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愛犬と行く怠惰な異世界スローライフ  作者: レーザーらいおんマン
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異世界組②

最初に異変に気付いたのはシオンだった。

その類稀な肉眼が、わずか数cm動いた森の木々を捉えたのだ。

一瞬固まり、直ぐに思考が澱みなくまとまり始める。

森の動きはゆっくり、しかし木の枝だけじゃなくて幹自体が揺れているところから見て現況がそう遠いとは思えない。


「隼さん!森からなにか向かってきてます!!」

「っ!? 直ぐに集合してくれ!」

『?分かったわ!』


瞬時に隼に頼るシオンと、全員を集めるため草むらの中で背の低いところに移動し目立つところで大声を出す隼。

その判断は正しかった、直ぐに隼を見つけたシオンとアンコは森の警戒を強めている。

背の高い草だとシオンはともかく体の小さいアンコには草しか見えなくて見つけられなかっただろう。

、、、警戒する2人と1匹の目に、少しずつその全貌が見え始める。

2m半はありそうな巨大な体躯、二足歩行で歩いているらしくその存在は片腕に巨大な木刀のようなものを持っているらしい。

頭は森の影でまだ見えないが、その体に纏う筋肉の厚みを観るだけでその体が持つエネルギーが想像できてしまう。

丸太よりも太い腕で丸太みたいに太い木刀を握り歩くその威圧的な姿に血の気が引いているシオン。

仕方ないだろう、平和な世界を抜けてまだ4日しか経っていない、幸いまだ殺生とゆうのを経験していないのだ。


「ブモッ! ブモォオオオオオーーーーーー!!!!!」


巨大なソレは影が薄れて見え始めた豚のような鼻をクンクンと動かし、そして何かに気付き雄叫びを上げた。


「ひっ、、隼さん、!」

「大丈夫、シオンは下がっててね? アンコ、戦える?」

『ええ!任せてちょうだい!』

「よし、いい返事だ。 時間が無いから特技だけ手短に教えてくれないか?」

『ふん?そうねぇ、身体能力は速度特化らしいわ? 囮は出来ると思う。 でもそれだけ、攻撃力は無いわ。 アタシは雷の魔法が得意なの。 アンナが言うにはレベル8くらいの雷魔法までなら使えるらしいわ』

「ははっ!上々だな! よし、じゃあアンコは油断してる今のうちに最大出力をぶちかましてやってくれ。 大丈夫だ、森が燃えても僕が後で消せる!」

『わかったわ! んんんーー!! 黒雷ッ!!!』


その名前に目を丸くして振り向いた隼、隼の目にはアンコの角に黒光りする雷が集まり「バチッバチッ」とかなり印象に残りそうな音を鳴らして弾けているのが見える。

その光に違和感を覚えたのだろう、巨大な何かが隼達の方を見ようとした瞬間、、


「ズドオオオオォォォオオオオオン!!!」


強烈な破壊音と共に巨大な何かが出てきた木を数本消し飛ばしながら黒い落雷が黒い何かに落ちた。

不思議なことに発火などは無く、ただその威力で消し飛んだだけだった。

当の巨体はと探してみると土煙の中、もはや阻むものの無くなった極小さなクレーターの中を歩いているのが薄く見える。

ダメージの有無までは判断できないが、その存在がなんなのか隼は察しが着いてきていた。


「オークか、おおかたシオンの匂いにつられて出てきたんだろうな」

「オーク、私捕まったらどうなっちゃうの、、?」

「考えない方がいい。 さっ!僕が何とかするからシオンは逃げた方がいい!」

「ううん、! 私も戦うよ!当たり前でしょ、!」

「、、大丈夫か、? なら頼らせてもらおう、遠距離攻撃は任せた、!」


小刻みに震えてはいるものの杖を構えて宣言したシオンの目は強い意思で輝いてるように見えた。

その姿に小さく頷くと言葉を置いて土煙の方に全速力で入り出す隼。

実際、どれだけ全力で走ってもアンコは逃げ切れるかもしれないがオークとの1m無いくらいの体格差で逃げたところで隼もシオンも逃げることは出来なかっただろう。

この時点で戦う以外の選択肢は無かったのだ。

1m、10m、60mほど走ったところで、ちょうど土煙から抜け出してきた巨体、オークと目が合う距離に入った。

しっかり見ればよく分かる、この存在がしっかり生物なのだと。

野性的で欲望にまみれた目、荒削りだが殺傷力を知能が低いなりに上げたのだろうそこそこ鋭利な木刀。

強烈な電撃を受けたせいだろう、口からは僅かに泡のようなヨダレを垂らしている。

体のあちこちに焦げた跡があり、所々皮が吹き飛び中の肉が香ばしい匂いをさせている。

隼との距離、20m、そこからでもオークの野性的な体臭がツンと鼻をつき顔をしかめる隼。


「スゥーーーー、、ふっ!!!」

「ブモォッ?ブモォ!ブモォオオオー!」


深呼吸、そして気合一閃走り出す隼。

反応して雄叫びを上げ走り出すオーク。

隼はナイフを逆手に構え衝突の瞬間に備えている。

残り5m、オークが行動を起こす。

走りながら木刀を振り上げハチ裂けそうな程膨れ上がった筋肉の思う様、一直線に振り下ろした。

それを見て右に飛ぶ隼。

すんでのところを通り過ぎた木刀は深く地面を抉って土煙を上げる。

避けた勢いでそのまま前に飛び出した隼が逆手に持ったナイフをオークのがら空きの脇腹にぶっ刺そうと迫る。

地面を砕いて状態が不安定になっているオークには対処出来ず、そのナイフはオークの皮膚に到達し、、、


「んなっ!?」

「ブモッ!!」


薄皮1枚でナイフは止まってしまった。

驚いて飛びのこうとした隼にオークの足蹴が飛ぶ。

ナイフが刺さらず動揺していた隼は反応しきることが出来ずギリギリで脇腹に膝を食らってしまった。

「メキメキッ」とゆう鈍い音を上げて1mほど飛ばされる隼。


「ヒューー、ハァーー、、ごほっ、ごほっ、、あー、やばいなコレ、折れては無さそうなのが幸いか? 8本はヒビ入ってるぞこれ、、、よし、頑張ろ」

「ブモ?」


ピョンッと飛び上がって着地した隼の軽々とした動きに不思議そうに首を傾げるオーク。

それはそうだろう、オークにしてもかなり致命的なダメージを負わせたと確信していたのだから。

オークの過失は1つ、はやとが訓練してきた環境についてだけだ。

毎日どこかしらの骨がひび割れるような生活だ、特に空手の日は地獄だったろう。

ただ打たれるだけの日々、憂さ晴らしかとゆうほど一方的に殴られ一撃一撃確実に骨にダメージが蓄積した。

そんな生活を送った隼の体は、正直ビビるほど打たれ強い。

それこそ本来なら肋骨を砕き内蔵をグチャグチャにしながら背骨を容易く砕くようなオークの膝蹴りを食らって肋骨にちいさなヒビが入る程度なのだから。


「試射させてもらうぞ? オーク」


冷静な声が響く、その瞬間、隼は湾曲魔法を発動する。

オークの腹が勢いよく凹むと、膨大なエネルギーが無秩序にオークの体を駆け巡り中身をぐちゃぐちゃにかき混ぜる。


「ブモォ!?グブモォオーーー!!!!!」

「くははっ!痛いか!」


オークの体がグチャグチャになったのを見てすぐに次、1方向に向けられたエネルギーはオークの体を軽々と持ち上げ数メートル吹き飛ばした。

その光景に満足気に鼻を鳴らした隼。


「これで一発づつだ! どうだ?痛いだろ?」

「ブ、モォオ、!」


正確には3発ぶち込んでる隼だが、本人が1発と言えば1発なのである。

肋骨のヒビ、結構根に持っているようだ。


「ここからは空手の技で行くぞ? おら早く立て!」

「ブモォオオオオオオ!!!!!」


隼に軽く顔を蹴られたオークは激昂して勢いよく立ち上がると内蔵がグチャグチャになったせいで逆流した血を口から垂れ流しつつ睨みつける。

血がかかって赤くなった木刀を振り上げ、走り出そうとするオーク。

その瞬間、見えざる何かがオークの頭に激突し浅く肉をえぐる。


「ブモォッ!?」

「おっ!シオンのウインドバレットか! Lv6の風魔法が使えたんだな! めちゃくちゃ優秀じゃないか!」


言いながら怯んだオークとの距離を素早く詰める隼。

その握られた拳がグチャグチャに混ぜられた腹を再度えぐる。

「ズボッ」とゆう音がしそうなほどめり込む腕、堪えられなくなったらしい、オークの口から大量の血が溢れ出した。


「ブモォオオオオオオーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」

「威勢がいいなぁ、、ほら行くぞ!」


肋骨にヒビが入ったことでアドレナリンがドバドバ出てテンションのおかしくなっている隼はニヤける顔をそのままに本格的に殴り始めた。

数百の拳が繰り出される。

振り下ろされる木刀を交わしざまに脇腹を捉え、その先の内蔵に響く独特の突きで致命打を加えた。

ある時は大混乱で木刀を投げ捨て殴りかかって来るオークをそのまま迎え撃ち、顔面に強烈な一撃を喰らいながらみぞおちを右足の親指でえぐっていた。

激痛に歪んだところを膝蹴りで顎を打ち気を失いかけたオークの腹に強烈な突きを放った。

意識を取り戻し一瞬硬直した所を更に膝蹴りで脇腹越しに内蔵を蹴りあげる。

ラッシュのひとつひとつが致命傷だった、潰れた肺を下からかち上げるように殴り、潰れかけの睾丸を蹴りあげて潰し、3つの突きがマトモに潰れた胃を直撃し奥の背骨にヒビを入れる。

その他、雑多な致命傷数十、最後の余力で噛み付こうとし、呆気なく避けられる。

その勢いのまま前傾に倒れ込んだオークは、ゆっくりと口から血を垂れ流し血の海を作っていく。


『オークを討伐、ハヤト・ジンバのレベルが3に上がりました』

『獲得条件クリア、スキル”空手術Lv1”を獲得しました』

「、、んぁ?なんだって、? おっと、、」

「隼さん!しっかりしてください!!」


呆気ないと言えば呆気ないそんな最後、隼は突然脳裏に流れた機会のような声に一気に現実に引き戻された。

やっとアドレナリンが切れて激痛に倒れ込んだ隼を慌てて駆け寄ってきたシオンが支えてくれる。


「あぁ、ありがとう、今起きるよ、、」

「ううん、今はゆっくり休んで」


オークから少し離れた所で浅い草の上に寝かされた隼は、薄れゆく意識の中シオンの淡い白色の魔力を最後に意識を途切れさせた。

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