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其は■の声

作者: Wkumo

 電話。がかかってくるのは遠い昔のことだった。

 夢を見る。

 電話がかかってくる夢。

 夢の中の電話はいつも俺を叱責する。


『どうしてうまくやれないんだ』

『お前の態度が悪すぎる』

『本当に反省しているのか』

『態度で示せ』

『笑ってはいけない』

『泣いてもいけない』

『言われたとおりになぜできない』


 多すぎるクレームに俺は頭がいっぱいになって、ぐるぐるぐるぐる、うずくまる。

 それでも電話は鳴り止まない。

 鳴っている。鳴っている。


 暗い気分で目を覚ます。電話はもうない。

 とうに過ぎたことなのに、どうして今でも悩まされているのだろう。

 もう、終わった話なのに。


 用事で電話をかける、そうすると思い出す。

 夢の中のように怒鳴られるんじゃないだろうか。

 どうして。どうして。

 あらゆる叱責がシミュレートされ、心がぐしゃぐしゃにされて丸められてプレスされるような心地、そうして電話がつながる。

 果たして叱責は、されない。

 電話が終わって息を吐く、今日は大丈夫だった、しかし次はどうなるかわからない。

 恐れが消えてくれないのだ。

 遠く、ずっと遠くから俺を呼んでいる。

 忘れるな。

 私はいつも側にあり。

 信じよ。

 されば救われん。

 それが嘘だと知っている。あれは終わった者の声。力を失った■の声。


 それでも毎日夢を見る。


 鳴っている、電話が鳴って、

 目を閉じる。

 鳴っている。

 消そうとしても消すことはできない。

 綺麗に収まらないのだ。

 片付かない。

 俺はいつまでもこのままなのだろうか。

 力を失った■が呪いのように呼び続ける声。

 夢は怖い。夢は呪いだ。

 そんなことを思いたくなんてないのに。

 支配される夢。操られる夢。

 信仰を捨てたことに負い目がある、きっとそうだ。だからこんな夢を見る、あんな声が聞こえる。


 引きずっている。

 電話が鳴っている。

 負い目はまだ捨てられず、

 月を見た。

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