四聖人(下)
クレデルト陛下との謁見を済ませた後、ゼラスさんに案内されて別の部屋に案内された。
中はそれなりに広くて中央に大きめのテーブルとそれを取り囲むように椅子が置かれている、俺が部屋に来る頃には既に二人の勇者が適当な椅子に腰かけていた。
「こちらでお待ち下さい」
ゼラスさんはそれだけ言うと部屋から出て最後の一人を呼びに行ってしまった、リエナともう一人……なんだか血色の良くない顔色で細く背の高そうな男性が一人。
「えーと……こんにちは?」
何も声をかけないのも気まずいのでその男性に声をかける。この部屋に呼ばれた目的は顔合わせだ、それならこの人も勇者ってことになるけど戦えるのかなこの人……?
「……あ、はい……こんにちは……」
声をかけられて驚いたのか辿々しく返答をする男性、人と話すのが苦手なのかな?それなら無理に会話する必要はないけれど顔合わせである都合上名前くらいは聞いておきたい。
「俺はアリウスです、そっちの名前を教えてくれますか?」
「……レクト……グリーヴァです……」
「グリーヴァさんですね、よろしくお願いします」
「はぃ……」
名前は教えてくれたけどめちゃくちゃ頑張って話してたっぽい、ちゃんと話せないと結構危ない場面が出てきそうだけど大丈夫かな?
これからグリーヴァさんが話せるようになってくれることを祈っておこう、それはそれとしてあの人家名があるってことは貴族なのかな?
「あの、アリウスさん……」
「ん?あぁリエナ、さっき振りだね」
「はい……アリウスさん、グリーヴァ様のこと知らないんですか?」
「え?有名な人?」
色々考えている間にリエナが声をかけてきた、グリーヴァさんって有名な人なの?ぱっと見ただけだとそこまで目立ちたがるような人ではなさそうだけれど。
「いえ、グリーヴァ様というよりグリーヴァ様の家系がかなりの名門なんですよ」
「へぇ、知らなかった……なんの名門なんだ?」
「魔術です、グリーヴァ家は代々クレデルト王国の王宮魔術師なんですって」
まさかそこまで凄い家の人だとは思わなかった、あれ?もしかして俺とんでもなく失礼な態度取っていたんじゃ……?
「俺めっちゃ失礼な態度してたかもしれない……」
「……あのくらい、砕けた態度の方が……嬉しいよ……」
「「!?」」
俺もリエナも二人だけで会話していたせいで本人が目の前にいることを完全に忘れていた、それと同時に会話に割って入ることが出来る人なのかとも思ってしまった。
「僕は、王立魔術学園……ってところでずっと勉強ばっかり、だったから人と話すのが……苦手、だけど……迷惑はなるべくかけない、よ」
「グリーヴァさん……」
一つ気付いたことがある、この人めちゃくちゃ良い人だ……気遣い?っていうのが凄い。
「……自己紹介がまだでしたね、私はリエナと申します……よろしくお願いしますねグリーヴァ様」
「ぇへ……よろしくね、リエナさん……アリウスさん……」
歪に引き吊ったような笑顔ではあるけれどそれでも打ち解けることは出来そうで良かった。というかリエナはグリーヴァさんにまだ自己紹介してなかったの……?
そうこうしている間に部屋の扉が開いた、そこから出てきたのは褐色肌で露出が多めのナイスバディなお姉さん……じゃなかった、謁見の間に居た勇者の最後の一人。
「ありゃ?アタシが最後かい?こりゃ残念だねぇ」
この国の人達は殆どが金髪で色白だ、僕もリエナも……グリーヴァさんは珍しく茶髪だけど色白なことに変わりはない。
けれど最後に入ってきたこのお姉さんは赤毛の髪に褐色の肌という、どちらかと言えば南の方で生活している人々の外見的な特徴を持っていた。
「アタシはヴィジャリ!よろしくね少年少女諸君!」
そう快活に笑うとお姉さんはその辺にあった椅子に腰を下ろした、中々凄い人が来たな……この国の人じゃなさそうだけれどどうやってここに来たんだろう?
「闘技場での戦いはそろそろ飽きてたから久しぶりの迷宮攻略でわくわくするねぇ!」
「一応迷宮攻略は明日ですけどね……」
「そんなことぁどうでも良いんだよ少年!楽しく行こうじゃないの!」
この人の元気についていけそうにない……俺も他の二人もそう思っているかもしれない。
一通り顔合わせと自己紹介が終わった俺達は一度自分達の部屋に戻って装備を貰い翌日迷宮攻略に乗り出すことにした。
◇聖杖と賢者
聖杖と呼ばれる聖具は王立魔術学園ってとこが管理しているらしい、学園を卒業する時に聖杖の祝福を貰うって名目で聖杖に触れる風習があるっぽいね。
今回はグリーヴァって人が聖杖に選ばれたみたいだね、聖杖に選ばれた勇者を学園では"賢者"って言うらしいよ。
……そういえばそういう風習がある場所で勇者が生まれたらその風習どうなるんだろうね?




