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辺獄から来た記憶たち  作者: けにまる
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第一章第二話 考察と探索

血の匂いがする。


広い部屋の中で、五人の男が血の上に倒れている。


そして、唯一まだ立っている男は正面から心臓を刺され、六人目になった。


彼を刺したのは一人の少女。


少女は倒れた男の体からナイフを引き出し、今度は男の喉に刺した。


反応がない、すでに屍だからだ。


「......ターゲットの死亡を確認、任務完了、これより脱出する」


「了解、脱出は4番ルートを使え」


少女は手や服についたまだ暖かい返り血に目もくれず、


と思いきや、やはり汚いと思ったらしく、


トイレの洗面所で返り血を落としてから、闇の中に消え去った。



..........................


目が覚めた。

日はまだ昇っていない、

体が寒い、

疲労回復は全くできていない......


さっき見たのは、夢?

......にしては鮮明すぎる。


それに、知っている気がする、

少女はどのような方法で男たちを倒したのかを。


そして、体が覚えている気がする、

その倒し方、いや、殺し方を。

もしかして、私は......


断定するのはまだ早い。


もう一回眠れる気がしないから、

日が昇るまで自分が何者かについて推測してみよう。


手がかりその一、

私はサバイバル知識を持っている。


その二、

制服と思われる服を着ている。


その三、

服には「A1」という番号が書かれている。


あとは、そうだな、

不確かなものではあるが、

さっきの妙にリアルな夢も一応手がかりとしてカウントしよう。


その四、

殺しの経験あり(真偽不明)。


以上の特徴に当てはまるのは、

職業軍人、レジスタンス、テロリスト......


違うな、レジスタンスとテロリストは番号の付いた服なんて着るわけがない。

となると、残る可能性は軍人一つか。


いや、待ってよ、

こういう噂を聞いたことがある。

オタクという人種に関する噂だ。

その噂によると、

大多数のオタクは想像力が豊かで幅広い知識を有している。


想像力が豊か、つまり妄想が得意。

もしさっきの夢はただ私の妄想の産物だったら、

オタクも全ての特徴に当てはまる。


そうだ、もう一つ手がかりがある。

私自身のことだ。


この体は筋量が少なすぎる、

とても軍人の体とは思えない。

つまり私が軍人である可能性は極めて低い。


また、オタクも軍人と同じ、

規律を大事にすると聞く。

この服も「A1」という番号も恐らく、

自分を管理するためのものだろ。


ふむ、納得できる答えが出たな、

どうやら私はオタクらしい。


オタクなのに、

オタクについてあんまり詳しくないのはきっと記憶喪失の影響だ。


気付いたら日も昇り始めたようだし、

そろそろシェルターから出て、

出発しよう。


「ふう......」


温度はシェルターの中と大して変わらないな。

確認したところ、

シェルター周辺の変化は特にない。

寝てる間に、

動物に襲われていないのはラッキーだった。


それでは予定通り、

下流の方向へ進もう。

それと、食料の調達も必要だ。


さて、持ち物はどうする?

この辺の湿度は山の上より大分高いらしい、

昨日着火剤として拾ったものはもう使い物にならない。

石ナイフと余った紐だけを持って、出発するか。


......


川を沿って移動するとはいえ、

ここは密林の中、

障害物を避けながら進むのはかなり体力を使う。


その上、密林の環境は人の時間感覚を狂わせる。

いつの間にか太陽は既にほぼ真上まで来ている。

なのに、周りの風景は何一つ変わってない、ずっと森だ。

昨日と合わせて、

私はどれくらいの距離を移動しただろ?

木や草叢が邪魔で、

さほど進んでいない気もする。


その前に、

そもそも移動する意味ってあるのか?

ここは地球ではない、

少なくとも私の知っている地球ではない。

この星に果たして文明は存在しているのだろうか?


人間がいないと、

いくら探しても意味はない。


例え他の知的生命体が存在していても、

必ずしも友好的とは限らない、

地球人が取れるコミュニケーション方法が全く通用しない可能性だってある。

今やっていることはすべて徒労かもしれない。


「......」


諦めるのはまだ早いが、

一応探索の期限を設けておいたほうがいいな。

もし期間内に、人間や他の知的生命体を見つけることが出来なかったら、

今回の探索は一旦中止して、本格的なサバイバル生活を始めよう。


しかし、この星は本当に地球と似ている。

もちろん根拠があるわけではないが、

重力も地球と変わらない気がする。

それに、呼吸も特に問題ない、

大気の成分も地球と似ている可能性が高い。

加えて水と生命まで存在している。

まさに奇跡の惑星だ。


「!!」


この星の考察をしていたら、

野生の果物を見つけた。

この一面の緑に他の色は目立つから、

直ぐに気づいた。


私はその果物を謎の植物から摘み取り、

観察を始めた。

見た目はトマトに似ているが、

皮には黄色の縞模様がついている。


噂に聞くオムライスと同じ配色だ。

もしかしてこれがオムライスの原材料なのか?

とりあえずオムライスフルーツと名付けよう。


それでは、オムライスフルーツが食用可能かどうかを検証してみる。


方法は簡単だ。

オムライスフルーツから果汁を搾り出し、

皮膚の上に塗る。

そして、少しの時間を待つ......


「............」


痛い、

果汁を塗った手の甲の皮膚が赤くなっている。


これは恐らく毒があるな、

オムライスフルーツをこのまま口に入れるのは危険だ。

調理すれば食べられるかもしれないが、

仕方ない、オムライスフルーツを捨てて、

川の水で手に塗った果汁を落とそう。


分かりやすい果物以外、

根菜を探して食べるのも手の一つだが、

地面を掘るのは体力の消耗が激しいため、

知識なしの状態ではそれができない。


動物を狩るのは......ないか。

石ナイフ一本でこの星の生物に勝てるヴィジョンが見えない。


私にこの星の知識を少しでも有していれば……


とにかく、このままではまずい。

ここは方向性を変え、

一度川沿いから離れ、

森の奥まで行って、

食べられそうなものを探してみよう。


......


森の中で体感30分ほど探し回った。

見つけたのは、

怪しげなレインボーオーラを発するキノコだけだ。

あんなものはさすがに食べられないだろうから、

実質、結果は収穫なしだ。


それにしても、

今日は他の生物に一回も遭遇していない。

さすがに不自然だ。

嫌な予感がする。


そろそろ川沿いに戻って......


キーン!


自然界に存在しないはずの金属音が聞こえた。

激しい衝撃音だ。

人為的なものとしか思えない。


これは知的生命体を見つかるチャンス、

急いで確認しに行こう。


だけど警戒は必要だ。

金属を持っている時点で、

相手の装備は間違いなくこっちのものより強い。


カキーン、キーン......


音が近い、

陰に隠れて進もう......


「何でこんなところに!」


人の声、しかも理解できる言葉だ。

音の方向は......右側の崖の下か。


「......」


このまま崖の方に行ったら、

先に相手に発見される可能性が高い。


なので、私は崖の手前で腹這いで草叢に入り、

その中から崖下の状況を確認することにした。


崖はそんなに高くない、

下まで2〜3メートルといったところだ。

それで、声の持ち主は......

いた、しかも一人だけじゃない、三人もいる。


良かった、この星にも人間がいる。

しかし、あの人たち、

体の形こそ人間と同じだが、

問題は彼ら全員、

私の知っている人間とは少し違うようだ。


具体的に言うと、

三人とも頭から角が生えている。

牛のような角が生えているのが一人、

鹿のような角が生えているのが二人。

三人共、見た目は男だ。

いや、この場合、オスというべきか?


服装から判断すると牛男は戦士だ。

上半身には鎧を着ていて、

左手には小型の盾、両足には防具が付いている。

武器の方は斧と剣を装備している。



まるで中世の戦士っと言いたいところだが、

斧のサイズがおかしい、

その長さは身長が明らかに2メートルを超えている牛男と同じ、

もしくはそれ以上だ。


素材にもよるが、

その感じだと重さは60キロを超えてるだろ。

絶対人間が振り回せるような武器ではない。


だけど牛男はそれを片手で持っている。

とんでもない力持ちだ。


力持ちと言えば、

残りの鹿男二人も負けていない。

二人共、ワゴン車並みの巨大な箱を背負っているからだ。

防具の類を装備していない点から考えると、

二人は恐らく荷運び役だろ。


鹿男二人も牛男と同じ、

中世風の服を着ているが、

よく見ると、

私が知っている中世の服と少し違う。

デザインが複雑で、余計なパーツが多い。


このようなデザイン......

見たことがある気がする。

確か、「ふぁんたじい」っていうものだ!


察するに、

「ふぁんたじい」というのは、

実用性の低いデザインのことだろ。


サバイバル知識のことといい、

記憶はほとんど覚えてないのに、

地球のことやこういう変な知識は覚えている。

記憶喪失というのは本当にこんな感じのものなのか?

何かに引っかかるな。


まぁ、話を戻そう、

あの三人が今何をしているかというと.....


そうだな.....

彼らは殺意が明らかに高めの獣たちと対峙している。


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