第121話 衝撃告白をする元魔王
ゾディアーク伯爵のところへと、ライラがやって来る。隣には戦っていたはずのピスケースの姿があった。
「伯爵様!」
「うん? そなたは確か傭兵のララだったかな?」
「はい、その通りでございます。伯爵様にご報告があって、やって参りました」
ライラの姿を見つけて、ゾディアーク伯爵は対応にあたっている。
「むっ、隣の者は何者だ」
ライラと一緒にいた人物に気が付いた伯爵の声で、取り巻きの護衛が一斉に槍を構えている。
「はっ、私は魔王軍参謀の子息であるピスケースと申す者でございます。重大なお知らせがありまして、こちらにやってきました」
「なんだと? 魔王軍参謀の子息だと?!」
ピスケースが正直に名乗ると、伯爵は表情を歪めている。
兵士が攻撃を仕掛けようとするが、ライラが間に入って兵士を牽制している。
兵士たちの動きが止まると、ピスケースはその続きを話し始める。
「我々、魔王軍は、全面的に降伏いたします。此度は攻め入って申し訳ございませんでした」
ピスケースが降伏を申し入れると、さすがのゾディアーク伯爵は目を白黒とさせていた。
戦いが終わるのであれば、この上なく嬉しいことではあるものの、さすがに魔族の言うことであれば簡単に信用できないのである。
「お前たちの言うことを信じろというのか?」
「はい。見ての通り、我が軍勢は既に統制が取れておりません。これは、とある者によって我々が無理やりまとめられていたことによるものです。人間たちへの侵攻は、我々の総意ではありません」
「ふ、ふむ……」
ピスケースの証言を聞いて、先程までの状況と照らし合わせるといくらがつじつまが合うところがある。
急に相手の攻撃の手が緩んだかと思えば、撤退を始めたり、武器を捨てたりして態度が急変していたことも気にかかる。
ところが、そこにとある一報が飛び込んできて事態は急変する。魔族の軍勢がこちらに向かってきているというのだ。
この報にはゾディアーク伯爵が、再び警戒を強める。
しかし、それを止めたのは、ライラだった。
「お待ち下さい。魔族たちを統率できるような存在は、ただ一人しかおりません。だとすれば、魔族たちには危険はありません。武器をおさめて下さい」
「私からもお願いします、お父様」
ライラの言葉に同意したのは、カプリナだった。
「カプリナ、お前まで何を言うんだ。しかも、魔族を連れて何をしている」
「この方たちは、同じ魔族から逃れてこられた方々です。お父様、ともかく今はララさんを信じて下さい」
「か、カプリナ……」
娘の必死な訴えに、ゾディアーク伯爵は仕方なく騎士たちに武器をしまうように命じていた。
やがて、ペガサスに乗ったアリエスの姿が見えてきた。
「ゾディアーク伯爵様、すべて終わりましたことをご報告いたします」
「おお、アリエス様。ご無事でしたか」
アリエスの姿を見つけた伯爵は、思わず大きな声で呼びかけてしまう。
しかし、その後ろの状況を見て、目を疑ってしまった。報告の通りに、たくさんの魔族がついてきていたからだ。
「アリエス様、その魔族たちは……?」
伯爵は驚いた顔のまま、アリエスに問いかけている。
驚く伯爵に対し、アリエスはとても落ち着いた様子で事情の説明を始める。
「はい、降伏をした魔族たちです。もう彼らには敵意はありませんから、警戒を解いていただいて結構です」
「信じられないでしょうが、僕がいてもこいつらは襲い掛かってくる気配はない。ゆえに、聖女様の言葉は信じられるでしょう」
ヴァコルの言葉もあれば、これはもう疑いようのないことなのだろう。
「このことに関しまして、私の方からとても申し上げづらい報告がございます。みなさん、心してお聞きくださいますでしょうか」
アリエスがこのように告げると、後ろの方から教会の関係者たちも集まってきていた。
サンカサスの聖女であるアリエスの重大発表だ。その言葉に、誰もが関心を寄せているのである。
「実は、私はと申しますと……」
少し言い渋っているアリエスである。覚悟は決めたはずではあるが、やはり人間たちを目の前にすると萎縮をしてしまうようだった。
語ろうとしている内容が内容なので、こうなってしまうのも無理はない。だが、隣にいるヴァコルやサハーがアリエスの肩に手を置くと、勇気をもらったかのようにアリエスの表情が引き締まっていた。
「私には前世というものがあります」
「なんと?」
アリエスの告白に誰もが驚いていた。前世の記憶持ちというものは、かなり珍しいものだからだ。
なので、アリエスのこのひと言だけでも、かなりみんなの間に動揺が起きていた。
だが、本当の驚きはこれからだった。
アリエスはぐっと胸に当てた拳に力を籠める。
「私の前世は……、聖女キャサリーン様によって討たれた、魔王だったのです!」
アリエスの口から放たれた衝撃の告白。
サンカサスの聖女は、人間たちを恐怖に陥れていた魔王の生まれ変わり。
そのあまりにも衝撃的な内容に、一部の者を除いて固まってしまってい、その場完全に静まり返っていたのだった。




