【番外編】お兄ちゃんと高校時代②
桜聖高校の文化祭は、11月の上旬に開催される。
そして、その文化祭は新しく抜擢された生徒会役員の初仕事とも言える大きなイベントでもあり、毎年この文化祭を通して、生徒会役員はチームとしての絆を深めていくらしい。
だが、今年の生徒会は、どうやら、そう簡単にはいかないようで──
「聞いたぞ、神木君! 本来なら、君が生徒会長にはなるはずだったそうじゃないか! それなのに生徒会長が嫌で副会長になっただと!? そんな君に生徒会を盛り上げていく気があるとはとても思えない!! 僕は、君には絶対に負けないからな!!」
「…………」
生徒会室の扉に背を向け、黒板に書かれた文字を消していた飛鳥のもとに、今年新しく生徒会長の座についた岡崎が、突如声を荒げながら、怒鳴り込んできた。
突然放たれた宣戦布告とも言えるその言葉に、黒板消しをもった飛鳥の手元がピタリと止まる。
確かに今、岡崎が言ったことは、まぎれもない事実だ。事実なのだが……
(誰だ。こいつに、そんなめんどくさいこと吹き込んだやつ……)
これまた、厄介な……と、飛鳥は表情を曇らせ、再び岡崎の方へと視線をおくる。
「だいたい、いくら人気があるとは言え、生徒会役員は生徒の見本となるべき存在だと言うのに、金髪とはどういうつもりだ!! まずは、その髪を黒く染めてきたまえ!」
(……うわ、マジでめんどくさい。今年の生徒会長 )
その発言と態度は、明らかに飛鳥を敵視していた。
だが、何もしてないのに、何でここまできらわれなくてはならないのか?
すると、同じく生徒会室にいた他の生徒会役員も、岡崎と飛鳥を見つめながら、ヒソヒソと話し始めた。
同級生の岡崎 武尊は、成績もよく真面目で熱い男だった。
生徒会長への意気込みも強く、生徒会選挙が始まってからは、毎日生徒への声かけも、かかさなかったらしい。
見た目も黒髪に眼鏡と言う、いかにも真面目な秀才くんを絵にかいたような人物で、まさに飛鳥とは正反対の人間とも言えるだろう。
そんな生徒会選挙に力を注いできた岡崎が、演説すらしていない飛鳥に票数で負けたばかりか「生徒会長は嫌だ」と副会長におさまったことが、不愉快で仕方ないのだろう。
「岡崎くん、神木くんが困ってるよ。そんな言い方ないでしょ?」
「大体、神木の髪は地毛だろ。わざわざ染めてこいなんて、言ってることおかしいだろ」
「また君たちは、そうやって神木くんの味方をする!」
一方的に敵対心を燃やす岡崎に対して、書記の菅野と会計の山田が岡崎に向けて反論する。すると、その他数名の役員も、困った顔をしてざわつきはじめた。
文化祭で、生徒会役員の絆を深める?
正直、今できたばかりのこの生徒会の役員同士で文化祭の実行役を担うなんて、ハードルが高すぎるのではないか?と、飛鳥は思う。
しかも、今年はその中心ともいえる生徒会長と副会長が、こんな感じでは、雰囲気は悪くなる一方だろう。
「はぁ……」
飛鳥は、一つ深いため息をつくと、手にしていた黒板消しをあるべき場所に戻し、その後、いつもの天使のような笑顔で岡崎に話かけた。
「ごめんね、岡崎くん。俺には生徒会長なんて立派な仕事向いてないし、優秀な岡崎君なら、俺よりも上手く生徒会を引っ張っていってくれるとおもったから、俺はあえて辞退したんだけど」
「……」
「そうだよね、岡崎くんには失礼なことしちゃったかな……本当に、ごめんね」
申し訳なさそうに切なそうな瞳を岡崎に向けると、飛鳥は、その後ゆっくりと視線を下ろす。
すると、しおらしいその姿に、岡崎は心を痛めたらしい。
「い、いや、違うんだ神木君! まさか君が、そこまで生徒会のことを考えてくれてたなんて! 僕は君を誤解していたのかもしれない!!」
(……コイツ、ちょろすぎる)
先程の敵対心はどこに行ったのやら。
今度は、ひざまづかんばかりに飛鳥に頭をたれ始めた岡崎をみて、飛鳥は内心苦笑する。
だが、これで多少は生徒会の雰囲気も良くなるだろうと飛鳥は「念のため、もう一押ししとこうか」と再びにっこりと微笑むと、トドメの一言。
「ありがとう~岡崎くん♡ 俺は副会長として、全力で君をサポートするから、俺に出来ることがあったら、なんでも言ってね!」
「そうかそうか、神木君!! なんだか君となら、上手くやっていけそうな気がするよ!!」
(……さすがだわ、神木くん)
(神木がいれば、今年の生徒会は安泰だな)
酷く感銘を打たれ、飛鳥の手を強く握りしめる岡崎を見て、他の生徒会役員達は、生徒会の安泰を強く確信したとか。
番外編③に続く☆




