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神木さんちのお兄ちゃん! ~神木家には美人すぎる『兄』がいます~  作者: 雪桜
第2章 絶世の美女

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第54話 大学帰りと喫茶店


「神木くん! 今度俺に料理教えてください!」


 大学帰りの平日の午後。喫茶店のいつもの席で、飛鳥の横を陣取った大河が、意気揚々と声をあげた。


 少し耳障りなその声に、飛鳥は手にしたコーヒーを口許に運びながら


「嫌だよ」


「えーなんでですか!? いいじゃないですかぁ、俺一人暮らし始めてからマジで食べるもの片寄って! バイト先のコンビニ弁当ばかりじゃ、体壊しちゃいますよ!」


「もう三年目なんでしょ? それに、料理本ならいくらでもあるだろ。お金使いたくないなら、図書館にいけば?」


「冷たい!? 先日の微笑みはどこいったんですか!!?」


「それ、きっと幻」


「幻いいぃぃ! あぁぁぁ、そんな神木くんも素敵だぁ‼」


 相変わらず辛辣な飛鳥と、今日もヤバいくらいの崇拝ぶりをみせつけてくる大河。


 そんな2人の姿を、向かいの席に座り、呆然と見つめていた隆臣は、いつもと違う情景に首をかしげた。


 確か、飛鳥はほんの少し前まで、大河に苦手意識を抱いていた。それなのに、なぜか今は、隣に同席することまで許している。


「お前ら、いつのまに仲良くなったんだ?」


「おお!! マジで! やっぱり仲良く見える!!」


「お前が仕事サボるからだろ」


「仕事ってなんだ! サボった覚えないんだけど!?」


 すると意味のわからない回答が飛び出してきて、隆臣は一層眉をしかめた。


「全く……どういう風の吹き回しだ?」


 だが、飛鳥の雰囲気を見るからに、少なからず大河にも気を許せるようになったのだろう。


 そう思うと、隆臣は珍しいなといわんばかりに、再び問いかけた。


「うん……確かに隆ちゃんの言う通り、悪いやつではなかったよ」


 すると、一瞬だけ考えたのち、飛鳥は手にしていたコーヒーのカップを受け皿に戻すと


「だから、もうこうなったら、トコトン利用してやろうかな、と思って」


「おい大河、目覚ませ。 こいつマジで悪魔だぞ」


 なにやら、しおらしい声を放ったかと思えば、その後、にこやかに悪魔のような言葉を放った飛鳥に隆臣が忠告の言葉を投げかけた。


 もう一人の友人を、飛鳥こいつの毒牙にかけてはいけない! だが、肝心の大河はというと


「なに言ってんだよ、橘!! 悪魔の裏にしっかり天使もいるんだよ! 俺は知ってる! 全部ひっくるめてそれが神木くんだから! むしろ利用されたい!!」


「お前ほんとブレないな!? どうしたら、そう言う発想になるんだ!!」


「ねぇ、隆ちゃん。武市くんさ、どんなに突き放そうとしても全く折れないんだけど、一体どんなメンタルしてんの?」


「まぁ、昔から大河は、プラス思考の塊みたいはやつだからな」


「プラス思考……あープラスドライバーで頭のネジ締めてあげれば治るのかな?」


「うん。お前がもう限界なのはよくわかったよ。だが残念だが、大河のネジはもう抜けてると思う」


「あ、そうだ! せっかく男が三人揃ってるんだしさ、なんか盛り上がる話しよーよ!」


 すると、そんな飛鳥と隆臣の会話を遮って、またもや大河が明るい声を発した。


 盛り上がる話?──と、飛鳥と隆臣は同時に大我を見つめた。すると、大河はうーんと考え込むんだあと


「あ! 二人の好きな女の子のタイプ聞きたい!!」


「「中学生か お前は!!?」」


 キラッキラの笑顔を向ける大河に、飛鳥と隆臣は同時につっこむ!

 日頃、飛鳥と隆臣の二人だけの時は、こんな馬鹿テンションにはならないのだが……


「飛鳥、無視していいぞ」


「うん。もとから聞く気ない」


「ちょっとちょっと、二人とも付き合いわるーい! 男ならメジャーな話題じゃん!」


「じゃぁ、一人でやってろ」


「よし! 俺の好みのタイプは、やっぱり髪が長くて笑顔が可愛くて、包み込んでくれるような優しい感じの女の子かな! で、巨乳ならなお良し!!」


「……ちょっと、隆ちゃん。マジで一人で始めたんだけど?」


「あぁ、まさかこーくるとはな、俺も今ビックリしてる」


「ビックリしてるじゃないだろ! 友達なら、ちゃんと舵とれよ」


「無理言うな! ()()()()()大河がこうなったと思ってんだ! 大体、飛鳥一人でも手に余るのに、厄介者二人とか胃に穴があきそうだ!!」


「はぁ!? なんで俺までこいつと同じ部類にされてんの!?」


「同じだよ! 俺にとってはな!!」


「ちょっと二人とも、なに喧嘩してんだよ!! あまり騒ぐと他のお客さんの迷惑になるだろ!?」


「ちょっと待て!?」


「なんで、俺たちが悪いみたいな話になってんの!?」


 まあまあと、呆れたように声をあげた大河に、再び意志疎通すると、二人は同時に声をあげた。


 隆臣だけならともかく、飛鳥さえも振り回すこの武市ワールド。もはや、恐ろしいくらいである。


「あ、そうだ神木くん! もしそんな感じの女の子がいたら紹介してくださいよ!」


「え? なんで俺?」


「だって神木くんモテるし、女の子の連絡先いっぱい知ってそう!」


「……」


「あー、それは無理だぞ、大河。飛鳥は、昔付き合った女が()()()()()になってから、女の子と一切連絡先を交換してないからな」


「え!?」





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