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幻想図書~orphic archive~  作者: No-Text
第一冊:白金の装飾が施された聖剣の表紙を持つ本
8/13

旅立ち(下)

 村を出てから数日が経った。相変わらず馬車に揺られているけれどあの村から王都までは確か結構な距離があったと思う。

「あの……御者さん、王都にはいつ頃つく予定なんですか?」

 仮にも王からの命令で来ている御者さんに慣れないながらも敬語でそう問いかけてみる。

「んー……早くて明日にはつくと思うッスよ~」

「そうですか、ありがとうございます」

「いやいや全然、三日も馬車に揺られてるッスもん、気になるのも仕方ないッスよ」

 軽い口調で緩そうな雰囲気の御者さんに礼を言うと俺はまた馬車の中に戻った。ここまでの三日間で起こったことと言えば弱めの魔物の襲撃くらいだった。

 俺は魔物を見たのはあの熊が初めてだったから魔物というのは滅多に出ないものだと思っていた。けれど、案外そうでもないらしい。

 といってもあの熊ほど強い魔物は稀だということはあの御者さんが襲撃してきた魔物をねじ伏せながら言っていた。

 御者さんがこんなに強いと初めて知った時は思わず皆こんなに強いのかと聞いてしまった。そのときは、「皆が皆ここまで強いわけじゃ無いッスよ~、僕はそれなりに訓練受けてるだけなんでぇ~」と何事も無かったかのようにナイフを懐に仕舞って荷台に狼型の魔物の群れの死体を積み込んでいた。

「そういえば勇者君~君に話しておくことがわりとあるんだけどさ~」

「なんですか?」

 しばらく馬車に揺られていると御者さんの方から声をかけられたので返事を返す。

「君の他にもあと三人、聖具の所有者がいるらしいッスよ~」

「……え?」

 聖具の所有者は珍しいと聞いていた。筈なのに、俺を含めて四人いる事実を聞かされて硬直する。

「……聖具の所有者はごく少数と聞いていたんですが……」

「うん、その認識で合ってるッスよ~だけど今回四人集まってるのは予言が原因ッスねぇ」

「予言?」

 四人も聖具の所有者が集まっているのには予言と言われているものが関係しているんだとか。

「『近い未来、クレデルトに災禍が訪れる……四つの希望が集まればその災禍を打ち果たすことができるだろう』だったかな?まぁそんな感じの予言が出たらしくてッスね、流石の王様もこれはまずいってことで恐らく希望のことを指しているであろう勇者を集めたってわけらしいッスよ」

「そうだったんですか……」

 だからあの惨劇の後すぐに召集命令がかかったのかと俺は納得した。いつ何がくるか分からない状態で運命を繋ぎ止める力を持つと言われている勇者を集めるのはそこまで違和感は感じない。ただ……

「よくそこまでの数の勇者を集められましたね」

「王様も結構頑張ったんじゃないッスかね?幸い勇者が出たって話がここ最近で急に増えたからその影響もあるのかも……まぁでも普通にデマが流れてたりするからしっかりと確認してから召集になるッスけどねぇ~」

「あの、俺以外の勇者ってどんな人達なんですか?」

 俺以外の勇者に興味が湧いたため御者さんに俺以外の勇者のことを聞いてみることにした。

 どんな経緯で勇者になったのか、どんな人達なのか……興味があった。

「んー……一人は君くらいの年の少女ッスね、んでもう一人は君よりは年上の青年で、最後の一人は厳つい女戦士ッス……確か少女ちゃんは教会にある聖具に選ばれて、青年君は魔導学校で、女戦士さんは武闘大会の優勝トロフィーとして貰って選ばれたらしいッスよ」

「……ん?」

 最後の方だけおかしかったような気がする。聖具って優勝トロフィーみたいな扱い受けたりするの?

「あの……聖具って貴重なんじゃ……優勝賞品みたいな扱いで良いんですか……?」

「うーん……聖具って謎が多いんスよねぇ……聞く話によるとその辺の市場で投げ売りされてた武器を手に取ったら偶々本物の聖具だったなんて話も稀ッスけど聞きますし」

 俺の中で聖具への認識が改まった瞬間だった、多分聖具は各々人格があってそれぞれが一番選びやすい形を取ってるのかもしれない。

 とんでもないな聖具……。


 そうこうしているうちに日は沈んでいき翌日の昼頃、王都の大門を潜ることになった。

 道中で御者さんと色々話していくうちにそれなりに仲良くなった。多分、あの御者さんの武器は誰とでも打ち解けられることなんだろうなと思った。

◇複数人の勇者

 勇者という存在は、この世界では仮になれたとしても一人でなんでもかんでも出来るようになるという訳ではないらしいよ。

 基礎的なところはあまり変わらないからむしろ勇者になってからの方が期待の分プレッシャーで色々とやりずらくなるんじゃないかなって僕は思うな。

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