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魔王聖女  作者: 未羊


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第100話 休日を過ごす元魔王

 久々にゾディアーク伯爵領へと戻ってきたアリエスは、翌日はゆっくりと休んでいた。


「まさか、のんびり休みなさいと言われるとは思いませんでしたね」


 朝の祈祷を終えて部屋に戻ったアリエスは、本当に何もせずにのんびりしている。

 そのくらい、ゼラブへの移動は大変だと思われたのだろう。


「アリエス、ちょっとよろしいでしょうか」


「はい、おじいちゃん。なんでしょうか」


 育ての親である牧師が顔をのぞかせると、笑顔で反応するアリエスである。

 部屋の中で牧師と向かい合って座ると、アリエスはちょっと緊張しているようだ。何を聞かれるのだろうと考えているようである。


「どうでしたかな、ゼラブ国は」


「はい、何といいますでしょうか。今まで見た場所のどこと比べても、活気のない感じでした。聖女がいらっしゃると国は栄えるというお話でしたけれど、私が到着した時はそういったことが感じられない状態でした」


「そうですか。よっぽど深刻だったのですね」


 アリエスが答えると、牧師はそんな反応をしていた。


「はい。聖女であるエリス様はなんといいますか、力がうまく扱えていないようでした。それゆえ、聖女の恩恵がうまく行き届いていないようでした」


「なるほど。それで、アリエスが向かった結果、どのように変わりましたでしょうか」


 牧師はやけに話を聞いてくる。やはり、聖女の関わる教会の人間として気になってしまうようなのだ。


「エリス様の能力は格段に良くなりましたから、そのうちゼラブ国の状況は改善していくと思われます。あのキャサリーン様からも手紙を寄こされるくらいでしたからね」


「ですな。しかし、聖女であっても、力がうまく使えない者もいるのですな」


「不思議なものですよね」


 アリエスはエリスが力をうまく使えなかった理由を知ってはいるが、あえてここで口に出すことはなかった。

 言ったところで、誰が信じるというのだろうか。聖女として選ばれた人物が、魔族との混血だなんていうことを。


「ふむ。ともかくご苦労でした。今日は長旅の疲れを考慮しまして、お休みにしております。街に出かけたいのであれば、出かけてもよいのですぞ」


「そうなのですね。お心遣い、感謝します」


 話を終えると、牧師は部屋を出ていった。

 一人となったアリエスは、部屋を出ていく。サハーを呼びつけて街へと繰り出すと、傭兵ギルドへと足を運んだ。

 傭兵ギルドでライラの居場所を聞き出すと、お礼を言ってすぐさま出ていく。


「ライラに会うんですか。一体何の話をなさるおつもりで?」


「別に。魔王軍のお話を聞くだけですよ。前回話をしてからずいぶんと間が空いていますからね」


「そういえば、二十日くらいでしたっけか」


「はい。それだけ時間が経てば、状況に変化も起きることがあります。私もよく経験したことですから、ここは一応聞いておきませんとね」


「分かりましたよ」


 どことなく嫌がる様子を見せるサハーを説得して、アリエスは街の外にまで出て、ライラとの接触を図った。


 街の外のちょっと人が来なさそうな場所まで移動したアリエスは、その場に座り込んでライラの登場を待った。

 今日は街の外まで魔物の討伐に行っているらしいが、あまり遠くないのでしばらく待っていれば戻ってくるだろうということだった。


「まだお昼前なんですけど、本当にもう戻ってくるんですかね」


「まあ、気長に待ちましょう。ピスケースと会っていなければ、ライラの腕前ならもう戻ってくるはずです」


 アリエスにはどういうわけか絶対的な自信があったようだ。

 その自信は、すぐさま証明されてしまう。


「あれ、アリエス様。どうしてこのような場所に」


「お待ちしていましたよ、ライラ」


「やれやれ、その様子では魔王軍の様子を話してくれということのようですね」


 ライラが頭をかきながらアリエスに話をしている。


「ちょっと待って下さいね。今回の討伐は早めに持って帰らないといけませんからね。時間が経ってしまうと、価値が落ちてしまいます」


 ライラが討伐してきたものの内容を見せつけてくる。その内容を見て、アリエスは納得していたようだった。


「分かりました。それではすぐさま報告をしてきて下さい。私はここで待っておりますのでね」


「承知致しました。では、できる限り早く戻ってきますので、しばしお待ち下さいませ」


 アリエスと約束をすると、ライラは依頼達成の報告のために傭兵ギルドに向かっていった。

 ライラが戻ってくるまでの間、アリエスは草むらの中に座り込んで待ち続ける。その間、ウサギやら蝶やらが集まってきて、アリエスと戯れ始めていた。


「本当に、アリエス様はいろんなものから好かれていますな」


「聖女というものはこういうものではないでしょうかね」


「いやいや、魔王時代からそうでしたよ。アリエス様の周りには常に多くの者が集ってきてましたからな。私といいライラといい、よくまとめ上げられたと思います。おそらく、前魔王様の魅力に勝てる存在はそうそういないと思いますよ」


「ふふっ、そうなのですね」


 サハーからの証言に、アリエスはついつい笑ってしまっていた。

 動物たちと戯れていると、ようやくライラが戻ってくる。


「お待たせいたしました。では、アリエス様の求める情報をお聞かせいたしましょう」


 辺りを見回して状況を確認したライラは、アリエスに対して魔王軍の現状を話し始めたのだった。

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