静かな夜 【月夜譚No.119】
広げた新聞紙の下から顔を出した仔猫が、一声鳴いた。そのあどけない表情に絆されて、彼女は仔猫を抱き上げた。
キジトラの毛並みは長く、僅かにカールしている。掌で優しく撫でると、仔猫はゴロゴロと喉を鳴らした。
彼女はストーブの前に置かれたソファに腰かけ、その小さな身体を膝の上に乗せる。人間よりも高い体温がスカート越しに伝わってくる。
ふと窓の外を見遣ると、いつの間にか雨が雪に変わっていた。しんしんと静かに降り落ちる白い結晶が、夜の闇を彩っている。道理で、寒いと思っていたわけだ。
けれど、ストーブの前で仔猫を抱えていると、とても暖かい。ゴロゴロという振動も相まって、心地良い気分になってくる。指先で頭を撫でたら、頬を押しつけるように手を枕にされてしまった。
と、そんなことをしている内に、瞼が重くなってきた。こんなに心地良い睡魔に襲われるのは、いつ以来だろうか。なんだか、今夜は良い夢を見られるような気がする。
彼女は睡魔と戦いながら眠る準備のことを考え、けれど仔猫を下ろすことができなくて、どうしたものかと困り果てた。