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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

不吉な秘密の通り道

作者: 石川 瑠佳

「捕まる、早く会わないような場所へ」

「分かった…」

 私は走って逃げつつ考えた。これは、どういう結末だろう。あの、化け物たちの真の姿は何であったのか?

 私はトンネルへ逃げた…。

 化け物は追いかけてきた。

 肩に手が届きかけた直前は今も覚えてしまっている。思い出したくもない。

 あの、たくましかった彼が爪にでも刺されたのか、肩から血を流しひざ下からも血が出、足をひきずっていた。

「本堂さん…」

 苦しい身体の痛みと、切ないのをやわらげて過ごすためか、暴言を吐いた。

「マジ、やられた。…あんな、馬鹿でクズな化け物に…」

 ボコッビョコ、ベコッズッドンッ…。

 二人の間のトンネルが崩れた。数時間、掘らないと通れない。

 なんとか会話ができる程度の崩れ具合。

「早く逃げろ。ヤツラが来る」

 私は慌てた。

「古池時未。天井が落ちるような大きな攻撃の力を使ったんだ。ヤツラ上から、来るかもしれないぞ」

 それだと、私も安全って訳でもない。

「本堂さん、できれば私は、あなたを救いたいって思ってはいた」

「分かった。でも、上手くいくことばかりじゃない、人生は」

 私は吹っ切れた。本堂さんも私がいない方が逃げる手が増えるかもしれない。

「私はあなたに再び、会うことができる日を、待っている」

 本堂さんは納得した雰囲気の声で話す。

「それでいい。また会おう、去って行け」

 私は逃げた。本堂さんを置いていった…。この選択は大丈夫か?だけど、あの人は強い…。

 ヒョオヒョッオッオ―ウ―。どこからか、隙間風が吹く。

 私の脳みそは限界に達していたのかもしれない。急に感覚が閉じていった。本堂さんを置いてった後ろめたさもあったのか…?光が幾つも目の前で増えていく。

「ああ、やめて……。方向が分からなくなる。きちんと目が、見えなくなった」

 その時、ガッシャ―ンガッシャシュッゴッショ―ッジョズッ。

 トンネルの壁を崩して、私の手を取ってくれる人がいた。そして、錯覚にも、思えていた光まで一緒に走ってくれたのだった。

 これが本名、権中平蔵(ごんなかひらぞう)こと、ゴン平との出会いであった。


 私たちがトンネルから出た先は、雲でできた世界だった。

 建物がほとんど雲で作られている。

 雲は防水加工で、火にも強く冬はあったかの、ここでは上質素材になっていた。

 私たちは、ゴン平の所持していたノートを破った紙に『化け物が来るかもしれない』ことを十五通程、書いて買った封筒に入れて、まんべんなくばら撒いておいた。直接言ったらなんかよく分からない犯人にされて火あぶりみたいにされたら困る。しかし、トンネルは少し分かりずらい出口だったが地元に住んでいれば知っている人も多そうではある。本堂さんは雲の世界について、何も言わなかった。会ったことや接触が無かったのか。私は、三十五日ぐらい『化け物の住む森』にいた。本堂さんは魅入られていたからほぼ行かないで済ませていたんだろうな、この土地に。雲の人たちは多分資源とか目的で少しだけ行ってさっさと帰ってたとかだな。特に閉じてもいなかったから、きっと、化け物もあまり来なかったのだろう。と、私は見当をつけた。


「ゴン平、どうやって過ごす?」

 ゴン平は私より二つ年齢が上なそうだが「堅苦しいのはイヤなんだ」と、一所懸命に頼まれてしまったので呼び捨てだ。

「ヤツラが追ってくるかもしれない。しばらく、待機で」

 私たちは安値の喫茶休憩所になっている、『雲のかまくらハウス』でしばし、時を待つ。

 私は博物館の『天井を見る建物』にいたことをゴン平に話した。

「五、六階ぐらいの高さで、らせん階段を上がっていくんだ。微妙になんとなく、細い建物で。天上には太陽の顔があって、その周りには時計の文字盤のように、くぎられている窓がズラッと並んでいた。デザイン的には黒電話のダイヤルら辺がしっくりきそうで。私は時々天井を見ながら注意をして上がっていた」

 太陽の顔は、朗らかな小学生男子にも見えるし、ちょっと元気なオバさんの感じにも似ていた。

「すると、途中で太陽と目が合ったんだ。そうしたら、緩やかな波の模様的ならせん階段が平べったいバナナの皮の、甘さを排してしまった味のないガムの風味の筋でもはがすように剥がれてしまい、壁も鳥が舞うように消えていって、私は空に吸いかまれたんだ」

 思い返して、ドキッとして汗が出る。きっと私は、ありえない体験をしたのだろう。

「気が付くと、森みたいなところに、倒れていて。顔のある木が私を迷惑そうに見ていた」

「なにそれ、恐い」

 ゴン平は笑った。

 私は困っていた。

「それで、私はどうしようかと思っていると、木の根っこの方を持ち上げてちょっとちっこい化け物たちが八体ぐらい、ズラズラーッと出てきて弱った。アレは悪魔に似た、ちょっと邪気の少なめの化け物だった」

「やや危険じゃん。頑張って」

「私も慌てて、逃げたんだけど。かえって怒らせて追いかけられて。そこで本堂さんというオジさんに抱えられて逃げて」

「色々あるね」

「本堂昌勝(まさかつ)さんは経験豊富なたくましい感じの方で、私をずっと抱えて逃げてくれて…。トンネルまで来た。やや深めの秋ぐらい寒いからそこでたき火をした」

「俺は長いこと化け物と闘って世話を焼くときもあったりなどして暮らしてきた。しかし、俺は魔の森に魅入られている。だから、今回は喰われるだろう。最後に、君を助けられて良かった」

 味わい深い表情で本堂さんは語る。

「なんだ、急に悲しい話になった…」

「本堂さん、負けちゃダメだよ。こっから、隠れ逃げればいいよ」

 本堂さんも化け物とかいて、敬語がうっとうしいと言っているので意見を汲んで。もう私は大人ではあるがタメ口で話している。

「俺は昔、化け物を闘いの中で死なせたので、離れるのは無理だ」

「この、通路は…?」

 トンネルの入り口の反対方向に向かって細い踏み慣らされた草の道が、あった。

「俺はこの管理を心残りのためか、やっている。この通路は昔、国が避難のために、作った場所だ、ここは」

「国?」

「日本は逃げる国家だ」

「ええっ…?」あえて、そんな言い方をしなくても。変な誤解が起きそうな話になりそうな。と、私は考えていた。

「日本は異界の地を避難の場所に考えていた節がある」

「ウソ」

「俺は第二次にも参加をしていた軍人だった」

「えっ、七十六年以上も前?本堂さん、いっていても三十代後半ぐらいにしか見えないと思うんだけど」

「ここでは、元の世界と比べ、時間の進む早さは七十分の一しかない」

「遅過ぎ…。三十分だと、三十五時間だ。早く帰らないと」

 家族が、不安になってしまう。

「心配しなくても時間を戻す方法はある。ここで過ごした時間内であれば。戻ったとき言葉を話す、自分しか見ることのできない『時間具現宝玉』というものが自分の手に現れてくる。それに願えば一瞬の時間のズレもなく元に戻れる」

「なんだ、びっくりした」

 こんな、不思議な世界に来ているんだから信じないと仕方がない。

「話を戻すと、日本は戦況が怪しくなって、異界へ逃げる扉的なモノを作ろうとしていた」

「そんな、無責任て気が」

「しかし、行った先にも化け物がいたのだ。仲間はことごとく喰われたり、事故で死んでいった」

「私は戦後になって、八年程で、魔に魅入られていたのだろう。移動できる空間の一つを使って再びここに来た。それでも、助かった仲間で逃げた者もいたかもしれないが、別の異界に行っている可能性はある」

「待って。すぐ帰れる方法がある?」

 私は希望を持って聞く。

「だがな、帰っても逃げれるものではない。俺は戦後の苦しさで八年かかったが、君なら三日もあればまた、この世界を訪れてしまうだろう。ここは『愛』の場所なんだ」

「んっ、愛?」

「異界は別の可能性を探す、空間」

「別?」

 私は、謎の多い言葉に戸惑う。

「古代ではたくさんの人間が利用をできていた。しかし、権力者が握り、平安~室町ぐらいまでは貴族がその力を利用していた。しかし、戦国時代になると、気の荒い武士が増えたので、貴族は異界の地まで来られちゃかなわんと思って、おそらくあるんだということをを隠していた。元武士である士族とかが恐かったので、明治、大正も隠し続け、昭和になって存在を出すようになったと俺は思っている。けれど、結局人間というものは世界を腐らせてしまったのだ」

「ちょっと、そんな言い方…」

 本堂さんは、まるで、当然というような雰囲気で話す。私は、辛さを感じた。

「腐っているものから、別の可能性を探したって、やっぱり腐っているんだ。毒のある土地に植物を育てたいと思っても、多分ムリ」

 病んでいる、発言だ。

「ひどい、何てこと言うんだ」

「単純にそういう道を人間は作ってしまったんだ、現実で」

「もう一遍言ったらかなり怒って過ごす」

 私は怒りの入口から、もがき言葉を放つ。

「激しくなってきたね」

 ゴン平は、苦い顔をして言う。

「本堂さん、嘘で世界を終わりにしないで」

 本当はもっといい空間にできるはずだ。

「だが…」

 本堂さんはまだ、この世界の腐っている闇へ対するためらいが、あるようだった。

「分かった、私帰るの考えない。いいんだ、二十歳過ぎてグチュグチュ言っても仕方ない」

 私は二十三歳だ。大学二年生のとき、身体の調子が優れなかったので、卒業の単位がギリギリになった。完成させたレポートをうっかり出し忘れ留年になってしまった。四コマ漫画みたいな、オチであった。私はこの出来事ですっかり達観ができていた。

「時未」

 本堂さんは私の結論の良さに、びっくりをする。

「化け物と仲良くするかは、分からない。でも、この世界が『日本』とつながっているんだったら糸口はあるよ」

「そうかもな」

 驚くべき簡単さで、本堂さんは納得をした。

 私たち二人の間には何も起きることもなかった。

 寝るときはたき火を間にかなり離れて過ごすのだった。木の皮と南国っぽい葉っぱを編み込んだりなどをして作ったモノを木にくくりつけた、簡易の屋根を本堂さんはこしらえてくれていた。小雨程度なら普通にしのげていた。後は、ゴザの上で寝た。

 着替えは昔、五度程、本堂さんが元の世界に帰ったときに買ってきていたテントでするようにしていた。(服の変えは、魔法の植物の蔓で作製した。結構、伸びてイメージで変形する)

 まあ、キツくない性格の狸の置物みたいな化け物とかがちょっと覗いたりしているのでムードなんてない。後、本堂さんと私はお互い好みのタイプでも無かったような気もする。

 その後程よく構えて、普通に親切にすればいいと決め、私たちは化け物と距離をとりつつ、隙あれば仲良くしようとした。

「いい化け物もいますね」

「ああ、果物をくれた」

 などと、馴染んでしまった。

「家、作るの手伝ってくれてるんですか?」

「ああ、化け物だって家を欲しいと思っているのがいるのでな。頼んだら器用な者が手伝いをするのを承知してくれた」

「かなり、親切だ」

「このまま、終わらないんだ…」

 ゴン平は切なそうな目をしている。

「多分さ、水が潤えば隠れていた部分が目を覚ましてしまう感じなんだよ…」

 私は頭を悩ませながら、話した。

 腐った第二次世界大戦中の日本軍の兵士的なのと、化け物の混ざった存在が現れて来たのだ。

「うわーっ、恐っ」

 ゴン平は(別ルートの異世界の時間も七十分の一だったようだ)十七年前の青年だから、ビビッていた。

「首から上をチギる化け物が現れてね。大人しい化け物が死んじゃって」

 本堂はそういうヤツらと戦い始めた。最初は勝てていたんだけど。

 魔法で巨大な火の柱を作れたり、しばらく身体の動きを止めたりする力を持ったヤツラが、いて。

 苦戦した。

 こっちも魔法の道具を生産したりして、戦った。

 魔法の木、力ある、その辺の石ころだって愛を持って心から願えば、悪いヤツが出す魔法を鎮めることができた。素晴らしいことだ。

 ところが段々、新たに目覚めた化け物の数が増えたので、追いつめられた。

「トンネルへ逃げよう」

 本堂は私を荷物のように持って走って逃げた。

 寂しい別れ方をしたとは言え、残念な部分ではあった。縁があったら、何とか改善をして欲しい。

 こういうところが雑なんだ。あの人。

 途中です早いのに見つかって、「先に逃げろ」と、言われた。

 仕方なく、行くと…ゴン平に出会った。

「仕方なくって、安いな。俺の登場の場面が」

 ゴン平はいい感じにここは盛り上げて欲しかったようだ。私は今さら照れくさいのでスルーしてしまう。好意の意味がどういったモノか分からないが兄弟や親であっても恥ずかしいものは、恥ずかしいだろう、普通。

「あの、トンネルは『雲の世界』へとつながっていたってコト?」

 ゴン平は不満げだったが、気を取り直して話す。

「俺は手の長いボクサーが活躍をする世界にいたから、知らない」

「手の長いボクサーってどういう風な存在?」

「めちゃくちゃ歩く場所が狭くて。で、皆、人の手の長さが片方で大人だと二メートル四十センチ~三メートル二十センチぐらいあった」

「長っ。たまたまインターネット検索で調べたことあったけど、三、四倍以上あるよ、それだと」

 私はすごい、別の肉体を持った人間がいるんだなと、不思議になって目をパチクリさせた。

「胴がやや太くて、足の靴のサイズは二倍。バランス的にはなんとなく蟹っぽい感じで立っていた。手は指の長さがちょっと長くて、特に手が大きいと言われたことがない男性の俺より一回り半ぐらい一般男性は大きかった。歩くときは数字の【無限大】∞のように手を曲げた。女性は、歩くときちょっと前ならえみたいな手にして、シルエットを良くして、スマートっぽくする人が多い印象だったな」

「ボクサーはどんな感じ?」

「手の長いボクサーがいて、交通の整理をする。そして、どいてくれたら、試合に招待をして、ファイトを見せる。そういう職業の人が格好いいとされる的な世界か」

「で、何で世界から離れてしまったの?」

「ヤケドの手のボクサーが登場した」

「ケガ?」

「いや、そいつが触ると皆、ヤケドするというかさ」

 ゴン平は難しい顔をして、語る。内容が複雑なところがあるんだろう。

「ちょっとぐらいなら、そんなに大したコトないんだけど。長く触れるとキツいヤケドになってしまったりする。そいつが道を牛耳りだしたんだ」

「狭い道で大変だ、それ」

 私は自分がその世界に行ったら歩くのが困るなと思った。

「しかも、ひどい調子の乗りようで、皆、苦労をした。事細かく歩く位置を決めて、失敗をした人をヤケドにするんだ。そういう現場をたくさん見ていて耐えきれなくなって、倒す話になったのだった」

「そりゃあ、地域の人、何もできなくなりそうだから、そうなるかも。じゃあ、ゴン平。それに加わったの?」

 ゴン平は異世界の話に触れられ照れくささと少しの面倒くささと、まだ、説明慣れていない能力的な部分が混じったような、反応をしていた。まあ、でもまんざら嫌って訳でもないのかもしれないな。

「俺は攻撃力はそんなに強くはないんだけど、細かい攻撃が得意で『七人のボクサー部隊』の六番目に選ばれちゃって」

「へー、ボクサーやったりしてた?」

「いや、こういう世界に行ってから、なんとなく」

「部隊の人は皆、手長いの?ヤケドのボクサーの人も?」

「俺以外は、全員長かった。部隊の人やヤケドのボクサーは三メートル二十センチはあったな。手の平だって二回りは大きかった」

「オオッ、どういう風に闘った?」

「他にも倒した、ひどい悪いボクサーたちがいたんだけど…。俺は大概、先鋒か次鋒的な位置だった」

「ああ、っぽい。ゴン平、そういう気がしてしまう」

「…って、っぽいって。どういう意味か、不思議になる?」

 ゴン平は微妙に納得していなかったけど、話を進めた。

「そいつら、実はヤケドのボクサーって双子でさ」

 私は、意外な展開に驚いた。本来なら七人の数で立ち回れば勝てる気もしていた。だが、これは、かなり対処が変わってくる。触れるとヤケドをするボクサーの戦力が二倍だ。七人で勝てるの?

「えっ?想定外だ、それ」

「だから、作戦を立てて勝負をした。ヤケドにさせられたら攻撃できないから」

「ホゥ、なるほど」

 ボクシングをチーム戦でする。全然、考えられない。本来ありえないぶつかり合いだ。どういう風に勝つんだろう?謎だ。

 ゴン平は闘った内容を詳しく、教えてくれた。広い道端を借り、挑戦状を出して闘ったようだ。まるで、映像ゲームの『スト○ート○ァイター』みたいな感じだと、思った。

「俺が最初にヤケドをさせる、双子の間を走って、場を乱す。次に攻撃力のあるヤツとタイミングをずらすのが上手いヤツそれそれが一人ずつ攻撃を当てる。その後、跳躍力のあるヤツが間合いを狂わせる。す速いパンチを五、六発ずつ、片道、往復と。二人の足を止めてしまう。さらに、俺が二人、ほぼ同時に足へ、攻撃」

「うんっ?そういった部位を、攻撃してしまうのはパンチボクシングじゃ反則では?」

「そりゃあ、日本など元いた世界だったらな。でも、こっちは下手をすると超大ヤケドだからさ」

 ここは余裕なんてないから厳しいか。ヤケドをさせる力とか、通常ではないもんなと、私はイメージをした。

「ああ」

「で、鋭い攻撃をするヤツが顔面の頬をバシッ」

「ウワーッ」私はなんとなく痛そうで声を出す。

「そんで、足腰の強いヤツが下から思いっきり殴る」

「キクッ」私はダウンしそうな感じを想像していた。

「で、最後は眼力の強いヤツが両方をそれぞれ、会心の一撃を加え終わらす」

「おお、強い」

「しかし、物事はそう都合よくはいかない」

 意外な発言に私は意味が理解できなかった。

「なんで?」

「ヤケドのボクサーにヤケド防止の手袋などをはめさせたんだけど。俺たちは別の世界に行けと市長から言われた」

「世界にすらいちゃいけない?」

「お前たちの存在は政治の邪魔になる。ヤケドの方がまだ扱いがしやすい…」

「なんだよ、政治家冷たっ」

 私はゴン平たちが気の毒で悪態をついた。

「まっ、落とし所だろう。正義が二重がさなりになってしまったら訳が分からなくなるから」

 私は、ああ、源頼朝が、弟の義経が将軍にとって勝手な行動をしたので討伐をするようなものかと、想像をしていた。

「旅行金のお金は貰ったし。皆も嫌だけど納得をして去っていった」

 私なら、そんな政治は腐っていると、言いたくなりそうだ。

「異世界に行く方法で『移動できる空間ポット』というのがあったから。大体の、人が住んでいそうな方面に設定して行った。それが、地形が荒れていたので安全に着陸がややできなかった。移動できる空間ポットは機能的には良かったからケガはなかったんだけど。入っていたら時未ちゃんのいたトンネルにぶつかったんだ」

 私は化け物の戦闘が原因な気もした。さっき話したが…。ここで私と一緒の状況に、入ったのか。

「他でも、音がしている感じがあったから、気付かなかったのは丁度、天井が落ちたときだったのかな。君の姿が見えたから、壁が大丈夫そうだったからぶち壊して、一緒に走った。つい、手つないじゃったね」

 私は誰かも分からなかったのに手をつないでしまったのを思い出した。

「あのときはびっくりして。それどころではなかったけど」

 私は本堂さんへの罪悪感があって、出口の光が分からなくなっていた。ゴン平が来てくれたから私はちょっと頑張れた。ありがたいから、感謝。


 さて、私は暇で待機中の『雲のかまくらハウス』の壁がどういう風になっているのかが気になるのだった。あまり迷惑にならない程度にちょっとだけ触ってもいいか。ただの曇ってだけだもんな。

 すると、急に壁の中へ引きこまれてしまった。

 ほとんど何も見えなさそうな暗闇だ。私の後を追ってゴン平も、やって来てくれたのだった。「もう、何やってこんなことになんの時未ちゃん」

 私、なんか絶対当たってしまったりがある可能性が。こんなのバッカリは避けたい。

 しばらくウロウロすると、薄い青紫の夕闇。そこには、不気味な城があった。

「ワーッ、吸血鬼が出そう」

 たくさんの数のコウモリたちが木や空へと舞い飛ぶ。

 他の場所を確認したが何もない。私たちはこの城を訪ねるのだと、思う。意外と親切でいい吸血鬼という可能性も、まあある。

 入り口は日本だったけど外国の異世界の要素、ちょっとなら宇宙人が住む別の星の異世界だって入っているかもしれない。ここはどんな異世界だろう?

 何をするにも結局、簡単に大丈夫ばかりではない。リスクは多く、転がって存在している。

「次、何が起こるんだろうね」

 私は汗を流しながら、苦しみを跳び越えたいので、笑う。

「のん気だね。時未ちゃんは」

 ゴン平は一緒に頑張ってあげるよという感じで軽く頷いた。



                   終


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