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神木さんちのお兄ちゃん!   作者: 雪桜
第7章 お姉ちゃんと美少女

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第91話 自己嫌悪と変化


 アレから一夜明け、日曜の朝。起床した飛鳥は、顔を洗い再び部屋に戻ると、昨日のことを思いだし深くため息をついた。


 そう、飛鳥は昨日、あかりに少し大人げない行動をとってしまった。


(はぁ……女の子に痛いところつかれたからって、キレて逃げ帰るとか、俺何してんの?)


 一晩たち、改めて考えると、子供みたいな行動をとってしまったことに、飛鳥はひどく自己嫌悪する。


 無理もない。相手は2つしか違わないとはいえ、年下だ。しかも、女の子相手に勝手に感情的になり、更には冷たく突き放すようなことまでいってしまった。


「はぁ……」


 起床から二度目のため息は、先程よりもさらに深かった。とはいえ、今さら悔やんでも、仕方ない。


(……とりあえず、着替えるか)


 そろそろ朝食の時間だろうと、飛鳥は気持ちを切り替えると、部屋の中を移動し、クローゼットの中から取り出した着替えを、ベッドの上に放り投げた。


 着ている黒のTシャツに手をかけ、それを脱ぐと、細身だが均整の取れた上半身が露になる。


(……でも、なんでかな……不思議とスッキリしてるかも)


 着替えながら、どこか穏やかな自分の変化に気づく。気分は確かにブルーなのだが、一晩たち目が覚めると、意外と頭の中はスッキリしていた。


 自分の気持ちに、少し整理がついたからか?


 気付かないようにしていた気持ちを、あかりに言われて、向き合うことになったからか?


(……意外と認めてしまうと、スッキリするもんだな)


 小さく笑みを漏らすと、それまで強ばっていた飛鳥の表情も、どこか緩やかな落ち着いたものへと変わっていく。


 悔しいが、あかりに言われた言葉は、不覚にも良い薬になったのかもしれない。


(でも、怖いとか嫌だとか、子供か、俺は……)


 だが、その自分の未熟さには、やはり自己嫌悪するしかなく、飛鳥は乾いた笑みを浮かべつつ、脱いだTシャツをベッドの上に放りなげると、再び、あかりのことを思い浮かべた。


(あかり《あいつ》と話すのは……ダメだな)


 あかりの、あの雰囲気が苦手だ。

 穏やかで、泣きたくなるような


 ────あの不思議な感覚。


 きっと会えば、また昨日と同じように、弱音を吐いてしまうような気がした。


 できるなら、それは避けたい。



 ────バタン!!


「飛鳥兄ぃ!! いつまで寝てんの!?」

「……!」


 すると、その瞬間、突然部屋のドアが激しい音をたてて開かれた。


 見れば、叩き起こしに来ました!と言わんばかりに、エプロン姿の華が飛鳥の部屋へと入ってきた。


「ご飯、冷め──て、なんで裸!? 早く、服着てよ!?」


「……いや、なんで俺が怒られるの?」


 タイミング悪く着替え中だったため、上半身裸の兄をみて華が迷惑そうな顔を見せる。だが、飛鳥からしたら、なんでこちらが悪いのか釈然としない。


「ご飯、できたの?」


「あ、うん。早く食べないと冷めちゃうよ?」


「わかった。着替えたら、すぐ行く」


「……」


 昨日、兄は夕食にはしっかりと顔を出してくれた。


 だが、いってはなんだが"機嫌の悪い兄"はその頃まだ健在で、 珍しく一切会話のない、それはそれは重苦しい空気の中での夕食となった。


 そして兄は、その後早々に寝てしまったのか、一切部屋から出てくることはなく、華はそんな兄を心配しつつも、いつも通り明るく声をかけに来たのだが……


(あれ? あんなに怒ってたのに、なんかすっきりした顔してる)


 今朝の兄を見ると、昨日とは一変、穏やかな表情を浮かべていた。

 それも、張り付けたような作り笑いではなく、心なしか憑き物が落ちたかのような清々しい表情。


「飛鳥兄ぃ……やっぱり昨日、なにかあった?」


 華がキョトンとした顔をして、兄に問いかける。すると飛鳥は


「あー、別に……ちょっと女の子と喧嘩しただけだよ(一方的に)」


「えぇ!? 女の子とケンカぁ!?」


 想像だにしていなかった返答に、華が目を皿のようにして驚く。


 この兄が、女の子とケンカしたなんて、今まで一度も聞いたことがない!

 基本、女の子には優しく、それていて当たり障りない対応を心がけている兄だ。


 そんな兄が、まさか女の子とケンカ!!?


「もしかして……今、彼女いるの?」


「は?」


 華がポカンとして問いかけると、飛鳥は、その言葉に、とたんに顔を顰める。


「何でそうなるの?」


「え、でも……喧嘩するほど、親密な仲ってことじゃないの?」


「親密って……アイツはそんなんじゃないよ。どっちかっていうと、天敵」


「天敵!?」


 冗談じゃない──とでも言いたそうに、迷惑そうな顔を見せた飛鳥は、その後、華の背に手を添え、そっと部屋から押し出すような体勢をとった。


「……それより華、お前、男の部屋にいきなり入ってくるなよ」


「え? なんで?」


「何でって……そりゃ、色々あるだろ」


「色々……?」


「……」


 兄の言う色々の意味が分からないのか、不思議そうに見上げてきた華をみて、飛鳥はまたニコリと笑う。


「いや、華に言った俺がバカだった。とりあえず、ノックぐらいしろよ」


 そういうと、飛鳥は呆れつつ華を追い出すと、続けて部屋の扉をバタンと閉めた。

 そして、部屋を追い出された華は、先程の兄の話を思いだし、首を傾げる。


(珍しいなー……飛鳥兄ぃが、女の人の話するなんて……)


 普段なら、兄から女の子の話題は一切上がらない。


(天敵って、どんな人なんだろう?)


 興味半分。複雑な心境半分。


 華は、兄の部屋の前で一人立ち尽くしながら、なんとも言えない表情を浮かべたのだった。


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