしょうか」


 アリエスの声に、エリスがものすごく混乱している。

 確かにその通りだ。他国の聖女が来るとなると、教会の偉い人たち総出で出迎えることになるからだ。

 ところが、今回はエリスは呼ばれなかった。

 実は、これはアリエスからの希望である。サプライズをかけるために、エリスには伝えられなかったのである。


「予想通り、お部屋にいらしたようですね。失礼しますよ」


「は、はい。どうぞ、お入り下さい」


 まったくもって状況が理解できないままだが、エリスはアリエスを部屋へと招き入れた。


 部屋に入ったアリエスは、ひとまず普通に挨拶を交わす。

 そして、すぐさまエリスにとあるお願い事をする。


「エリス様」


「なんでしょうか、アリエス様」


「頭の角を見させていただけませんか?」


「えっ?!」


 突然のお願いに、エリスは戸惑っている。だが、アリエスだったらということでおとなしく頭の角を見せることにした。

 部屋の入口にカギをかけて、ヴェールを外し、結んでいる髪をほどく。さらりと解けた髪の毛の下から、黒くて小さな突起が姿を見せる。これが、魔族の証明である角である。


「お恥ずかしいですね。聖女でありながらこのような角を持っていて」


「いえいえ、この程度なら可愛いものだと思いますよ。エリス様は人間の血の方が濃いのですね」


「かも知れませんね」


 一度見られたことのある相手なせいか、エリスはだいぶ落ち着いているように見える。


「少々失礼致します」


 アリエスがエリスの角に触れると、キィンという音がして魔力が共鳴を起こしている。

 魔族の証明である角に触れて共鳴が起きているのということは、やはりアリエスの魔力は魔族由来ということで間違いないようだ。だというのに、聖女としての力をきちんと行使できているのだから、本当に不思議というものである。


「アリエス様、ボク、頭が痛いです」


「ああ、ごめんなさい。ちょっと長く触りすぎてしまいましたね」


 アリエスはパッと手を離す。


「アリエス様に触れられると、強い魔力の共鳴が起きますね。どうしてでしょうか」


 エリスは角を撫でながら、不思議そうな表情でアリエスのことを見つめている。それだけ不思議だということなのだ。

 ところが、アリエスは少しばかり思い詰めたような表情で、エリスのことをじっと見ている。その表情は、まるで思い当たることがあるといった表情だった。


「アリエス様……?」


 アリエスの深刻そうな表情に、エリスはさすがに動揺している。


「エリス様」


「はい、アリエス様、なんでしょうか」


 おもむろに口を開いたアリエスに、エリスはしっかりと目を合わせて反応する。


「今から私が言うことは、一応他言無用でお願いします」


「なんだかよく分かりませんが、約束します」


 アリエスの真剣なお願いに、エリスはしっかりと答えている。

 エリスがしっかりと答えたことで、アリエスは話をする決心が固まったようだった。


「実は私、前世は魔王だったのです」


「え?」


 いきなりの爆弾発言に、エリスは全身が固まってしまう。

 自分が到底敵わない聖女が、実は魔王だったというとんでもない発言をしたのだ。それは驚いて当然というものである。


「これは事実なんです。そして、前世の私を殺したのは、テレグロス王国のキャサリーン様なのです」


 アリエスの爆弾発言に、エリスはまったく反応できないでいる。そのままアリエスの話を黙って聞き続けるしかなさそうだ。


「私は魔王として死した後、自分の能力を活かせる場として、今の聖女へと転生したのですよ。転生させた神様には正直戸惑いましたが、思った以上に聖女という立場は合っていたようです」


「そ、そうなのですね……」


「ですが、エリス様にはそれ以上のショックなことをお伝えしなければならないようですよ」


「ショックなこと……?」


 アリエスの発言に、エリスはかなり警戒している。そもそも魔王だったという発言だけでもとんでもない話だ。それ以上のものともなれば、経過して当然というわけである。

 アリエスは一度咳払いをして、気持ちに整理をつける。


「実はエリス様なんですけれど、その父親はどうやら、魔王だった頃の私のようなのです」


「えっ、ええっ?!」


 視線を泳がせて困っていたアリエスが、しっかりとエリスを見て告げた内容に、エリスは開いた口がふさがらなくなっている。

 長らく不明だった自分の父親。それが、まさかの人物であったために、こうなるのも仕方のないということだ。


「もちろん、私はエリス様のお母様を介抱しただけで、何もいかがわしいことはしておりません。どうやら、魔王だった頃の私の魔力は想像以上に影響が強く、エリス様のお母様を妊娠させてしまったようなのです」


「そ、そんな……。ボクは、魔王の娘だったのです……か?」


 ショックを受けるエリスに、アリエスはただ頷くことしかできなかった。

 あまりにもショッキングな話に、部屋の中はしばらくの間、沈黙に包まれ続けたのだった。

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