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神木さんちのお兄ちゃん! ~神木家には美人すぎる『兄』がいます~  作者: 雪桜
第4章 再会と変化

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第61話 再会と暴露


「あ……」

「?」


 飛鳥が声をあげると、その女も不思議そうにこちらに視線を向けてきた。


 すると、どうやら女も気づいたらしい。


「あ! 先日、道を教えてくださった、お姉さん! この前は、ありがとうございました」


 そう、彼女は2か月前、迷子になっていたところを助けてあげた、あの時の女の子。


 だが、その女の言葉に、飛鳥はある違和感を覚えた。


 そう、彼女は今「お姉さん」と言ったのである。


(あれ? なんか俺、最近、女に間違えられること増えてない?)


 ギリギリ高3までは、よく間違えられていたため、まぁ良しとする。


 だが、飛鳥は別にもやし体型ではないし、筋肉だってそれなりについているし、最近は骨格もしっかりしてきたため、多分男性らしくなったと思っていたのだが……


「あのさ、よく見て、お姉さんじゃないよ」


「え?」


 飛鳥が笑顔をひきつらせながらそう言うと、女はん?と首を傾げた。

 

「あ……もしかして、お嬢さんと言った方がよかったでしょうか? すみません。てっきり年上の方だと」


「いや違う! それも違う!!」


 もはや「男」という発想に結び付かないのか、すっとんきょうな言葉を発した女に、飛鳥の笑顔は更に曇っていく。


「あのさ、お姉さんでも、お嬢さんでもなく、()()()()なんだけど」


「へ?…………あ、え…?」


「うわ、なに、その反応」


 まるで恐ろしいものでも見るかのように顔を蒼白させた女に、飛鳥は笑顔で毒づく。


 だが、どうやら、その身体つきを見て、やっと目の前のお姉さんが、お兄さんであることに気づいたらしい。女は、その後、深々と頭を下げてきた。


「あ、あの、すみませんでした! とても綺麗な方だったので、まさか男の人だとはおもわなくて……私、なんて失礼なことを……っ」


「別に、そんなに謝らなくてもいいよ。よくあることだし、それより受かったの?大学」


「え? ぁ、はい。おかげさまで」


「学部は?」


「え? が、学部、ですか?……えと、教育学部です」


「へー……」


 教育学部ということは、どうやら自分と同じ学部らしい。飛鳥はそんなことを考えながら再び問いかける。


「教師、目指してるの?」


「あ、いえ。私が目指してるのは、司書で」


「司書?」


「はい。図書室の先生です。私、本が好きで……」


 そう言った女は、また穏やかに笑って本棚を見上げた。


 それに、先日会ったときは、うまく会話が噛み合わなかったが、今日は普通に話せていて、あの日のあれは、たまたまだったのかと飛鳥は考える。


(距離が近かったのも、俺を女と勘違いしてたからか……)


 などと考えていると、先程の店員が戻ってきた。


「お客様、申し訳ありません。出版社に問い合わせましたら、今重版中で入荷に時間がかかるみたいで」


「あ、そうなんですね」


「はい。重版待ちになりますが、ご注文されますか?」


「……うーん。いえ、今回は。また今度よらせていただきますね」


「はい、ありがとうございました」


 すると店員は、申し訳なさそうに頭を下げたあと、またカウンターへと戻っていった。飛鳥はそんな店員の姿を見つめながら、また女に話しかける。


「なんの本、探してたの?」


「あー『ランスの丘』って言う推理小説です。上下巻買って、上巻を読み終わって下巻に移ろうとしたら、実はその間に"中巻"があったみたいで」


(この子、かなりそそっかしいな)


 まさか中巻があるのに気づかず、下巻を買うとは。この前は、財布も落としてたし。


「続きは気になるんですけど、仕方ないですよね」


「でも、確かにこの本、最後犯人が自殺しちゃうじゃなかったかな」


「え?」


 ふと、何気なしにそう発して、その言葉に女は


「ちょ、なに、いきなりネタバレしてるんですか!? 推理小説のラストを暴露するなんて、いくらなんでもひどすぎません!?」


「え?」


 ──あ、しまった。


 瞬間、飛鳥は、自分の言動を反省して、とっさに口元を押さえた。確かに推理小説のラストをネタバレするなんて、ある意味とんでもない嫌がらせだ。


「ごめん、悪かったよ……だからって、そんなに怒らなくてもいいだろ。ちょっと口滑らせただけだよ」


「あ、そうですね、すみません。わざとじゃないのに責めるようなこと言ってしまって……」


「いいよ、俺が悪いし。なんなら俺、その本持ってるから、貸してあげようか?」


 ネタバレしてしまったため、流石に悪いと思ったのか、お詫びとばかりに飛鳥がその代案を伝える。


 だが──


「いえ、結構です」

「…………」


 おもったよりハッキリと否定の言葉が返ってきて、飛鳥は、なぜか複雑な心境になる。


「そこまでしていただかなくても……今日はこっちの本を買って帰りま」


「その本、最後バッドエンドで終わるよ!」


「!?」


 すると、これまた飛鳥がニコリとネタバレをしてきて、女は新たに手に取った本を手にしたまま硬直する。

 

「……え? あの、なんで今……え???」


「~♪」


 再び、本の内容を暴露され、女がふるふると肩を震すと、その反応に飛鳥は気を良くしたのか


「ごめん、怒った?」


 と、まるでイタズラをしかけた子供のように笑えば、どうやら、その言葉には、女も悪意しか感じなかったらしい。


 飛鳥に負けないほどのニッコリとした笑顔を浮かべると


「いいえ、少しビックリしただけです。いい人だと思ったら、まさかこんなに()()()()()()だったなんて」


「へー、君、見かけによらず毒はく人なんだねー。なんなら()()()()()してあげよっか?」


 穏やかに笑う二人の間には、冷たい空気が流れ、そして、そんな二人の様子を、本屋の店員たちが心配そうに見つめていたとか……


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