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神木さんちのお兄ちゃん!   作者: 雪桜
第7章 お姉ちゃんと美少女

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第85話 あかりと休日


 単身者向けアパートの2階。その一番奥の角部屋に、あかりの新しい住居は存在していた。


 真新しい外観をした2階建てのアパートは、1階に3軒ずつ、計6軒分の世帯が入居できる。


 築年数は20年ほどらしいが、最近リフォームされたばかりらしく、外観も内装もとてもきれいで、1LDKの室内は、玄関を入ってすぐの扉を開けると、キッチンなどの水回りが存在し、その先には12畳の洋室があった。


 多少手詰まではあるが、一人暮らしのあかりには十分すぎる物件。


 そして、ここに引っ越してきて、早二ヶ月。


 環境にも少しずつなれ、一人暮らしを楽しむ余裕すら出てきたのか、天気のよい休日には、目の前の公園でゆっくりと読書をするのが、あかりの密かな楽しみでもあった。


(……そろそろ、出かけようかな?)


 あかりは、公園に行くため読みかけの本を一冊手にすると部屋をでて玄関に鍵をかけた。


 ガチャ──と、鍵がしっかりとかかった音を確認すると、階段の方へと向き直る。


「あ! あかりちゃん!」

「?」


 するとそこに、たまたま同じタイミングで帰ってきた隣の部屋の男性が、あかりに声をかけてきた。


 24~25歳くらいの若く鼻筋の通ったそこそこのイケメン男性だ。どこかにでかけた帰りなのか、スーパーの袋を手にしていた。

 

「今から、でかけるの?」

「はい」


 確か、大野さん……だったかな?

 あかりは、そんなことを思い出しながら、にこやかに返事を返す。


「あかりちゃん、大学生だったよね。女の子の一人暮らしはなにかと大変だろうし、困ったことがあったら、いつでもいってね。力になるからさ」


「……あ、ご親切にありがとうございます」


 ふわりと笑いお辞儀をすると、あかりはその後大野の横をすり抜け、その先にある階段を目指した。


 トントンと軽やかに階段を降りると、アパート前の道路を渡り、目の前の公園へ向かう。


 時刻は、午後二時過ぎ。


 春の心地よい風が吹き抜ける公園には、噴水のそばで水遊びをする子供たちや、小さな赤ちゃんを連れたお母さんが散歩をしていたりと、土曜の午後だけあり、そこはいつもより賑やかだった。


 そして、その公園の入り口から、いつも座っているベンチに目を向ければ、そこには、見慣れた少女の姿があった。


「エレナちゃん!」

「あ、お姉ちゃん」


 ベンチに座っていたのは、エレナ。


 エレナは、足をプラプラと揺らしながら、あかりを待っていた。


 光に反射する金色の髪はキラキラと輝き、紫色のシックなワンピースとニーハイを履いたその姿は、モデルの仕事をしているだけあり、とてもオシャレで愛らしかった。


 なにより、この素朴な公園内では、美少女と言われるほどのエレナは一際目立つ。


「今日は、モデルの仕事ないの?」


「うん、お休み。お母さんもお仕事だったから抜け出してきちゃった。それに、もう少ししたら気軽にこれなくなっちゃうかもしれないから……」


「?」


 エレナの話を聞きながら、あかりは首を傾げる。


「来れなくなるって……」


「うん……実は今度、オーディション受けるんだ。本当は嫌なんだけど……」


 エレナがそう呟いて、あかりは悲しげに目を細めた。


 エレナは、モデルを辞めたがってる。


 だが、それを母親に伝えるのを、とても怖がるのだ。


「やっぱり……言えない?」


「うん……何度か言おうとしたんだけど、いざ、お母さんを前にすると言葉が出てこなくて……っ」


「そう……」


 話を聞くだけしか出来ない自分に、あかりは酷く胸を痛めた。エレナから、何度とその話をきいてきたのだが、あかりは、いまだにそれを解決できないでいる。


 悩んでいる子供が目の前にいるのに、自分は何もしてあげられない。あかりは、そんな自分を情けなく思う


「ごめんね……助けてあげられなくて」

「……」


 しゅんとするあかりを見て、今度はエレナが、悲しそうに眉を下げる。


「……お姉ちゃん、そんな顔しないで。私なら大丈夫。だって、お姉ちゃんが話聞いてくれるし」


「……」


「私ね、誰かに話を聞いてもらえるだけで、こんなに気持ちが楽になるなんて知らなかったの……お姉ちゃんのおかげだよ」


 エレナはそう言って微笑むと


「あ、そうだ! ねえ、お姉ちゃんには悩みとかないの? 私も、お姉ちゃんの役にたちたい!」


 瞬間、パッと表情を明るくすると、エレナはあかりの方に身をのりだしてきた。そんなエレナの姿に、あかりは小さく微笑むと


「悩みかぁ……ひとつだけあるかな?」


「なになに! どんなこと?」


 エレナが、キラキラと目を輝かせて、あかりの話をまつ。するとあかりは


「実は……私、"先輩のファン"に……刺されちゃうかもしれない」


「え──?」







 ◇◇◇






「あれ、兄貴、出かけるの?」


 その日の午後。蓮が部屋から出ると、玄関先で靴を履きながら、出掛ける準備をしている兄を見つけた。


 蓮の声を聞き、飛鳥は一度だけ振り向くと「うん」と一言だけ返事をし、また靴に視線を戻す。


「土曜日に出掛けるとか、珍しいね。またスカウトに捕まるんじゃないの?」


「まーね……でも、ノート切れかけてたの忘れててさ……ついでに本屋にもよってくる」


「あ。それじゃ俺のも買ってきて。英語のノート」


「はぁ?」


「あと、本屋によるなら『進撃の小人』の最新刊も」


「へー……このお兄様をパシリに使うとはね~。まぁ、いいけど」


「さすがお兄様。帰ったら、お背中流しますんで!」


「いやいや、それは勘弁してください」


 拒否されるのを分かって提案してきたであろう弟の言葉をきき、飛鳥は冗談交じりに異を唱えると、側に置いていた鞄を手にとり立ち上がる。


「じゃぁ、行って……」


「あ。でも、俺と兄貴が一緒に風呂はいりだしたら、華、驚くよね」


「は?」


 だが、飛鳥が出かける瞬間、とんでもない言葉が帰ってきて飛鳥は顔を青くする。


 蓮は、意外と悪ふざけをするのが好きなのだ。もちろん、その大概が華を驚かせるためなのだが、急に不意うちで飛鳥にもドッキリを仕掛けてくることがある。


「いきなり風呂入ってくるとか、やめろよ」


「冗談だって」


「どうだか……言っとくけど、俺いまだに、お前が俺のスマホの着信、勝手にドラ○もんに変えてたの根に持ってるからな」


「あー、あれ始めはプ○キュアにしてたんだよ。むしろド○えもんで我慢したことを誉めてほしい」


「ウソだろ!?」


 いきなり、大学の講義中に鳴り響いた「ドラえ○ん」のメロディー。まさか、自分とは思ってなかった当時の飛鳥は、それはそれは困惑したものだった。


 まー、プリ○ュアよりは、マシかもしれないが……


「もういい加減、悪趣味なドッキリ仕掛けてくんのやめてくんない? いつ卒業すんの、それ?」


「兄貴には、わからないだろうけどさ……」


「?」


「こんな兄とあんな姉をもつとメチャクチャ、ストレスたまるんだよね?」


「まさかのストレス発散!?」


 今までの嫌がらせは、どうやらストレスを発散させるためだったとは!?

 飛鳥はそれを知り、なんとも言えない表情をうかべた。


「それより兄貴、帰りは何時になるの?」


「あー、夕方までには帰るよ」


「わかった。じゃぁ、風呂沸かして待ってるから」


「そっかー、じゃぁ帰ったら 一緒に背中流しっこしようね~♪」


「キモイ」


「お前がな」


 弟の悪ふざけをニコリと笑ってかわすと、飛鳥は玄関の鍵をあける。


「じゃぁ、俺いってくるから。バカやってないで勉強しっかりしとけよ」


 すると飛鳥は、 バタンと扉の音を響かせながら、外へとでかけていった。



「あれ? 飛鳥兄ぃ、でかけたの?」


 すると、兄が出たタイミングで、玄関の扉がしまる音を聞いた華が、部屋から顔を出してきた。すると蓮は


「……そういえば華、兄貴と一緒に風呂入れないって聞いた時、すごく嫌がって泣いてたよな?」


「急に、何の話!?」


 何気ない兄弟の会話から、子供の頃は三人で一緒にお風呂に入っていたなーなどと思い出した蓮がボソリと呟くと、華はただただ顔をしかめるだけだった。


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