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幻想図書~orphic archive~  作者: No-Text
第一冊:白金の装飾が施された聖剣の表紙を持つ本
7/13

旅立ち(上)

 気が付くと知らない天井が目の前に広がっていた、あの熊を討伐した後俺は倒れてそのまま意識を失っていたらしい。

「よう、気が付いたかボウズ」

「ヴィオさん……」

 未だに気怠い身体を起こしながらお見舞いに来ていたらしいヴィオさんに話しかける。

「みんなは……」

「ギリギリ半数……居るか居ないかぐらいか」

「……」

 それなりに交流があった人達だったのもあって心の奥を針で刺されたような気分になる。

 ヴィオさんからは。あの後避難してきた村に俺を運んでくれたらしいこと、あの惨劇から既に数日経っていること、あの熊は間違いなく俺の手で殺したこと、他にも俺の眠っている間の細々とした話を聞かせてくれた。

「とまぁこのぐらいか……そしてボウズ、お前に聞きたいことがある」

「……うん」

「あの剣はどこで見つけたんだ?」

 やっぱりというかなんというか……ヴィオさんは俺が森から持ち帰った剣について聞いてきた。

「あれは盗んだとかじゃなくて……森で拾ったんだ」

「……そうか、いいかボウズ?あれは聖具だ」

「……あの剣が?」

 そんな御伽噺の勇者の武器みたいな特別なものなのかと俺は驚いた。確かに、ただの剣じゃないことは俺でもわかったけどそんなに凄いものなのかと。

「ボウズが眠っている間に調べたんだが……この鍔の部分にある紋章、これは聖具であることを示すもんだ」

 ヴィオさんはあの剣の鍔の部分に施された紋章を指しながらそう言った。

「お前はどうやらこいつに選ばれたらしいな……夢への第一歩だ、胸張れよ」

「……ありがとう」

 俺には笑って肩を叩くヴィオさんにそう返答することしか出来なかった。長いこと夢見てきたものが手の届きそうなところにある、そう思うだけで他のことは耳に入らなくなった。

「まぁしかし、その聖具……さしずめ聖剣か……凄まじい防御性能と強化だった」

「ってことはやっぱりあの光の膜は……」

「あぁ、その聖剣から全て放たれていた」

 聖具にはそれぞれ願いを叶えるための一助となる凄まじい力が籠っているらしい。

 聖具全てに共通して存在する逆境を乗り越える力、そしてそれぞれの聖具の願いに由来する力、その両方を使って人々の願いを叶えるのが聖具の本来のあり方なんだそうな。

「でもこの剣の権能がわからなきゃ使い方もわからないよ?」

「無意識に出来たなら意識してやることも出来るはず、とりあえずそう考えて練習するしかねぇな」

 魔法はからっきしだけれどなんとかするしかないのかもしれない。それに、あの力が使いこなせれば目の前で大切なものを壊されることもなくなるだろうから。

「あと、起きて早々で悪いんだが国のお偉いさんからボウズに王都に来るようにって召集がかかってる」

「え?なんでこんな辺鄙な村の子供なんかに……」

「聖具に選ばれたってことはそれだけ珍しくて凄いことなんだよ、象徴としては丁度良いし純粋に強いからな」

 確かにあの時俺だけの力ではあの熊に勝つのは不可能だった、それでも勝てたのはこの聖剣が力を発揮したからなんだろうな。

「準備しろ、迎えの馬車が来るらしいからしっかりした身なりでな……仮にも村の英雄なんだ、俺も他の村人も感謝してたぜ」

「……わかった、俺行くよ」

「お前が何を願ってその聖剣を振るうにしても自分を忘れるなよ、軸がブレたもんはなんであれ容易に崩れるからな」

「ありがとうヴィオさん」


 そんなやり取りから数日経って、俺は完全に傷も回復して相応の準備を終える。

 馬車に乗り込むためにドアを開けると様々な人が俺を送り出すために集まってくれた。各々が送り出しの言葉を俺にかけてくれて俺はなんだか寂しいような嬉しいような……そんな気分になった。

 俺は今ある平和を守るために聖剣を振るう、そう改めて決意を固めて馬車に乗り込もうとした時、ヴィオさんから何かを渡された。

「あの熊から取れた毛皮で作ったコートとあの熊の魔包石だ、持っていけ」

「……ありがとう」

 大層なものを貰ってしまったがそのコートはかなり着心地がよかった。

 段々と小さくなっていく村に後ろ髪を引かれるような思いをしながらも俺は今後の心配ごとにどう対処するかを考え始める。



旅はまだ、始まったばかりだ。

◇魔性物の素材

 魔性物はその凶暴性の高さや被害の甚大さだけでなく、素材を目的に討伐されることもあるらしいよ。

 なんでもかなり価値が高くてなおかつ優秀な素材になるらしいよ、夢が広がるよね。

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