図書館
これはとある、異世界の物語を紡ぐ図書館に迷い混んだあなたに送る物語……
あなたは目が覚めると知らない場所に立っていた。
目の前には巨大で神秘的な木が存在し周囲を見渡せば巨大樹を中心として無数の本が詰め込まれた本棚が見えなくなるほどに遠くまで続いている……どうやらここは図書館らしい。それも、あなたが現実で知る中で一番大きな図書館よりも大きい。
「やっとお目覚めかい?」
ふと、あなたの前方から声が聞こえた。声のかけられた方に目をやると巨大樹の前にカウンターがありそこには人が座って悠々と本を読んでいた。
彼とも彼女とも言える声色、容姿を持ち若々しいが大人っぽくも見える。
髪色は黒いが一部色が抜け落ちたように白くなっている。
いまいち特徴が掴みずらいその人物はあなたがこちらに気がついたのを確認すると本を閉じてカウンターに備えつけられている小さな本棚に収納してにこやかにあなたへと話しかけ始めた。
「こんな見知らぬ場所にいきなり飛ばされて何がなんだかわからないって顔だね」
そう話しながらその人物はあなたに笑みを向ける。
あなたはぱっと思い付く疑問を幾つかその人物に投げ掛けてみることだろう。
"ここは一体どこ?"
「ここは図書館、君達の世界にもあるだろう……?それともこの図書館の場所がどこか知りたいのかな?そうだねぇ……言うなれば異世界の入り口とでも言っておこうか」
要領を得ない答えが返ってくる、なおも目の前の人物はにこやかに笑っている。
"君は誰?"
「私かい?私はただのここの管理人兼司書だよ、好きに呼んでくれて構わない」
どうやら自分の名前や身の上は話してくれないらしい。
"あの樹は何?"
「あぁあれかい?あれはまぁいわば御神木みたいなものさ、図書館に御神木があるのも中々おもしろいだろう?」
御神木と言われれば確かにそう見える。全体的に神々しい上に輝く果実が沢山実っている。
"この図書館はどういう場所?"
「そうだねぇ……見ての通りここは図書館……ただし、君たちの知る図書館とは少し違う……ここはね、君たちの世界とは異なる……いわば様々な異世界の書物を全て内包している。基本的には物語が中心だけどねぇ」
そうやってその人物は笑顔で話す。なるほど確かに、それならばこの広さなのも納得だろう。
"ここから出られる?"
「あぁ出られるとも、ここから離れたいと願うだけで良い……逆にここに来ることも容易だ、ここに来たいと願えば君たちは指先ひとつで来ることが出来る」
ピンと人差し指を立てながら不敵に笑いそう答えるその人物は続けるように話しかけてきた。
「その上で君たちに問おう……すぐにここから帰りこの場所のことなど忘れるか、それともこの図書館を自由に見て回るか……好きな方を選ばせてあげよう」
その人物は、穏やかな声色で静かに言うとカウンターに備えつけられている小さな本棚から一冊の本をあなたに手渡す。
「私にその本を突き返して帰っても良いよ……でも、もしも君たちがこの図書館の物語に興味があるのなら……」
私は君たちを歓迎しよう