表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王聖女  作者: 未羊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

103/174

第103話 魔族の罠にかかる元魔王

 ゼラブ国の上空に到着したアリエスは、じっと地上を見下ろしている。

 テレグロスとは反対側の国境の方を眺めてみるが、これといって怪しい気配はない。

 やはり偽の情報をつかまされたのだろうか。アリエスはペガサスに乗ったまま考えている。


(ええい、このまま考えていても仕方あるまい。念のため、魔族の領域に進んでみることとしよう)


 上空でいくら考えていても意味がないと感じたアリエスは、魔族の領域へとペガサスを進ませる。

 ところが、アリエスが国境に近付いた時だった。


「ブルルッ、ブルルルッ!」


 ペガサスが警戒する声を上げたのだ。


「やはり、何かいるのですね」


 明らかにおかしいペガサスの様子に、アリエスはじっと地面に向けて目を凝らす。

 すると、森の中に何かがうごめいているような様子を見つけることができた。


(あそこは魔族が生息している地域だな。軍勢が隠れているにしては動きが小さすぎる。だが、気になるには気になる。ちょっと近づいてみよう)


 アリエスはペガサスをゆっくりと降下させる。一気に降下させて、もし攻撃でもされようものなら、回避が難しいからだ。

 地面に近付いてきたアリエスが、動きのある所をじっと見る。そこには、小さな魔族の姿があった。


「ちょっとよろしいでしょうか、君たち」


 アリエスは声をかけてみる。


「ひゃっ!」


「うわっ!」


 魔族たちはびっくりして、その場で転んでしまう。


「あらあら、大丈夫ですか」


 思わず手を差し伸べてしまうアリエスである。なにせ前世は魔王だ。それゆえ、自分が今は聖女であるということを忘れて、助けてしまうのだ。


「あ、ありがとうございます。……って、せ、せ、聖女?!」


 魔族の少年が、再び尻餅をついてしまう。

 助けてもらったと思って姿を見たら敵である聖女なのだから、驚かない方がおかしな話なのだ。


「驚かせてごめんなさい。私はサンカサス王国の聖女であるアリエスと申します。この辺りで、魔族の軍勢を見かけませんでしたでしょうか」


「だ、誰が聖女なんかに……」


「お、お兄ちゃん」


 強がる兄に対して、妹はしっかりとしがみついている。

 妹をしっかりとかばうように立つ兄の姿に、アリエスはつい感動してしまう。


「家族を思う気持ちは、魔族であっても同じなのですね。ちょっとじっとしていて下さい、ケガをしていますからね」


「えっ」


 驚く魔族たちに対して、アリエスは回復魔法を使う。

 聖女の力は本当であれば、魔族にとっては毒に近いものだ。ところが、アリエスの魔法は魔族たちの傷をきちんと癒している。


「どういうことなんだ? 聖女の力は、俺たちにとって危険なものって聞かされていたのに……」


「私が癒しの聖女だからですよ。ひとまず落ち着きましたか?」


「あ、ああ……」


 少年の態度が、先程よりも軟化していた。やはり、ケガを治したという事実は、かなり効果を生んでいるようである。


「改めてお聞きしますが、この辺りに魔族の軍勢は……」


 もう一度聞こうとしたその時だった。

 周りから、おぞましいばかりの魔力が解き放たれたのだ。


「こ、これは!」


 アリエスには覚えのある魔力だった。

 地面から一斉に闇の魔力が飛び出してきたかと思うと、アリエスやペガサスを魔族の子どもたちともどものみ込もうとしている。


「この闇の監獄の魔法は……、ターレスですね!」


「ほう、この俺を知っているのか」


 ゆらりと影が揺らぎ、全身が漆黒の闇に覆われた、不気味な影が現れる。人間でいうなら心臓のある位置だけが、赤い光を放っており、さらに不気味な印象を漂わせている。


「なるほど、私に対する罠ですか」


「ふん、なにやら俺たちに探りを入れている聖女がいると聞いたのでな。それを利用させてもらった。今頃は、本隊がサンカサスに攻め込んでいる頃だろうな」


「なんですって?!」


 アリエスは大声で叫んでいる。だが、その一方でそんなことを教えてくれるとは、なかなか親切だなと思っている。

 

「ふん、聖女は愚かだからな。攻め入るという情報を流せば釣られると思ったさ。お前のような子どもの聖女、この監獄のターレス一人で十分よ!」


 ターレスは既に勝ち誇ったような気分でいるようだ。


「その監獄は、最強聖女とかいうやつでも破れないような強固なものだ。そこにいるガキどもは予想外だったが、まあいい、魔族の未来のために死ね」


「なんという酷いことを!」


「なんとでも言えばいいさ。そこから脱出できるというのならな! はーっはっはっはっ!」


 ターレスは勝ち誇ったかのように笑っている。

 アリエスはターレスに向けて鋭い目を向けてはいるものの、その口元をよく見ると笑っている。どうやらアリエスには、この闇の監獄を打ち破る策があるようなのだ。


「なんだ、その口は……。まさか、お前。このターレス様の魔法を破れるとでも思っているのか?」


 口元に気が付いたターレスは、アリエスに対して不快感を露わにしている。

 それに対して、アリエスは目までも笑ってみせている。


「ええ、この程度の闇の魔法。私に破れない道理はありません。その思い上がり、このアリエスが粉々に砕いてみせますよ」


「ほざけ! 閉じろ、監獄!」


 さすがにブチ切れたのか、ターレスは闇の監獄を少しずつ小さくし始める。こうやって中に閉じ込めた対象を押しつぶすというのが、このターレスの牢獄魔法なのである。


「潰れてぺしゃんこになって後悔しろ! 我らが魔王に逆らおうとしたこと、その身で悔いろ!」


 ターレスが叫ぶと、牢獄はみるみるうちに小さくなっていく。

 その中でもアリエスの表情には変化がない。はたしてアリエスには、どのような秘策があるというのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ