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私の部活。


水曜日は私の大好きな生物の授業がある。しかも二時間続けて。やったー!っと、喜びたいところだが・・・なんせ、今年からいやな奴が担当の先生になってしまい・・・


「次の時間生物じゃ~ん。」

「やったね!華蓮の好きな生物じゃん!なんでテンション低いの?」

「・・・・・わかってるくせに。」


カンちゃんにわざとらしく言われ、余計にしずむ。人事だと思って楽しんでるよ。


「第二理科室にGO~!!」

「はぁ・・・。」


強引に腕を引っ張られ、理科室へと連れてかれた。

時は六月。ちょうど梅雨時で、じめじめむしむし・・。私の一番嫌いな季節。プリントに文字を記入すると、腕の汗で腕にプリントがくっつくのが嫌い。大嫌い!そしてあいつの妙に生き生きした顔をみると、


「余計にイライラするんだよ!」

「何を急に言い出すの!?びっくりするなぁ~。授業前からそんなんじゃ、今日はひどいね、きっと。」


私に突っ込みながら一人で納得してるし・・・。


今日の授業の題目は、「細胞膜の性質を理解する」。

赤タマネギを使い、各濃度におけるスクロース溶液中での原形質分離を観察する実験。


「赤たまねぎ使うぞ。赤たまねぎ。」


と言いながら、野球部のいがぐり坊主の頭をぐりぐり撫でる渋沢。


「俺は黒いですよ!」

「ん?日焼けしてんじゃねーか!赤い赤い。」


そのやり取りにクラスの皆が笑う。


「爆笑、赤あたまねぎ!」


隣のカンちゃんは馬鹿笑いしている。こいつの笑いのツボは、もう5年くらい付き合ってるけどよくわからん。ひとり無表情でいると・・・


「おい吉田~。暇そうだな。ちょっと手伝え。このプリント配っとけ」


ほら来た理不尽アタック。


「別に暇してたわけじゃないですよ!えぇ!?なんで私が?もっと自分と席が近い人に頼めばいいじゃないですか。」

「いやだ。だってお前今、またつまらんおやじギャグ言ってるよこいつ~って思ったろ」


今のはおやじギャグだったのか!?そう突っ込みたくもなる。


「思ってないですって。だっていつものことじゃないですか。そう思う心もなくなりました。」

「ほら思ってる~!これだから・・・」


そこでいがぐり坊主が、


「奴はいつも優しそうな顔して、裏で何を考えてるか全くわかんないですから・・気を付けたほうがいいっすよ。」


余計なことを・・


「まじか!おぉ、貴重な情報ありがとな。まったく、こわいねぇ~。それで何人の男を騙してきたのか・・・。」

「騙したことなんかねぇ~!!!野球部、お前は黙っとけ!!あんたは早く実験機材持ってきな~さい!!」


怒り狂い、敬語とタメ語がごっちゃに・・授業のたびにこんなことされたらたまったもんじゃない。いじられ役?いじめられ役なのか私は・・・・。





「派手に怒ったね~、今日は。前回のドイツ語喧嘩も驚いたけど・・・。今日もびつくり!あんたら変わってるわ。あと、凸凹コンビ!コントでもしてんのかってくらいトントン進んでく。」

「まさかあいつもドイツ語しゃべれるとは思わなかったなぁ・・。って、コントなんてしてないよ!何が凸凹コンビだよ。」


放課後、教室で雑談。いや、部活。


「許さんぞ!私以外の人とコンビを組むなんて!」

「・・・自分で言ったんだろ。」


くだらないことを話している横で、まじまじと私の顔を後輩が見てきたのでどうかしたのかと聞いてみる。するとこう言った。


「先輩、ドイツ語しゃべれるんですか?」


そういえばこの子には何も話していなかった。


「うん。しゃべれるよ。」

「カレンは独学で覚えたらしいよ。英語だけ喋れてもしょうがないって。」

「すげぇ…というか、英語だけでも十分だと思いますけど…」

「だめだよ!今の時代は三カ国語喋れなきゃ!ホントは中国語やりたかったけど…家にドイツ語の本があったからそれで勉強したんだ。」


へぇーっと二人が。カンちゃんにも言ってなかったことだ。


「なぜ家にドイツ語の本が?」

「うん。そこ不思議。」

「なんでだろ?私もよくわかんないけど…お母さんが大事に保管してたんだよ。」


何故だろう。何故母はあんなもの持っていたのだろう。亡くなった今は聞く術もない。ただ本当に大事そうに保管していたんだ。思いにふけていると、勢い良く教室のドアが開く。


「吉田!剣道場の前にカメムシがいっぱい死んでるんだ!手伝ってくれ~!」

「千崎君!カメムシが?」


  今日の任務はカメムシ処理。


「なんでうちらが・・・・剣道部でやれよ!」

「わりぃ。みんな気持ちわるがって・・。」

「気持ち悪いだと!!カメムシだって私たちと一緒、生き物だぞ!私はこの形が好きなのに・・。」

「・・それは華蓮だけだよ。虫とかホント好きだね。」

「わー緑だらけ!こんな光景はじめてみました。」


ほうきとちりとりを使い集める。なぜこんなに大量に・・。剣道場の臭いをかいで大量死してしまったのか!?


「本当にすまん!恩に着るよ。」

「いいよ、こういうことやるのがうちらの部活だし。」


いまふっと思ったけど・・変な部活だな。これ。


10分くらいで作業は終了。これで気負いなく剣道の稽古に打ち込めるだろう。


「きれいきれい。これでOKですね。」

「うん。みなさん、お疲れさまでした~。」

「ありがとうな。手伝ってくれて。助かったよ。」


ふ~っと安堵の息をつく千崎君。道場ではもう練習が始まっている。薄情な部員だな。


「しかしなんで他のやつは手伝わないんだ?無視かよ。」

「先輩たちは総体の県予選がもうすぐだから・・焦ってるのかも・・。」

「いや・・それにしても・・千崎君だって出場するんでしょ?条件一緒ジャン。」


そんなことを話していたら、3年の主将がこちらにやってきた。


「よう。ありがとよ。学生支援係りさん。おい仙崎!お前のせいで迷惑かけたんだぞ。まったく、お前はやることが鈍いんだよ。なのにレギュラー・・。ふざけたやつだぜ!お前は外でランニングでもしとけ!」


なになに、どうやらこれは・・いじめ?二年で早くもレギュラーになった千崎君に対しての・・。三年生は10人もいるもんなぁ・・・。

そう考えていて、カンちゃんのほうに目をやったら、何かを訴える目で見つめ返された。達也君のほうを向いても同じような反応だった。

さて、どう切り出そうか・・。そんなことを考えているうちに、仙崎君は暗い顔をして、外に向かおうとしていた。私は仙崎君の手をつかみ引きとめた。そして、、


「部長さん。県予選はもうすぐなんですよね?調整は順調ですか?」

「お、おう。順調だぞ?それがどうした。」

「へぇ・・。レギュラーに、竹刀も握らせずに、順調とはたいしたものですな。」


部長の顔が引きつった。


「何が言いたい!掃除が終わったなら早く帰れ!この雑用が!」


今度は私の顔が引きつる。


「雑用じゃない!私たちは、学生支援・”環境”係りだ!!この校内に傷がついていたなら、この学校の生徒に困ってる人がいたなら、部内でくだらないいじめがあったなら、いつでもどこでもすっ飛んで、応援しに、改善しに行くのが私たちの部活だ!!!あんた達の様に部員としての誇りもなく、ただ棒を振って遊んで、後輩いじめてる部活と違って、部員としての誇りを持って、日々考えながら活動をしている!」


私が、ふーん!っと胸を張る。そんなことでいじめに発展するなんて、武道家たるものあっていいものか!!!


「この部の環境に異常があると判断いたしました。」

「改善させていただきます。」


そして二人が続いた。3人でまるで台詞分けでもしてあったかのように言い返す。すると、うろたえた様子で部長は言う。


「頼んでねえぞ!」


そしてまた私は言い返す。


「はい。頼まれてませんよ。」



その後、3年全員に私からのお説教。口答えしたやつにはアイアンクローをお見舞い。(こめかみを手でぎゅーっとするやつ。もちろん面ははずして)そんなことしている間に剣道部顧問が登場。事情を説明し引き継ぎ、現在やつらがどうなっているのかわからない。あの先生は怖いからなぁ~。無事であることを祈ろう。


 

 

  帰り道、3人でアイスを買い、近くの公園で雑談。


「なーんか今日はじめじめしてるけど、気分はすっきりした!」


カンちゃんが言う。


「ええ。ぼくも。ツバメ先輩がああもガツガツ言ってくれると・・・」

「つばめいうな!そんなにがつがついってたか?抑えたつもりだけど・・」

「「全然抑えてない。」」


二人に声をそろえて言われた。そうかなぁ~っと頭をかいていると、達也君が聞いてきた。


「突然なんですが・・、お二人は、なぜこの部活を作ったんですか?」


急な質問に言葉が詰まる。そしてカンちゃんが答える。


「花蓮がさ、中学校のときから言ってたんだよ。高校に行ったら、こういう部活作るんだーって。だから一緒にやらないかって。」


そんなことを言っていた気がする。なぜそう思ったんですかと問い詰められる。そして自然と言葉が出てきた。


「人のためになることがやりたかったんだ。ほら、たいていの部活って自分が勝つためにとか、うまくなるためにとかそういう理由で頑張ることが多いでしょ?そうじゃなくて、もっと周りのためになることをやりたいって思ったんだ。そのほうが頑張れるから。まぁ、人のためにっていっても、結局は自己満足だけどね。でも、人にも喜んでもらえて、自分も嬉しくなるんだったら、そっちのほうがいいから。」


言い切って、とってもすっきりした。そうなんだよ。これが初心なんだよね。いくらくだらないことをやっていたって、それを忘れなきゃそれでいい。逆に迷惑をかけることもあるかもしれないけど、その時はその時なんだろう。・・・今回は、むかついた腹いせのようになってしまったかもしれないが・・。


「なるほど。その考え方には、僕も賛成です。」


納得したように達也君が言う。その言葉を聴いて嬉しくなった。


「じゃあさ、なんで達也君はこの部に入ろうと思ったの?」


カンちゃんが、私も聞きたかったことを聞いてくれた。


「僕ですか?僕は・・・中学ではパソコン部に入ってたんですが、高校にはなくて。ですから、部活は入らなくていいやーって思ってたんですが、あの始業式の先輩たちを見て、、」


私たち二人は苦笑いする。


「あの行動は、部活の内容だったってほかの先輩から聞いたので、面白いなぁとおもって除きに行ったんです。まさか入るとは思ってませんでした。」

「そうか!私たちが無理やり入れたのか!」

「そうですよ!仕方なく入ったんです!」


3人で爆笑する。そこまで面白くもないのに。


人のために何かするって、誰に教わったわけでもないけど、何でそんなことやっているのだろう。医者だった、顔も浮かばない父を思い出す。あんたとは何の関係も無いと、内心つぶやいた。


そして、何か考えようとしていたことも思い出せず、この一日は終わった。


剣道場の前がカメムシだらけ・・・。私は中学で剣道部だったのですが、これは実体験です(笑)。今日も稽古がんばるぞ~!って張り切って剣道場に向かったら、なんとその前の渡り廊下はカメムシだらけ。稽古を始める前にみんなでお掃除。

 それ以外にも、落ち葉や砂。春には黄砂で廊下がマッキッキ!台風の次の日はいつでもひどいものでした(笑)。

こんないじめは高校に入ってから。友達が受けてました。こんな風に助けてあげればよかったかなぁ・・・。

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