そして街へ②
『それでね? 隼が僕のお腹の上でおもらししちゃった事があってね?』
『おしっこなの? びちょびちょなの、』
『そう!ボクびちょびちょになっちゃってね〜、、』
「おーい!ベル〜キュイ〜!」
『お、呼びに来たみたいだね? 途中だけど寂しがる前に行こっか』
『うんなの!ご主人様は寂しがりなの!』
キュイの返事にクスクスと笑うベルとよく分かっていないけど楽しそうなキュイは隼が居る入口までトコトコ歩いていき、隼を見てまたクスクスと笑い合う。
不思議そうに首を傾げる隼とニタニタ顔のベル、そしてなにかウズウズしているやつが1人。
内緒にできない質なのはスライムの特性なのだろうか?
『ご主人様はさみしがり屋さんなの!!!ベルくんとラブラブでキュイは羨ましいの!!!』
『あ、ちょっとキュイ? それは、』
「、、、ほぉ?ベルさん? 君ぃ?俺が居ない時、何話してた???」
『うーん、はは、何もー?』
『ベルくんとご主人様がおもらしした話してたの!!!』
「くぉらぁ!!!ベルー!!!」
『きゃー!こわーい!』
真っ赤に照れながら襲いかかる隼と楽しそうに叫んで受け身にクネクネしているだけのベル。
このペアーは昔からそうなのだ。
隼が中学生にもなっておもらしをした時は嬉々としてお手伝いさんにダッシュで報告するのはいつもベルだった。
毎回寝起きに呆れ顔のお手伝いさんが立っていた頃は誇張なしに真っ赤になってベルを追い回していたものだ。
そしていつも決まって、、、
「このこの!ここか!?ここがええのんか!?」
『あひゃ!ちょっ!そこは弱い!あはは!ちょっ!ほんとかんべんして!!』
『楽しそうなの〜、あっ!キュイもやるの〜!!!』
『キュイ!?待って待って! ちょっ!ほんと死んじゃう!』
「ふっ、今日はこのくらいで許してやるか、」
『許してやる!なの!』
『ぜぇ、ぜぇ、死ぬかと思った、、』
いつも決まってくすぐり攻撃をするのが定番なのである。
ベルは肉球をくすぐられるのに、それはもう致命的なまでに弱かった。
それを知っているのは隼だけだったが、未だに全然変わらないこの関係性は、きっとずっと変わらないのだろう。
1仕事終えた、とゆう顔の隼とその隣でふんぞり返るキュイが愛らしい。
そして地面に伏してピクピクと動いているベルはどこか、いや、もう全体的に幸せオーラを出しまくっていた。
『あれ?そういえばご主人様、もう用事はいいの???』
「ん、?あ!!!そうだよ、中はいらなきゃなんだった」
『あ、そっか、、隼ぉ〜おんぶ〜』
「可愛いなちくしょう、ほら行くぞベル〜 悪いなキュイ、今回は抱っこしてやれん」
『ううん! ベルくん幸せそうだからいいの!』
「そっか、そんじゃレッツゴー!」
『レッツゴー!久しぶりの背中は楽だにぇえ』
『ゴー!なんだよ!』
そんな風にしてキュイの歩くスピードに合わせてゆっくりと進んだ一行はすぐそこにある門前まで2分ほどかけて到着すると、改めてベルを下ろす。
「すまん忘れてた、これ付けないと入れないんだった。」
『なーにこれ?』
『あぁ、これが従魔の首飾りってゆうやつ?』
『そーなのです??』
「ベル正解! ここについてる赤い魔石に従魔契約書ってゆうのが入力してあるらしくてな、こうすると、契約書が映し出されるようになってるんだ。 これがあればほかの街とかでも契約書を見せて自由に入れるようになるらしい」
『なるほどぉ〜!すごいの!』
『はぁ〜便利なもんだね? 』
ペンダントの上のところにボタンがあり、それを専用の板に当てると契約書が映し出されるようになっている。
アイテムボックスからペンダントと専用の板を出し片方を手首にかけてもう片方で光を板に当てる隼。
細々とした文字が書かれているが、基本的には従魔による傷害事件は主人に全ての責任を問うものとする、とか従魔の首飾りを付けづに街中を歩くことは違法である、などの契約事項が難しい言葉で長々書かれているだけで難しいことは無い。
最後の列には隼のサインとして親指のマークが着けられその隣には「ハヤト・ジンドウ」と書かれていた。
ベルは首に、キュイは頭に乗せて歩き始める。
「よし、それじゃ中に入るぞ〜」
『隼〜ボクは〜?』
「ベルはもう歩けるだろ〜ほらキュイ、行くぞ」
『うんなの!』
『隼のケチんぼめ!』
悪態を着いてちょっと不貞腐れながら歩き始めるベルと、そんなベルの様子に苦笑を浮かべながらキュイを抱き上げて後を追いかける隼。
そして純粋に楽しそうに笑っているキュイ。
そんな三者三様でシューガルの中へと入った一行は、門前で改めて隼の対応をした警備兵に銀貨1枚と銅貨4枚の通行料を払い都市の中に入っていく。
内訳は隼が銀貨1枚で、ベルとキュイがそれぞれ銅貨2枚ずつとなる。
真っ直ぐ探索者ギルドのある貴族街手前まで歩いていくようであった。
ちなみに、シューガルに限らず基本的にこの世界での街や都市と言った場所は平民街を門から入ってすぐに構え、そこから少し進んだところに小さな商会が並ぶ商業街。
ここは平民向けのものを扱っているところがほとんど。
そこから少し進むと貴族向けの商業をしている商会や大手の商会、そして様々なギルドがあちこちに立ち並ぶ区域となる。
ここに小さいギルドから大きいギルドまでごちゃ混ぜになっているので初めての人は地理に明るいガイドを付けるのもまた、各町の恒例となっている。
そしてもう少し行くと貴族街が広がり、真ん中には領主邸とゆう構成になっている。
基本的にはこれがアシュー王国における街づくりのテンプレートとなっていて、相当変わり者の領主が収めているかダンジョンが急に発生して地理が変わるくらいしないとなかなか変わるとゆうことは無い。
故にこの構成で作られてる街とゆうのが殆どとなっていた。
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「けっこう活気があるんだな〜 そりゃそうか、まだ精々3時くらいだもんな」
『この辺は商業街、だったっけ? 大っきいな何でも屋見たいな所もあれば露店みたいなところもあるね?』
『いい匂いなの! これはきっとお肉を焼いてる匂いなの!』
「たしかに、お!あれじゃないか?」
『ファングボアの串焼き、だって。 ボアってことはイノシシかな、? 隼!気になるよ!』
「そうだな、3本買っていくか」
『ほんと!?なの!?早く行くの!!!』
1人と2匹は商業街を歩きながら物珍しそうにキョロキョロしていた。
周りから見たらかなり田舎臭いのだろう、すれ違う人が振り返ってクスッと笑うことにもすっかり慣れてしまった隼は殆ど無表情である。
「す、すみませんっ! あの、串焼きを3本買いたいんですが、売って貰えます、か、?」
「ん?おう兄ちゃん買ってくかい! 串焼き1本銅貨20枚!3本なら銅貨60枚だよ!」
「あ、えと、はい!コレで足りますか?」
「おう!銀貨1枚だな!お釣りの銅貨40枚だ!毎度あり!今から焼くからそこの椅子で待っててくんな!」
「は、はい!」
隼は言われた通り露天に備え付けられている椅子に腰かけてキュイとベルを両手で撫で回し時間を潰す。
この世界における貨幣は基本的に統一されている。
銅貨、銀貨、金額、白金貨、王貨、となっていて銅貨が100枚で銀貨となり、銀貨は10枚で金貨と同額になる。
貨幣の数えはトーン、1トーンが銅貨1枚だから金貨1枚なら1000トーンとなる。
串焼き1本、日本ならだいたい200円くらいだろうか?
その基準で考えるとトーンは基本円の10倍ほどの価値となる。
必ずしも正しいとは言えないが、この考え方で多方間違いないだろう。
白金貨と王貨はそれぞれ貴族や王族が特注のゴーレムを買えたり下手な街くらいなら変えてしまう価値がある。
それぞれ、白金貨は金貨1000枚分、王貨は白金貨100枚分の価値がある。
隼は天使様に銅貨、銀貨、金貨をそれぞれ10枚ずつ貰っているので結構懐は暖かい。
「おーい兄さん!出来たぞー!」
「あ!そうか!ありがとう!」
慌てて立ち上がった隼な片手でキュイを抱き片手で三本の串焼きを掴むとゆう器用なことをしながら礼を言って歩き出す。
「ん!上手いなこれ!」
『ホントだね!こんなジューシーでアツアツなお肉初めて食べたよ! イノシシって美味しいんだね!』
『美味しいんだよ〜美味しいんだよ〜』
1人と2匹は頬が落ちそうなほど緩ませながら串肉を頬張っていた。
すると、そんな隼の肩を掴む者がいた。
「ちょっとあんた!今いいか!?」
「っ!?ごほっ、ごほっ、」
『ちょっ!大丈夫!?』
『ご主人様くるしい!?ど、どぉしよォなんだよ!!!』
急に声をかけられて肉を喉に詰まらせた隼が咳き込みながら手を振って2匹に大丈夫だ、と合図する。
それで安心するほどチョロくないベルはまだ心配そうに覗き込んでいるが、良くも悪くも表裏がなく信じやすいキュイは「よかったの、」と言うようにホッと息を吐いた。
当の話しかけた本人はと言うとこんな大事になると思わなかったらしく少し焦っていた。
その姿は皮の鎧みたいなものを着込み、腰にはショートソードを2本さしている。
赤い髪と整った顔に金色の目をしたその男は困惑と申し訳なさを浮かべた顔で隼を覗き込んでいた。
冒険者ぜんとしたその出で立ちに少し目を輝かせる隼に呆れたような少し安心したような目を向けるベルは本当に愛らしい。
「す、すまない、急に声なんてかけて、いやアンタのテイムしてるモンスターがどうも不思議でよ、」
「い、いや、気にしないてくれ、ごほっ、肉詰まらせただけだから、」
「そ、そうか!ゆっくり飲みこんでくれ、!」
ドモりながらも返事を返す隼は見るからに変質者なのだが、気にしていない風のこの男は優しい男なのだろう。
少し無作法ではあるが。
男の声が聞こえているのいないのか、隼は深呼吸をすると少し落ち着いたようで口を開く。
「そ、それで、僕にどんな御用が???」
なお理由が全く思いつかないらしく困惑顔である。
「あぁ、アンタのそれ、スライムだよな?」
「あぁ、スライムのキュイっていうんだ、キュイ、挨拶して」
『?うんなの!キュイはキュイですなの!よろしくなの!!』
「お、おう!よろしくな!キュイちゃん!」
『うんなの!』
「そ、それでよ、なんでこのスライム、喋れるんだ? そこの白いオオカミはまぁ、そうゆう頭のいいモンスターってことなんだろうけど、スライムが喋るなんて俺聞いた事なくてよ、」
「あれ?そ、そうなのか? 僕はてっきりそうゆう物なのかと、」
『?キュイすごいの?』
『ボク達の念話って他の人にも聞こえてたんだね?僕はてっきり隼とキュイにしか聞こえてないとばかり思ってたのだけど』
「あ、ああ、それは念話の相手を指定していないからだな、念話ってスキルは受信するだけならスキルがなくても可能なんだよ。 これは魔力を振動させて情報を送ってる関係上、当然の仕組みだな。 魔力を持ってる生物なら全員受信可能なんだ。 つまり、この念話スキルってやつで話す時は対象を明確にイメージして行うのが基本なわけだ。 とゆうか、テイマーなら一番最初に念話を使えるモンスターにはその扱いを教えるものなんだが、、」
「念話ってのは相手を指定しなきゃ行けないのか、なるほどいい事を聞いた。 キュイについてだが僕も分からないんだ、済まない、特殊個体ってことにしといてくれないか?」
「あ、ああ!俺こそすまなかった!俺は深紅の剣帝とゆう冒険者パーティーで副団長をしてるもんだ!今回の詫びに困った時は尋ねてくれ!出来ることは手伝わせてもらう!」
「ほんとか!?それはたすかる。 そ、それじゃ僕は急いでるからそろそろ行く、念話のこと!ありがとう!」
「そうか!急いでたのか!ほんとに済まなかった!」
少しだけ人と話すのにも慣れてきたと見える、隼はそう言うと駆け足気味に目的地へと向かう。
その背を追うベルは一瞬赤毛の冒険者に目を向け睨みつけてから後に続くのだった。
ベルさんは相当根に持っていそうである。
そんなこととは知らない隼は「いい人だったな〜」などと呑気に呟いているのだが。
ちなみに、キュイも大なり小なりあの男に苦手意識があるようで少しテンションが低いように思う。




