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愛犬と行く怠惰な異世界スローライフ  作者: レーザーらいおんマン
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キュイの可能性①

講習開始から3時間、講習の終了時刻を迎えやっと解放されは隼はどこかゲッソリしている。

ナイフを手入れして立ち上がった隼だったが、その後2時間ほど集まってきた探索者たちとずっと手合わせをしていたのだ。

雰囲気的に柔術以外を使える感じでもなく、繊細な力加減を求められる柔術を、ただでさえ精神的に疲れる環境なのに2時間もぶっ続けだ。

隼の精神的疲労は半端じゃない。

解散してからアンナと何か話した気もする隼だが、良く思い出せなかった。


「ベル〜キュイ〜」


フラフラした足取りで従魔舎に入った隼は弱々しい声で呼びかける。

癒しの無い環境に置かれストレスを貯め続けたのだ。

もはや限界なのである。


『隼おつかれ〜』

『ご主人様〜お疲れ様なのです〜』

「あぁー!!!疲れたー!!!!!」


出てきたベルに半ば反射的に抱きつき絶叫する隼と、その様子に目を白黒させながら真っ赤になるベル。

キュイはその様子を心配そうに見つめている。

地球でこそこうゆうシーンはそう珍しいことでも無かったのだが、こと異世界に来てからはトンと見たことがない。

キュイにしてみれば初めての光景なのである。


『ご主人様!大丈夫なの!?』

『ちょっ、隼、くすぐったい、、』

「ベルぅ、疲れたぁ、僕もうヤダぁ、向いてないんだあーゆうのぉ、、」


弱音が留まるところを知らない隼に撫で回されて照れくさそうに言うベルと大慌てのキュイ。

疲れているのだ、仕方ないのかもしれないが自分の従魔を迎えに来た他の探索者がビビってどこかに逃げる場面、それが1度や2度じゃ済まないのだ、探索者ギルドとしては勘弁して欲しいだろう。



ーーーーー



「ベル、ベル、ベルぅ、」

『もぉ、どうしたのさ隼ぉ、』

『むにゃむにゃ、もう食べられないの、、』


宿に帰ってきた瞬間ベルに抱きついて寝てしまった隼とそんな隼を見て安心したのか一緒に眠ってしまったキュイを何とかベットに乗せて隼の隣で丸まるベル。

時間的にはまだ12時半なのだが、カーテンを閉めて寝やすいようにするベルは本当にいい嫁さんになるだろう。


『隼、お疲れ様、』


もはやお母さんなのだが、疲れて寝てしまった隼の頭を撫でながら呟くベルは愛おしそうに目を細めて隼を落ち着かせる。

本当に隼にああいった場所は向いていないのだ。

それこそ水と油くらい合わないのだ。

それなのにあんなに目立ってしまって、心労は計り知れなかっただろう。

まぁ、だからといって23歳にもなってこんな感じの隼はかなりダサい奴なのだが。

そんなことは気にしないのだ、ベルは。


「んぅ、お腹空いた、、」

『そっか、お昼ご飯食べる?』

「ん、」


急にむくれ顔で起き上がった隼に驚きもせず起き上がったベルはキュイを背中に乗せ隼が起きやすいように布団をめくってあげる。


「ん。ありがと、ベル」

『お疲れ様、隼』

「ん、すごい疲れた、もう講習ヤダ、」

『そっか、じゃあなにか依頼受けてみる?』

『んにゃ、おはようなの、、』

『うん。おはようキュイ』

「依頼、うーん、受ける、」


ボーッとしながら立ち上がった隼に、気をつけながら扉を開けるベル。

1階に降りるとクラナが直ぐに気付いてかけてくる。


「もう起き上がって大丈夫なんですか!? すごいゲッソリして帰ってきたのに、」

「、、、うん」

「、? ハヤトさん?」

『ごめんね、隼いま疲れてて上手く言葉が出てこないみたいなんだ』

「わぁ!オオカミさんの声!? あ、念話とゆうやつですね、なるほど、お疲れ様でした!体の温まるシチューを用意しますね!」

「ん。ベルありがと、キュイ、ぎゅっ、」

『ご主人様暖かいの〜』


やっと少しづつ治まってきた隼はキュイを抱き上げて頬を擦り付けて癒されている。

そのまま席に案内されて、ご飯が来るまでずっとそうしている隼。


「トメトウィンナーとボアシチュー、それとお野菜とパンです」

「ありがとぉ、」


置かれたご飯をボーッとしながら食べていた隼はどんどん元気になっていく。

こうゆう時の隼は物食べてるうちに治って行くのである。

ベルの経験がそう言っている。


『美味しい!トメトの汁で味付けされたウインナーなんだね!』

「ん、おいしい、! ベル、あーん」

『え、うー、ん、あーむっ、』

『キュイもキュイも!、なの!』

「ん、キュイもあーん」

『あーむっ!なの!』


まだまだ甘えたいモードが抜けない隼のアーンでガチ照れのベルと楽しそうなキュイ、対照的だがなかなかに目の保養である。


「シチューすき、ベル、これもあーん」

『ちょっ、コホンっ、あームッ!』

「おいしい?」

『美味しいけど!恥ずかしい!!!』

「、、? キュイも、あーん」

『あームッ、んー!美味しいのー!』


落ち込むと餌付け癖が覚醒する隼であった。



ーーーーー



『んー、美味しかったぁ、、』


言いつつもかなり冷静になってきた隼に鋭い視線を送るベル。


「いやー!すまん!ベル!これからも多分いっぱい同じことあるから!慣れてくれ!!!」

『隼ぉ! 隼が、気をつけるのー!』

「すまんな!たぶん無理!」

『キュイもベルくんに甘えたいの〜』

『ちょっ、、もぉ!!!』


食べ終わった余韻に浸りつつ雑談を交わす1人と2匹。

もうちょっとしたら探索者ギルドで依頼を受ける予定なのだが、ちょっと忌避感が湧いてきている隼は何とかして先延ばししようとしていた。


『じゃ、そろそろ行こっか、』

「、、、クラナ! ジュースお願い!」

『、ん? 隼?』

「あ、はい!少々お待ちくださーい!」

『ジュース!キュイもー!』

「、、もうちょっと、」

『はぁ、、』


やたらと粘る隼にもはやため息しか出ない、とゆう様子のベル。

ただその顔は満更でもなさそうだ。

ベルにしても短い間とはいえ隼と別れるのは大なり小なりストレスになるのだ。


「お待たせしました〜 オランジージュースです」

「お!ありがとうクラナ!」

『美味しそうなの、!』

『これ飲んだら行くからね?もぉ、』


ちゃっかりクラナを、呼び捨てにできるようになった隼。

年下なら割と自然に呼び捨てで呼べるあたり隼らしいと言えばらしいのだろう。


「ん!オレンジの僅かな酸味が良いインパクトになってる!!」

『ホントなの!美味しいのぉ〜!』

『わぁっ!美味しい、凄いね、こんなに美味しいんだ、』


すぐに飲み終わってしまったベルとキュイ。

異様にチビチビと飲む隼を急かしながら20分近くかけてやっと飲み終わった隼にベルが冷たい視線を送る。


「な、なんだよぉ、」

『何にもっ』

『行くの?もう行くの?』


トボトボ出ていく隼の背中は120時間残業しているサラリーマンのごとく曲がっていた。



ーーーーー



「それじゃベル、すぐ戻るから、あ、待ってまだ、、」

『はいはい、行くよキュイ〜』

『ハイなのー!』


イケメン顔が悲しみに歪んで般若みたいな顔になっている。

人間落ちるところまで落ちたらこうなるのだ。

トボトボとギルドに入り、依頼ボードに近づいていく。


「Gランクの依頼は〜、この辺か、、薬草採取に、ドブさらい?そんなのもあるのか、僕だけならいいけどベルとキュイにこんな事させれないしなぁ、、ゴブリン討伐はFランクなのか、 ホントに街の子供たちの小遣い稼ぎって感じだな、、1番報酬が高いのは薬草採取か、じゃこれでいいかな、」


決めた隼は依頼書の1番下、報酬金の隣に書いてある番号を何度も読み上げて覚え、忘れないように何度も唱えながら受付に向かう。

依頼の受付は他とは違い3つのカウンターに別れていた。

そのうち1番すいている列、そこにいる女性を見て、隼は少し安心したようにその列に並んだ。

、、、10分ほどで隼の番が来る。


「ご無沙汰してます、ルーラさん。 今日は依頼受け付けなんですね?」


そう、その列を捌いていたのは登録の時に話して隼としてもそこそこ慣れているルーラとゆう女性だった。

耳をパタパタさせて対応する彼女は実に絵になるしシンプルに可愛い。


「どういった依頼を?」

「はい、えっとですね、0630番、です!」

「えーっと、薬草採取ですね! それではギルドカードの提出をお願いします。」

「はい!」


テキパキと作業を済ませていくルーラの仕事ぶりに思わず見惚れている隼。

僅か数分で必要な書類を完成させ、コピーまで済ませたルーラはコピーの方をギルドカードと共に手渡した。


「これで手続きは終わりましたが、もちろんこの周辺にも自生してますし大丈夫だとは思うんですが、それでもモンスターが全く出ない訳ではありません。十分気をつけてくださいね」

「はい。ありがとうございます!」

「あ、それから一応依頼失敗の場合は報酬の1割の違約金を払って頂くことになっています。 薬草採取なら銅貨10枚ですね、、そこまで気負う必要はありませんが、とにかく命第1で!頑張ってくださいね!」

「ありがとうございます、、」


異世界に来てからしっかり優しく接してくれているのってやっぱりルーラとクラナだよなぁ、と思っている隼。

この2人にはしっかり感謝している分、こうゆうのかなり照れていたりする。

依頼受注のコピーとギルドカードをアイテムボックスにしまった隼はルーラに軽く会釈して微笑んでからギルドを後にした。

少し朱色に染って次の対応をしたルーラは耳を残像が残るほどパタパタしながらポンコツ続きだったせいで先輩受付嬢にイジられる事になるのだが、隼は知らずにギルドに入った時とは打って変わり嬉しそうな顔で出ていくのだった。

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