王都(下)
案内された部屋に荷物を置いた俺はその後王城から出てすぐの城下町に来ていた……石造りの家が立ち並び広場らしき所には井戸ではなく噴水がある。
目に入ってくる人々の姿は皆華やかでいかにも王都って感じがした。
これ部屋に着いた時にゼラスさんから渡された服が無かったら相当浮いてただろうな……。
「「この服貰っててよかった……」」
俺が呟くのと同時に隣からも一字一句同じ文を呟く声が聞こえた。
声の方を見てみれば向こうも驚いたのか俺の方を見て瞬きしている少女が立っていた……その少女は俺と同年代程度で純白に金の差し色と縁取りが施されたシスター服を付けている。それだけならまだ高位の神官かなにかだと思う程度に留まるだろうが、純白の服に合わせるように明るい色合いの革で作られたベルトを腰に巻きそこに金の杯を垂らしていた。
「あー……君も召集されてきた子?」
「ふぇ?」
しばらく呆けていた少女に声をかける。少女はその声に反応するように間の抜けた声をあげて返事をする、返事で良いんだよなこれ?
「君も……ってことはあなたも私と同じ?」
「あぁ、俺も勇者だよ」
段々状況が飲み込めてきたらしい、俺の格好は彼女ほど露骨じゃないから気付かなかったのかな……だけど俺がこの格好をしてる彼女に気付かなかったのはちょっと浮かれすぎてる。
「とりあえずゆっくり話せるところ探そう」
「そうですね……」
幸いその辺にベンチがあったのでそこに座って話をすることにした。
「自己紹介がまだでしたね、私はリエナです」
「俺はアリウス、腰から下げてるそれは聖具?」
「はい、聖杯と言います……なんでも癒しの力があるらしいのですけれど使えた試しがなくて……」
聖具の力を引き出せるようになるのも個人差があるのか、そうえばあの御者さん……ゼラスさんからはヨークと呼ばれていたっけな、その人がこの子は教会で聖具に選ばれたとか言ってたな。
「同年代だろうし呼び捨てで良いか?」
「はい、好きに呼んで下さい」
「ありがとう、リエナは教会のシスターなのか?」
「はい、教会でシスター見習いをしてました……ただ教会の成人の儀をする時に聖杯に選ばれちゃって……」
「それで今に至ると……」
「はい……」
思ってたよりも何倍も巻き込まれてなっちゃった感じだった、なんだか可哀想だなと思うと同時にこの子これから大丈夫なんだろうかと心配になる。
「勇者の力が使えないとなると召集した意味が無くなるから何かしら特訓でもするのかねぇ……」
「うぅ……痛いのは嫌です……あと怖いのも嫌です……」
俺よりも頭一つ分くらい小さいからか嫌なことを想像して震える姿に小動物の姿が重なって見える……いや本当にこの先大丈夫なのかこの子……?
「でも召集に応じなくてもよかったのになんで応じたんだ?」
実はヨークさんと初めて会った時この召集には無理に参加しなくても良いという説明を受けていた、俺は周りからの後押しと英雄になる夢が叶えられる可能性があったから参加したけれどリエナが参加した理由がわからない。
「王様からの召集が断りずらかったのもありますけれど……かみさまが参加した方がいいと言ってくれたんです」
「神様?」
「はい、私かみさまの声が聞こえるんです」
「なるほど……」
えっなに?いきなり変なこと言い出したんだけど?それとも宗教的なあれそれ?わからなすぎて反応に困る。
「……やっぱり変ですよね」
「……その神様とはいつでも会話できるのか?」
別に他意はない、ただ英雄に憧れてた頃の俺と重なって見えただけ……同情ってやつなのかもしれない。
でも誰からも信じて貰えないよりは誰か一人でも信じてやれるやつが居た方がいい気がした。
「いえ、必要な時にだけ声をかけてくれます」
「なるほどなぁ」
気分が沈んでいたリエナの顔が明るくなった、それから俺とリエナは他愛もない会話をした後別れてそれぞれの用事を済ませた。
にしても聖具って見境ねぇのかな、戦場とかに駆り出されたらわりと本気で死にかねないぞあの子……。
事前に貰っておいた資金で多分必要になるであろう道具を買って帰路につく、明日は謁見の日だから早く寝ておこう。
◇聖剣
今回の主人公が所有する聖具だね、剣の形をした聖具だから聖剣……安直だけどわかりやすくていいよね。
森の中で見つかった聖具のようだけど読んでみた感じ自然を操るって感じではなさそうだよね、守れって言っていたけれどそれが関係していたりするのかな?




