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幻想図書~orphic archive~  作者: No-Text
第一冊:白金の装飾が施された聖剣の表紙を持つ本
3/13

御伽の勇者(上)

 先ずは勇者一行を語る上で非常に深く関係してくる勇者そのものとその所以について。そして、勇者一行の代まで語られていた勇者の伝承について語ることにしよう。


 勇者は願いを叶える者、人々の希望……そのような呼ばれ方もされ、実際にそれを実現するだけの強大な力を有する。

 勇者は聖具と呼ばれるそれに選ばれた者達の総称であり称号のひとつである。

 聖具には必ず特殊な魔力を発する碧い宝石が嵌め込まれておりそれを中心に八芒星の紋章が装飾として施されている。

 聖具は強力である反面それを扱うのが人であるため文字通り人を選ぶ。

 聖具は人々の願いの結晶でありそれを叶える力を持つ……その力を正しく、かつ願いを実現しうる者を聖具は選ぶと伝えられている。


 勇者についてというよりはほとんど聖具についての説明になってしまったが噛み砕いて言えば人々の願いを叶える力を持つものに選ばれた者達が勇者である。

 その強力さ故に魔が差す者も居るのだが……その話については後に語るとしよう。


 続いて話すのは勇者一行の時代に伝わっていたかつての勇者の話であり私の国の創設にも関わる伝承を抜粋したものだ。


 その昔……その大地は荒れ果て魔物が跋扈する不毛の土地であった。

 凶悪な魔物も多くその土地には小さな村がまばらに存在するだけであり、大きな町を作れるほど発展させられる余力はなかった。

 そんな不毛の土地に一人の旅人が訪れこう言った。

「この地に国を興したい」

 ボロボロのローブに必要最低限の装備と荷物の旅人。しかし、そんな中で一際目を引くのは背にあった旅人の背丈ほどの見事な槍。

 人々は彼のことを疑った……「いきなりここへ来た余所者が一体何を言うのか」と。

 人々は彼の言ったことを嘲った……「こんな不毛の大地に国など興せるわけがない」と。

 その旅人ははじめて訪れた村にその話をしてから周囲の村にまで立ち寄り同じようなことを話して回った。

 無論、どの村も余所者の世迷い言だと旅人をまるで相手にしなかった。

 そんな中でも旅人は折れずに国を興すためにこの地に蔓延る問題と周囲の村々の問題を解決して回った。

 やがてその地の人々は旅人の熱意に感化されあの旅人ならばあるいは……と微かな希望を持ち始めた。

 しかし、そんな希望を打ち砕くほどの災禍が旅人達に迫っていた。

 その息吹は容易く村々を消し去る……

 その爪は如何なる巨石も引き裂く……

 その牙は如何なる獲物も噛み砕く……

 その翼は何処までも高く飛翔する……

故に空の竜(エル・ウート)……飛竜(エルト)と呼ばれるその魔物がこの地を不毛の地たらしめている元凶であった。

 かの竜は気まぐれに人里に下り瘴気を撒き散らし人や動物を襲って回っていた。

 かの竜を討伐することこそ国を興すための第一歩であると考えた旅人は村々の中でも勇敢な者達を少数集めその竜を討伐するためかの竜を追ってその根城へと向かった。

 かの竜は村人達が瘴気の洞窟と呼ぶ場所を根城にしており並大抵の者ではとても近付くことが出来ない。

 しかし、旅人は槍に炎を纏わせ瘴気を焼き払い道を切り開いた。

 そしてかの竜と相対した旅人は槍を掲げ声高らかに叫んだ。

「勝利は我らにあり!!この地を解放するぞ!」

 叫ぶと同時に旅人の周囲から炎が舞い上がり村人達の装備を包むように広がった。

 それと同時に竜が雄叫びを上げ竜狩りは始まった。

 その翼は洞窟に阻まれ羽ばたくこと叶わず、その牙は獲物を捉えることが出来ず、その爪は村人達によって満足に振るうことができなくなり、そしてその息吹は革命の炎によってその力を見せつける前に竜は地に伏せた。

 こうして旅人と勇敢な村人達は竜を打ち倒し荒れ果てた土地を開拓、やがて大国と呼ばれる程にまで発展していくこととなる。

 旅人は王となり勇敢な村人達はそれぞれの村に帰りそこを己が領地として王から下賜されることとなった。

 そして、人々はかの旅人を勇者と呼んだ……かの勇者が居なければ為し得なかったであろう竜狩りはこの地に確かな爪痕を残した。

 故にかの地に興された国は飛竜を狩る者(クレ・ド・エルト)クレデルト王国(竜狩りの王国)と呼ばれた。


 これがクレデルト王国建国の伝承であり今となっては実際に起きたことなのか本当はもっと別の何かなのかは知る術のない御伽の勇者の話である。

◇勇者

 "勇者"はこの物語の主軸となる存在だね……人々の願いを聞き届けその力を手に人々の希望となる象徴的な存在。それが一般に語られる"勇者"という存在らしいよ、勇者にはそれぞれが勇者としての象徴となる武具や道具を所持しているらしいね。

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