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魔王聖女  作者: 未羊


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第128話 王都で交渉に臨む元魔王

 あっという間に、サンカサスの王城が見えてくる。


「見えてきました。あれがサンカサスの王都です」


「なんとも貧弱な城ですな」


「魔王城と同じように考えてはいけませんよ、パイシズ」


「はっ、そうでしたね」


 小ばかにしたような言い方をするパイシズを、アリエスがしっかりと叱っておく。こういうところは魔王時代からの癖である。

 とはいえ、アリエスに叱られたパイシズは、素直に自分の非を認めて謝罪していた。


 さて、サンカサスの王都に近付いてきたものの、当然ながら門番に止められてしまう。

 普通の魔族なら強行突破したいものだが、今回は話し合いに来たのでおとなしく門で止まる。


「魔族の馬車と、聖女様?!」


 止めてみたものの、そこにいた組み合わせに思わずびっくりしてしまう門番たちである。

 馬車と六本脚の馬が目立ちすぎて、ペガサスに乗ったアリエスをしばらく見落としていたのだ。


「はい、聖女ですよ。今回は国王陛下にご用がありまして、こちらの方を連れてきたのです」


 アリエスがこう言うと、馬車の扉が開いてパイシズが姿を見せる。


「魔王軍参謀、パイシズでございます。此度は我が魔王軍と貴殿らサンカサス王国との間で停戦協定を結びたく、ご訪問させていただきました。貴国の王と話をさせていただきたく思います」


 パイシズはものすごく丁寧に話をしている。

 ところが、門番たちの対応はとても冷たいものである。


「誰が魔族となんか話をするものか!」


「あら、聖女である私の頼みであっても、お聞きいただけないと仰るのですか?」


 パイシズの申し出を断ろうとする門番たちだが、アリエスににこやかに話しかけられてしまい困ってしまう。

 最初から視界の中にいたというのに、魔族を前に露骨に態度を変えたせいで、アリエスは少々怒っているような感じである。


「ボクもいるというのに、お前たちは門前払いをしようというのですか。まったく、困った連中ですね」


「ヴァ、ヴァコル様?!」


 馬車からヴァコルが姿を見せれば、門番たちは完全に震え上がっていた。

 そのヴァコルも怒ったような口調だったのでなおさらといった感じだった。


「こここ、これは失礼致しました! おい、すぐにお城に連絡を!」


「はっ!」


 アリエスに加え、ヴァコルまで登場すれば、もう門番たちに逆らう余地など残っていなかった。慌てたように城へと先触れを走らせていた。


「まったく、権力を振りかざすとは、魔王様らしくありませんな」


「今の私は聖女ですからね。国王陛下とほぼ同等の権限がありますもの。使えるものは使える時に使いませんとね」


 頬に手を当てながら、アリエスはにこやかに微笑んでいる。

 そのアリエスの姿を見ながら、ヴァコルはどういうわけか大きなため息をついていた。


 お城まで移動する間、さすがにでかい六本脚の馬は目立っていた。王都の人たちからはアリエスの乗るペガサスも合わせて、かなりの注目を集めているようだった。


「さすがは魔王様。みなからの注目度はけた違いですな」


「パイシズ。ここではその名を呼ぶのはやめていただけますか? 民衆が恐怖してしまいますからね」


 王都の中に入っても、パイシズはアリエスのことを魔王と呼び続けている。さすがにこれには苦言を呈さざるを得ないというものだ。


「これは失礼致しました。では、アリエス様とお呼びさせていただきます」


「最初からそうして下さい」


 パイシズの対応に、アリエスは少々不満そうだった。

 そうしている間に、アリエスたちはお城へと到着する。

 城の入口まで来ると、馬車から降りてアリエスたち四人とスラリーだけで城の中へと入っていく。


「ここに来るのも久しぶりですね。デビュタント以来でしょうか」


「そうですね、アリエス様」


 アリエスもカプリナも、サンカサスの王城を懐かしんでいるようだった。

 入口からは兵士の付き添いで移動していく。さすがに魔族であるパイシズには、複数人の兵士が取り囲むようについている。警戒しまくりだった。

 城の中を移動してすることしばらくすると、大きな扉の前に到着する。そこは謁見の間だった。


「国王陛下。聖女アリエス様と聖騎士カプリナ・ゾディアーク伯爵令嬢、王宮魔術師ヴァコル様と魔族をお連れしました」


 パイシズだけ魔族で済まされていた。

 まあ、仕方ないのない対応だ。それが分かっているので、パイシズも特に文句を言うようなことはなかった。

 謁見の間は広いので、伝言ゲームになる。国王まで伝える兵士が往復する時間の分だけ待たされる。

 しばらく待つと、扉が開いて謁見の間へと入れるようになった。

 扉の中へと入ると、赤じゅうたんが敷かれた左右には、多くの兵士が立っている。さすがに魔族がいるというだけあって、かなり物々しい雰囲気になっている。

 その兵士たちの間を、アリエスたちは騎士に連れられてゆっくりと進んでいく。

 段が近くなってくると、ようやく国王の顔がはっきりしてくる。


「よく参られたな、サンカサスの聖女アリエスよ」


 国王が立ち上がり、アリエスに向かって声をかけてきた。


 さあ、ここからがアリエスの和平交渉第二幕である。

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