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追加ヒロインかつ隠しボスですが、できることなら隠れていたい~やがて氷瀑の魔女と呼ばれる悪役聖女の私はトゥルーエンドを目指します~  作者: 桜枕


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35 月明かりに照らされて

 驚愕する女王陛下とレクソスを他所にデュークは漆黒のローブをはためかせる。

 いつから私はデュークの物になったのだろう。この前は不要だって言ったくせに。

 私の影から現れた上、こんな大勢の前で肩を抱くなんて恥ずかしいからやめて。


「ウルティア・ナーヴウォールよ。勇者候補に正体がバレたな。この役立たずめ」


 まさか全ての罪を背負って、私を逃がすつもりなの!?

 そんなのはダメ!


 私は自分にとって理想のエンディングを手に入れるだけの為にこの世界をめちゃくちゃにしているのに、これ以上デュークを巻き込む訳にはいかない。

 なんとか一人で切り抜けないと!


「お前にもう用はない。二度と俺の目の前に現れるな」

「やめて、デューク。貴方はただ魔王になりたかっただけでしょ!? 必要以上に敵を作らないで」


 彼の細くてしなやかな指先がこぼれ落ちた涙をぬぐってくれる。

 こんなにも優しい人なのに、私が戦いに巻き込んでしまった。

 懺悔の気持ちは留まらず、私の頬を濡らす。


「ウルティアを放せ! デュゥ・クワイタス!」

「クワイタス? クワイタス公爵家の生き残り? そうですか、貴様がこの時代の魔王の器ですか」


 我慢できなかったように叫ぶレクソスは魔王の正体にも気付いていたらしい。

 女王陛下はその名に聞き覚えがあるようで、デュークが顔をしかめる。

 ただ一人だけ反応を示さない"水圏の魔女"だけがやけに不気味だった。


「レクソス、次に会う時がお前の最期だ。コレは貴様にくれてやる。最期の時まで楽しい思い出を刻むといい」


 デュークの腕が解かれ、身体が離れる。


「待って、行かないで。その道は一人では歩けないわ。私が隣を歩くから私を放さないで」

「生きろ、ティア。両親はクワイタス公爵家の旧邸に匿っている。急げ」


 耳元で囁かれた言葉が私の胸を締め付ける。

 こんな痛みを感じるくらいなら、最初からトゥルーエンドなんて目指さなければ良かった。


「デュゥ! ここでお前を倒して、この世界を救う! これで全部を終わらせよう!」


 レクソスの一撃をデュークは捌き切れない筈だ。

 勇者に覚醒しつつあるレクソスと魔王に成りきれないデュークでは力の差が大きすぎる。

 このままじゃ、デュークがやられる。


「無様ですね、当代の魔王よ。たとえウルティア・ナーヴウォールが貴方の駒だったとしても罪は消えません。この先、彼女に幸運が訪れることはないと思いなさい」


 冷酷な微笑を浮かべる"水圏の魔女"の頭上でデュークは怒りを露わにしている。

 瞬く間に魔力が膨れ上がり、爆発すると周囲に配置された王宮魔導師や魔導騎士のほとんどが気絶し、一握りの強者だけが意識を保っていた。


「こいつの居場所を奪うのか? ならば、俺が作ろう」


 レクソスとデュークの違いは覚悟の大きさだ。

 レクソスは勇者として女王陛下やこの国のために命をかける覚悟を持って覚醒しようとしている。

 デュークはただ魔王になりたかっただけで覚悟はなかった。しかし、彼はたった今、恥ずかしながら私の為に魔王になる覚悟を決めてくれた。

 私は無意識にデュークの腕にしがみつく。


「父の敵である、その女を庇えるのですか?」

「なに?」

「貴方の父はウルティア・ナーヴウォールという存在を知り、絶望してこの世を去ったのですよ」

「知らん。俺は俺の意思でこいつを従えると決めた。父は関係ない」


 逆巻く風によってフードが脱げて、デュークの素顔が晒される。


「その顔、なんで――ッ!?」


 自分と瓜二つの顔に驚いたレクソスの魔力構築が乱れた。

 デュークの魔力はさっきと比べものにならない程に重くのしかかり、息を詰まらせる。

 これだ、これが本当の重力魔法なんだ。


「待て、デュゥ! 行くな、ウルティア! 君はボク達と一緒にいろ!」

「ごめんなさい、レクソス。貴方にはエレクシアがいるけど、デュークには私しかいないから」


 必死に手を伸ばすレクソスの雷属性攻撃魔法と軽く振り下ろされたデュークの土属性攻撃魔法がぶつかり、新しい攻撃魔法を編み出した。

 磁力を伴う砂嵐はダンスホールの天井に穴を開け、私達を見上げる女王陛下、"水圏の魔女"、レクソスに襲いかかる。

 更に追い打ちをかけるように無慈悲にも周辺の地面を引っぺがし社交界会場そのものを押し潰した。


「あの女の言っている事は気にするな」

「デュークが訪ねてくる直前に魔王と出会っていることは本当よ。でも、その後のことは分からない。信じて」

「あぁ。それよりも――」


 食い入るように見つめる深いエメラルドの瞳に引き込まれそうになる。


「キスしたのか、あいつと」

「……うん」


 デュークの指先が私の頬に触れ、偽物の顔が引き剥がされる。

 露わになった本当の私の顎を持ち、唇が重ねられた。

 荒々しいのか、繊細なのか分からない口づけはやけに長く感じる。


 この日、私は二人の男性にファーストキスを奪われた。

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お読みいただき有難うございます!
「君を愛することはない」と言った夫に呪いをかけたのは幼い頃の私でした
こちらもよろしくお願いします!
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